DAY2
「ふぁぁぁ。」
カーテンを開くと朝日が差し込む。こんな俺とは真反対の清々しい朝だ。
・・・・・・本当に、俺はこの世界にいていいのだろうか。最近はそんなことばかり考えてしまう。
「早く来なさい!朝ご飯は何にする?」
「卵かけご飯で。」
「わかった。」
俺が元気ないのはいつものことだ。
そりゃ、こんなクソ親のいる家にいるんだからな。楽しくないに決まってる。
ーーーーーーーーーー
俺は、朝食の卵かけご飯をかきこんで、用意を済ませると逃げるように家を出た。なるべくあの家にいたくないから。
そして、今、俺は遅刻している友達を待っている。名前は『多田鳴弥』。
名前の読みから、よく女子に間違われるらしい。そりゃ、『なるみ』はなぁ?女子じゃないか。
そんな彼は、親友?と呼べる関係で、よく遊ぶ仲だ。相談に乗ってもらったりしている。
・・・俺が自殺願望があるのを知っているのは彼だけだ。
「おす。今日は、遅れて申し訳ありませんでしたっ!」
深々と頭を下げる彼。まぁ、そんなの冗談に決まっているが。
「遅い。早く行くぞ。」
それに乗ってやる。これが、いわゆる『ノリ』とかいうやつか?
「そだ!今日さ、文化祭の前日だろ?キタのクラス、何すんの?」
「言わないといつも言ってるだろう。当日までのお楽しみだ。」
「キタって、意外と楽しんでるよね。意外と。」
「当たり前だろう。思い出はいくらあっても楽しいからな。」
「おっ。ロマンチストだねぇ。」
と、歩きながら話していると、校門の前に着く。集合場所から5分くらいだしな。
「お、北山と多田。いつもより遅いじゃないか。なにかあったか?」
生活指導の杉山先生が言う。俺らは二人とも優等生だから、仲良くしている。
「あ、はい。俺が道で転けて怪我したので。」
多田氏が答える。
「そうか・・・まぁ、気をつけろよ。」
「はい。」
優しいな。先生は。
すると、
「こらぁぁぁぁぁぁっ!髪を染めたらあかんっちゅーのを知らんかぁ!?こんのアホがぁっ!」
と、チャラいので有名な坂口に怒っていた。彼もかなり効いているようだ。
・・・うん。怖いな。なるべく怒らせないようにしよう。
クラスまでの道中もおーたと話していた。
バッ
!女の子が飛び出してきた。危ないな。
その女の子が口を開いた。
「あのっ。北山先輩っ!後で、お話がありますので放課後に1-3に来ていただけますでしょうか・・・?」
?この子は代表委員の子だよな?もしかして、俺が何かやったか?
「あー。わかった。放課後だね?了解だ。」
「ありがとうございます!では、お待ちしております。」
何かわからないけど、呼び出されてしまった。特に心当たりはないけど。
・・・隣でおーたがニコニコしているのがムカつく。なんなんだよ!?
ーーーーーーーーーー
クラスは、いつも通りザワザワしていた。文化祭のことや、昨日のTV、そこら辺のカップルは明日のデートの話をしている。
俺は、相変わらず、クラスの特等席と呼ばれる窓際の一番後ろで本を読んでいた。
この本は、カバーで隠しているが、『自殺の方法!完全版』だ。これで、日々学習をしている。
学習していると、先生が入ってきた。どうやら、もうすぐ8時30分らしい。朝の学習が始まる時間だ。
そんなのは、すぐに終わるので、ほぼ自習タイムだ。俺はこの時間でも学習している。
時間は使わにゃ損だ。
と、朝の学習が終わり、明日の文化祭の準備が始まる。
とはいえ、俺のやることはほぼない。マニュアルも作り終わった。
暇だ。
何しようか。誰かから呼ばれるわけでもないから。
暇だ。
そうだ!渡原さん、誘ってみるか。
と思い、渡原さんを探してみると、人がいっぱいいた。
「ねぇねぇ。渡原〜俺と文化祭回ろーよ。ね?」
「ぼ、ぼくと!文化祭、回ってくださいっ!」
「あのさー。明日、3-2のファッションショー行かない?」
など、誘い方はさまざまだ。みんな、上手いこと考えるもんだ。
でも、渡原さんはきっちり断っている。すごいなぁ。
・・・・・・あれじゃあ、俺の入る隙は無さそうだな。大人しく、おーたと回るか。
と思い場を離れようとした時、渡原さんと目があった。
その時の彼女は、俺に、何かを訴えてきているようだった。でも、俺は気づくことなく、その場を去った。ただ単に目があったとしか思わなかったからだ。
そして、準備が終わり、昼休みに入った。
みんなは食堂に行くもの、弁当を広げているもの。と、さまざまだ。
俺は、食堂派だが。
今日の昼飯は、
ローストビーフ丼(900円)
カルピス(150円)
キムチ盛り合わせ(200円)
だ。
意外と、ローストビーフ&キムチは美味しい。
ーーーーーーーーーー
丼が食べ終わりかけたころ。渡原さんが隣に座った。
「あのさ、北山くん。急で悪いんだけど、」
おもむろに彼女は話しかけてきた。
「明日の文化祭、一緒に回らない?」
やや上目遣いでのぞいてくる彼女。
すっごく胸が高鳴った。
「え!あ。うん。もちろん。」
と答えた。なんとか平静を保ったものの、めっちゃ嬉しかってん!
「え!ほんと!ありがと!明日の詳細は、帰ってからフインするね!」
上機嫌な彼女は、キラキラ輝いていて、彼女を、俺が好きになって良いのか。と、ついつい考えてしまった。
ーーーーーーーーーー
授業が終わった。暇だった。もう知ってるからな。
いつもなら速攻で帰って学習するところだが、代表委員の子に呼び出されたので1-3に行かなければならない。早く帰りたいのにな。
「失礼します。」
「!あ、き、北山先輩。ちょっと待っててもらえますか?ちょっと用があるので・・・」
「?わかった。どれくらい待てばいい?」
「15分くらいですかね。終わり次第お呼びしますから。」
時間が空いてしまった。こんな時も学習だ。学習。
ふむふむ。「首吊りは苦しまずに死ねる」と。いいな。今度、ホームセンターでロープでも買ってこようか。
そんなことを考えているとあの子に呼ばれた。
「あのー。北山先輩。もう大丈夫なので入ってきてもらって・・・」
と顔を覗かせた格好で言った。
「わかった。」
教室に入るとなんとも言えない匂いがした。彼女曰く香水らしい。
校則違反だ。
すると、彼女が話を切り出した。
「北山先輩。私と、付き合ってくださいっ!」
「ごめんなさい。俺は好きな人がいるから。」
即答。俺には渡原さんがいるのだ。
正直、嬉しかった。嬉しかったけど。渡原さんを裏切れなかった。
というか、そこまで可愛くないんだわ。この子。体型も普通。というかぽっちゃり。名前も知らない。そんな子に告白されてOKするか?普通。そこまで考えろよな。
「そうですか。すいませんでした。ありがとうございました。」
謝らせてしまった。申し訳ない。
「ところで、先輩の好きな人は誰ですか?」
そこまで聞いてくるか。脳が足りないんだろう。
「答えると思うか?普通。」
ややキレ気味で答えてしまった。俯いている。仕方ない。そいつが悪い。
「そう、ですよね。つまらないことを聞いてしまいすみませんでした。もう、お帰りになられていいので。ありがとうございました。」
泣きかけている彼女を置いて教室を出た。やはり、近くで友達が見守っていたらしい。
「うむー。こんなに気まずくなるのか?渡原さんに告白するの、嫌になってきたな。」
独り言を呟きながら家路についた。もう日が暮れ始めている。日が暮れる前に家に帰らなければ。また怒られるんだろうな。
お読みいただきありがとうございました!
面白いな、いいなと思っていただけたら、ブクマなどよろしくおねがいします!
『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしていただけるとありがたいです!