出会い
何でこんなことになってしまったんだろうか……。
戦いの余波で空き地となったところを歩きながら、死屍累々と言った周りの様子を見てため息をつく。
誤解されないように言っておくが、俺からは攻撃を一切していない。
ただ猿たちが武器と呼べるものを片っ端から奪い取ったってだけで……。
人と話すときに武器を構えてたエルフ側も悪いと思うんだ、うん。
あれ?やっぱ俺のほうが悪い?
いや、でも勝手にリミッターとか外して倒れるまで動いてたのはエルフの勝手だし……。
なんなら味方の攻撃に巻き込まれそうなエルフを守ってあげたりもしたんだけどなー。
「もうちょっと話を聞いてくれてもよかったんじゃないかなって」
愚痴りながら動物たちを指輪に収納する。
「それは無理というものじゃろ」
「!?」
突然耳元でささやかれてぞわっとする。
色気のある大人の女性の声だ!
突然の女性の急接近にドキドキしてしまう。
さっきまでのエルフは男しかいなかったから俺の記憶にある限り初めての女性との出会いだ。
後ろを取られているから顔は見えないけれどなんだか花の香までしてくるぞ!
いつの間にか喉元に突き付けられた短剣がなければ素直に喜べたんだけど。
というか、突き付けられた短剣がめちゃくちゃ怖い!
今までは俺の目に見えない速度の攻撃しかなかったから恐怖なんて感じる暇なかっただけなんだ!
指輪の信頼性は間違いないんだろうけれど怖いもんは怖い!
反射的に両手を挙げて無抵抗アピールをする。
「っ!どこまでもわしらを馬鹿にしおって!」
あれ!?逆効果だった!?
「いや、俺としても戦う意思はなかったっていうか――」
「嘘をつくな!なら何故わしらの問いかけを無視して使い魔に私たちを襲わせたのじゃ!」
やばい!怒ってる!まぁ、当たり前といえば当たり前なんだけど!
「いや、あいつら俺とは関係ないんですよ!不思議な生き物が住んでるんですね!この森!」
すまん!お前らのことを無下に扱う俺を許してほしい!
心なしか指輪から悲しそうな鳴き声が聞こえた気がした。
「今おぬしの自分の指に吸い込まれておったじゃろうが!関係ないなんて、馬鹿にしておるのじゃ!?」
いや、もちろん冗談だよ?そんなんで本気でごまかせるなんて思ってないんだからねっ!
なんかちょっと熱いような気がするがきのせいだな!
「いや、すみません!あいつらは制御が難しかったっていうか、俺の意思とは違ったといいますか、あいつらだけじゃなくて俺本人のことをもっとまっすぐ見てほしいっていうかぁ!」
どうにか和解に持っていこうと言葉を振り絞る。
必死な言葉ならきっとこの人のも通じる。そう信じて。
「いや、おぬしもわしらのことを挑発した挙句、貧弱と罵っておったじゃろうが」
そういえばそうだった!
馬鹿かさっきまでの俺!
「いや、ほんとにあの時は調子に乗ってたんです!ええ!本当に!イケメンどもが俺に対して必死になってんなって思ったらつい!」
やば!勢い余って言わなくていいことまで言っちゃった!
でもエルフがイケメン過ぎて悪役ムーブに興が乗ったのは間違いないし、俺だけじゃなくてイケメンなエルフ側にも責任はあると思うんだよね!
熱弁する俺を見てどう思ったのか、背後にいる女性はため息をついて短剣を下す。
「まあ、いいのじゃ。使い魔がいなくてもわしの攻撃は通らないみたいじゃしな。話し合うほか、わしにできることはあるまいて」
その言葉にホッとし、振り返る。
そこにいたのは美しいブロンドの髪を一つ結びにし、精巧な髪飾りをつけ、周りの男たちよりも数段美しく高級そうな服を着た色気のある女性。
俺はこの日、恋というものを知った。