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第四十四話

 ホホが地面すれすれで頭を下げた状態で頼み込むとノクトは驚愕した。


「お前自分が何言ってるのか分かってるのか!俺達についてくるってことは今日みたいにいつ襲われてもおかしくないんだぞ!」


 ノクトは当然怒鳴った。もちろんホホの身が心配だからだ。これ以上ホホに危険な目に遭ってほしくない。


「それは百も承知です!けどあたしが悪魔が狙っていた本を所持してた時点で本を先生達に渡したところで悪魔に狙われると思います!それなら一緒に旅をした方が安全だと獣人のおじさんにも言われました!」


 ラザフォードの入れ知恵かとノクトは唇を噛むがラザフォードの言う事ももっともでホホの安全を考える上ではホホが悪魔に狙われても対処できる上ホホの所持する本を守る事もできる。悪い案ではない。


「どうしてホホはそこまでして魔法薬を学びたいんだ?」


 ノクトはホホに魔法薬について教えていた当初あら気になっていた。ノクトが自分から教わるのを諦めさせるために出した宿題もやり遂げて魔法薬の調合も厳しく教えた。もちろんホホは毎回涙目になりながらノクトが課した課題をこなしていた。

 そこまで大変な指南を受けてもノクトの下で魔法薬を学びたい理由があるはずだ。


「あたしは物心つくくらいに両親を失いました。正直両親の顔も朧気にに覚えてるくらいです。あたしを拾って育ててくれたおじじにはお孫さんがいたんです。その子は小さい頃から体が弱くてオジジが調合する魔法薬もたまに服用してました。けどそのお孫さんは突然描台が悪化しました」


 ノクトはホホの話を途中まで聞いて何となく想定できる選択肢が浮かぶ。


「そのコンさんのお孫さんはどうなったんだ?」


 ノクトはホホにコンの孫について尋ねた。


「容態は悪化する一方で手の打ちようがなくなって帰らぬ人になりました」


 ノクトは想定で来た可能性の一つが当たる。コンの薬屋にコンとホホ以外の子どもはいなかった。コンとホホ以外に住んでいる様子もなかった。


「その時オジジはあたしに言ったんです。「どんなに有用な魔法薬でも万能じゃない」って。あたしは嫌だったんです。オジジはお孫さんの病気を治すために魔法薬を調合して必死に頑張ったのに、それが叶わなかったのが。だから——」


「そんなの当たり前だ」


 ホホが話している途中でノクトは話に割り込んだ。


「コンさnの言った通り魔法薬は有用だが万能じゃない。それに魔法薬が一つの大病に効果のある特効薬を開発するのにかかる時間は短くても約十年。効果や調合手順が確立されている魔法薬は大体二十年という長い時間をかけて確立したものだ。言い方は悪いがお孫さんのために病気を治す魔法薬を作ろうとしたコンさんは冷静さを欠いたバカでしかない」


 ノクトは事実をホホに言った。この後ホホが怒ってノクトを責めるか泣き出す事をノクトは想定する。けれど事実を言わないと今後ホホは後悔するとノクトは思った。コンさんもそれを分かっているからホホに魔法薬は万能でない事を伝えたはずだ。


「……分かってます。あの時必死に魔法薬を作ってたオジジは何かに憑りつかれたように魔法薬を作るのに必死でした。なのにお孫さんが亡くなった後、悔やむよりも何か解放されたような安らかな顔をしてました」


 ノクトの想定と違いホホは怒る事もなくこともしなかった。ただ今まで通りノクトに話すだけだ。


「けどあたしは悔しかったです!だからあたしはどんな病気でも治せる万能な魔法薬を作りたいんです!そのためにもっと魔法薬を勉強して、どんな病気も直せる魔法薬を作りたいんです!」


 ホホは地面に頭を付けそうな体勢を変えず自分の正直な気持ちを大声で吐き出した。


「それがどれだけ無謀なこと言ってるのか理解してるのか?」


 頭を下げているホホにノクトは現実的な言葉をかけた。確かにホホの思いは伝わっった。優しい言葉をかけた方がホホも心が楽にるだろう。けれど現実はそんなに優しくない。無謀を覆す人間は限られている。それも才能、努力、運、どれかが少し欠けただけで絶対に覆せない。


「確かに無謀かもしれません。でも無謀という言葉を聞いて諦めるくらいならあたしはここに来てません」


 ホホは顔を上げてノクトを見た。ノクトの目に映るホホは自棄になった表情でもなく何かを訴えるような鬼気迫る表情とも違う。ただただ真剣な表情をしていた。

 ノクトはその表情を見て何か懐かしい感覚が蘇った。


「だったらそれを証明できるのか?」

「え?」


 ノクトはホホの真剣な表情に何かを感じた後ホホに言葉を紡いだ。

「俺はこの村の建物をもとに戻すためにもう少し長居する。その間に魔法薬の難題の一つと言われている特級魔力回復薬の収率を現段階で知られている三割から上げる調合法をホホの力だけでつくることができたらホホの言った言葉に嘘はないって認める」


 ノクトはホホに宿題を与えた。ホホもノクトが言った特級魔力回復薬の収率の北砂は知っている。それが魔法薬を生業としている人達が血反吐を吐きながら解決しようとしている事も承知している。ホホもノクトが宿題を与えた時一瞬驚嘆した。けどホホはノクトの真剣な表情を見て理解した。


 ノクトはホホが無謀を覆せる人間かどうか試すために難題を課した。難題を解決できないならば無謀を覆す実力はないとホホ自身に理解させるため、覆せればホホには無謀を覆せる素質があると理解させるために課題を出した。


「分かりました。先生はあとどれくらい村に滞在するんですか?」

「短くても一週間は村にいる」


 ホホはノクトに返事を返しいつまで滞在するか尋ねた。ノクトは氷漬けになった村を見て短くても一週間は復旧にかかると概算した。


「あたしが難題の一つを解決したら約束通り先生達の旅に同行させてください!」

 ホホは真っ直ぐにノクトを見つめてノクトと約束を交わした。

お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

明日も投稿しますので良ければ次話も読んで下さい。

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