プロローグ
ここは……どこだ……?
気が付くと一面真っ白な世界にいた。
目の前には思わずひれ伏したくなってしまいそうな神々しさを持ったお爺さんが立っていて、神というのはきっとこの人のような人を言うのだろうと思う。
それにしても、どうしてだろうか。自分の中から大切な何かが失われたような、それでいて安心したようなすがすがしい気持ちを感じる。
俺は死んだのだろうか。
「気が付いたかね?おぬしも気づいている通り、おぬしは死んだ」
やっぱりそうなのか。
その事実は思っていたよりすんなりと腑に落ちた。
「おぬしをここに呼んだのはおぬしにしてもらいたいことがあるからなんじゃ。受けてくれるな?」
その言葉は有無を言わせないような圧があったがさすがにすんなりと頷くわけにはいかない。
時間が経つにつれてあいまいだった意識も少しはっきりとしてきた。
俺にだって家族や友人がいたはずだ。
もしこの人が神なのだとしたら元の世界の人に一言別れを告げること、いや、蘇らせることもできるかもしれないのだ。
「たしかに、儂がしようと思えばそれらは造作もないことには違いない。しかし、おぬしがそれを本当に望んでるとは思えないのじゃ」
そんなはずはない。俺にだって肉親やクラスメイトが間違いなくいるはずなんだ。
何故かそれらの記憶はひとかけらも残っていないが、俺の記憶に常識として存在することだけは残っている。
そうか!俺に未練に残るような記憶が残っていると自分の言うことを聞かせづらいからこんな方法をとったんだな?
「いや、別にそうゆうつもりはないんじゃが……そこまで言うなら一度記憶も戻してやろう。後悔するなよ?」
俺は泣いて喜びながら異世界に飛んだ。