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第四十六話

 ノクトはホホが寝静まった後、住居スペースから出た。

 外に出ると外気は村の氷の冷気とと深夜の寒さが相まって肌寒い。


 ノクトは避難所の中央にある焚火の傍へ歩いていく。焚火の前で野営をしているラザフォードの元へ着いた。


「お疲れ様です、ラザフォードさん。交代の時間です」

「おぉ、ノクトか」


 焚火の火を見ていたラザフォードにノクトが野営の警備交代を知らせた。

 避難所の野営警備はラザフォードとノクトが担当していて、夜間の前半はラザフォード、後半はノクトが担当している。


 ノクトが野営警備の交代を知らせるとラザフォードは焚火の熱で焼いていた串に刺した黄色の木の実を手に取った。


「その木の実は何ですか?」

「これか?これはクルプルっていう木の実で生で食うと腹を壊す木の実だ。けどじっくり火を通すと腹を壊すことなく美味しく食べれるんだ」


 串に刺して熱していた木の実をノクトに見せた後、ラザフォードはじっくり熱したクルプルをかじった。ラザフォードの大きな口で人の握り拳ほどあるクルプルは一口で食べられる。


 ラザフォードの口に入ったクルプルはついさっきまで焚火の火で熱せられていたのもありラザフォードが口にした直後ラザフォードは口から熱を逃がすためハフハフと口を動かし熱を逃がす。程よく口の中から熱が逃げるとラザフォードはゆっくりクルプルを咀嚼していく。


「いや~、まさかこの村の傍にクルプルが実ってるなんて思わなかったぜ」

「そのクルプルってそんなに珍しいんですか?」

「クルプルの木自体はどこでも生えてるけど実がなるのは珍しいな。しかも生で食えないから誰も食べようとしない。けど熱を通せば温かい木の実の中でこんなに美味いと思える木の実はない」


 ラザフォードは熱したクルプルを咀嚼しながら満足そうな表情を浮かべながら話す。

 ノクトも他に串にささって焚火で熱されているクルプルから漂う鮮烈な甘く芳しい香気が鼻腔を通り過ぎラザフォードの言う通り美味であるのだろうと感じる。


「ノクトも食べてみるか?」

「良いんですか?」


 ラザフォードは焚火の傍に立てて熱していたクルプルが刺さった串を手に取りノクトに渡した。


「熱いから食べる時気を付けろよ」


 ラザフォードは食べる時の注意をするとノクトは熱したクルプルを一口かじった。

 ノクトはクルプルとかじった瞬間、口に中に焚火で熱された果汁が迸った。


 口の中で迸った果汁の熱に悶えるノクトは口の中の熱を逃がしていく。口の中の熱が逃げていくと口の中に甘くフルーティーな風味が広がる。外から漂う程強烈な甘みではなくとても上品な甘みで柑橘系を思わせる風味が口から鼻腔を通り過ぎていく。ほのかに酸味があり後味がさっぱりするのでまた食べたくなる味だった。


「美味しいですね!」

「だろ?」


 ラザフォードはどこか嬉し老な表情を浮かべて新しく熱したクルプルを口に運んだ。

 ノクトは再びクルプルをかじり食べ進めていく。ジューシーな荷重が口いっぱいに広がり舌が満足しているのが分かる。


「それでホホの嬢ちゃんの様子はどうだった?」


 新しく食べたクルプルを咀嚼し終え呑み込んだ後、ラザフォードは小一時間前にホホの様子を見に行ったノクトに尋ねた。悪魔との一件以来ラザフォードとホホはお互い名前で呼ぶようになった。


「今はぐっすり寝てます。丸二日間ろくに寝ないまま魔法薬の専門書を読み漁ってたようです」

「本気でノクトに魔法薬を教えてもらいたいんだな。それが分かって難題を与えるなんてノクトも意地の悪いことをするよな」


 ノクトからホホが眠ったことを聞いたラザフォードはホホの本気を理解した上で難題を与え達成できなければ旅に同行させないと宣言したノクトに何とも言えない複雑な視線で見る。


「今になってレイノスさんの気持ちが少し分かった気がします。俺が弟子入りを頼み込んだ時、こんな気持ちだったのかと思いました」


 ノクトは残り僅かになったクルプルを口に運び食べ終えると、ホホが頼み込んだ時の姿が二年前の自分とどこか似ている気がして、レイノスはこんな気持ちになったのだろうとラザフォードに話した。


 ノクトが弟子入りした時、レイノスはノクトの意志を証明できるのかと聞き返した。

 それと同じくノクトもホホが頼み込んだ時咄嗟にホホの意志を証明できるかと聞き返していた。


「師弟ってのはやっぱりどこか似てくるものなんですかね?」


 ノクトは愚痴っぽく呟いていた。


「それでもいいんじゃないか」


 ノクトの愚痴を聞いたラザフォードはノクトの愚痴を否定しなかった。


「ノクトもホホの嬢ちゃんのためを思って難題を与えたんだろ?多分聖騎士もノクトの言った通り弟子入りさせる時、同じ気持ちだったと思うぜ」


 ラザフォードはノクトと目を合わせて思った事を伝える。

 ノクトはラザフォードの話を聞いて何かすっきりした気持ちになる。


「ラザフォードさんに話を聞いてもらって良かったです」

「そういわれるだけで俺は満足だ」


 ノクトとラザフォードは焚火の火で熱されているクルプルを食べながら今度は他愛ない話を喋り始めた。

お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

明日も投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。

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