第四十五話
村が氷漬けになってから二日が経過した。
村の空気は氷の世界に変貌した村の気温は下がっているが決して氷が張り続けるような極寒ではない。それにもかかわらず村の氷は一切解けないままである。
村人達は村の氷を工具を用いて砕きながら氷を除去していく。ノクトやラザフォードも多分に漏れず工具を村人から借りて氷を除去していく。
そんな中ホホは村人の避難所で大量の平積みの魔法薬の本に囲まれている。
ノクトからクリアすればノクト達の旅に同行しつつノクトから魔法薬の修業を受けられるという条件で魔法薬の難題の一つを与えられた。
避難所には本棚なんて大層な物がない。その上他の人のスペースまで侵食しては迷惑になるのでホホは自分の睡眠スペースを使い魔法薬の専門書を平積みしている。
平積みされている本の壁の中にでホホは黙々と特級魔力回復薬に必要な手順、試薬が記載されている魔法薬の専門書から手順や試薬が同じ別の魔法薬の手順書をこの二日間ろくに睡眠を取らないで読み漁った。
ノクトに旅の同行を嘆願してからすぐに氷漬けの薬屋から魔法薬の専門書を引っ張り出して避難所に運んだあと自分の睡眠スペースに高く平積みしていき本の壁を作った。その中でホホは平積みにした本を読み漁り、丸二日かけて最後の未読の専門書を読んでいた。
「この手順だと……だめだ。でもこの手順なら……」
ホホは専門書を読みながら今まで読んできた専門書に書かれている手順や試薬でどの調合手順が良いのか検討している。
ホホはただ専門書を見て覚えるよりも専門書を読んで覚えながら今まで読んだ内容をシミュレーションしている。その方が時間を無駄にしないと一日前に気付き現在まで繰り返していた。
そんなホホは丸二日ほとんど睡眠を取れていないせいで目元に濃い隈ができている。
ホホは頭の中で調合手順を組み立てながら最後の専門書を読み進めていくといつの間にか最後の完読していなかった専門書を完読していた。
「やっと全部読み終わった~」
ホホは専門書を全て読み終わり息を吐いた。集中して専門書を読み進めて目が疲れたホホは眉間を指でもみほぐす。
「どうやらここに積んである専門書全部読み終わったみたいだな」
眉間をもみほぐしているホホに本の壁の外から声が聞こえた。
ホホは本の壁を潜り外を見ると本の壁の近くにノクトが立っていた。
「先生⁉」
ホホはノクトが視界に入ると反射的に疲れている目を大きく開いた。
本の壁の傍にいるノクトは両手にそれぞれ木製のコップを持っていた。
「これを飲んで少し休憩しろ」
「ありがとうございます」
ノクトは手に持っているコップを一つホホに渡した。ホホはノクトから渡されたコップを受け取るとコップの中から湯気が上がっている。
コップの中身を覗くとほのかに黄色みがかったとろみのある液体が入っていた。コップから立ち上がる湯気と共にや災独特の甘く芳しい香気が鼻腔をくすぐる。
「避難所で支給されたスープだ。ホホも本を読むのに一生懸命で今日は何も食べてないだろ?」
ノクトが渡したスープの好機を嗅いだ直後ホホの腹部から大きな音が鳴る。ノクトの言う通りホホは専門書を頭の中に覚えるのに必死で今日は何も食べていなかった。
腹の虫が盛大な音を鳴らしたホホは恥ずかしくなり顔を真っ赤にする。
「一日何も食べてないならそれ普通の反応だ。冷める前に飲んだ方が良い」
ノクトはホホに温かいうちにスープを飲むのを勧めた後手に持っているコップに口を付けてすーぱを飲み始めた。
ノクトがスープを飲み始めた後、ホホもコップに口を付けてスープを口の中に入れた。
野菜本来の優しい甘さと乳製品のまろやかさが口中に広がり疲れた体に温もりが染みわたる。
一日中何も口にしてなかったホホには優しい味は体中の細胞一つ一つの疲労が拭われるようだった。
ホホは無言でそのまま口に入れるには少し熱いスープに息を吹きかけて冷ましながら飲み進めた。
黙々とスープを飲んでいるホホは二日間睡眠不足で青白くなっていた顔色も徐々に赤みを帯びていく。
「……ふう」
コップに入っていたスープを飲み干したホホは体中に温もりだ伝わり安心するような気持に包まれる。
「それにしてもたった二日でこの本の壁を読み終えるのはさすがだ」
ノクトがホホを囲んでいた専門書の壁を見ているとノクトの傍から寝息が聞こえてくる。
ホホはスープを飲み干したコップを持ちながら自分の睡眠スペースに倒れるように寝ていた。
「まあ、これだけ大量の本を二日で読み終えるのに睡眠を削ったのは当然か」
ノクトはコップに入っているスープを残したまま床に置いてホホの持っている空のコップを手に取りホホの上に毛布を掛けた。
「少しは容量良く休むことを覚えさせる必要があるな」
ホホに毛布を掛けたノクトはそのまま座りスープが残っているコップを取って再び飲み進める。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
本日も読んで頂き誠にありがとうございます。
今後も投稿しますので良ければ次話も読んで下さい。