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第三十九話(表裏)

 ノクトは目を開くと目の前には手足をへし折られたダリルが床に転がっている。

 ノクトはダリルの記憶を読んでダリルを使って村を放火した首謀者が聖母教徒である事を知った。


「これで分かりましたか?放火したのは私達ではありません」

「そしてこの男を使った首謀者について分かったはずです」


 悪魔達はダリルの記憶を読んだノクトに自分達が放火の無実を証明した上で放火の首謀者が勇者側の聖母教徒である事を示した。


 ノクトは悪魔との会話で大体予想できていたがダリルの記憶を読んで予想が確信に変わった。

 ダリルの記憶は魔術的な方法で改竄をされていない。ダリル本来の記憶から事実を知ったノクトは虫唾が奔った。


「何で村を放火する必要があったんだ?」


 ノクトは不本意ながら味方陣営になった聖母教徒によって村人を巻き込んでまで悪魔が狙う本を焼き払い、あわよくば悪魔達を火事に巻き込む謀略に胸中から溢れそうな怨嗟を抑え込み悪魔達に尋ねた。


「そんなの簡単です。聖母教徒は改竄された聖典を妄信するような奴らです。聖典に書かれている事であればそれが一般論では犯罪でも天啓と勘違いしそれが許される環境だからこそ聖母教徒が村一つ放火しようが奴らには気に止めもしないのです」


 悪魔は聖母教徒が暴虐を働いても許される仕組みがあるからこそ聖母教徒は暴虐をやめることをしない負の連鎖を伝える。

 悪魔の話を聞いたノクトは腸が煮え繰り返っていた。


 聖母教の教えを妄信して平然と村の放火を依頼する聖母教徒の卑劣さ。自分の手を汚さず自分達の都合の良い人間を駒として使い利用価値がなくなれば平然と捨てる非道な手口。それを犯罪と一切思わず天啓と妄信する思考回路にノクトは反吐が出る思いだった。

 そのような奴らの下で動いている自分にも嫌悪感を抱く。


「どうですか?ノクト様は人として非道極まりない人間のクズと一緒にいて辛くないですか?」


 突然悪魔の一体が話を変えてきた。


「私達はこの腐りきっている人間達からも世界を救うために動いています。この世界が真の意味で平和になるためには腐った人間を排除しなければなりません」

「それで提案です。ノクト様」


 悪魔達は急に腰を落としてノクトの前に跪いた。


「私達と共に世界を良くするため魔王様の右腕として手を組みませんか?」


 ノクトは目の前で跪く悪魔達から魔王と手を組む提案を持ち掛けられた。

 提案を持ち掛けられたノクトは悪魔達からの提案に驚嘆した。


 ノクトの胸中には養父であるエドワードを殺した悪魔への憎悪と味方側の非道極まりない人間性の聖母教徒達への怨嗟が渦巻く中悪魔からの提案に一瞬考えてしまった。


 村人の命を道具とも思っていない聖母教徒について悪魔や魔王を倒すのか、悪魔達の言う本当の平和を実現するべきなのか悩んでしまった。悪魔達の話す内容に何の確証もない言葉にノクトが耳を貸して一瞬でも考えた時点で悪魔側の勝ちだ。


 ノクトは一瞬でも勇者側か悪魔側かどちらに着くのか考えた後も脳裏から完全に離れない。


「ノクト様。どうかご決断を」

「ノクト様の決断で世界の行く末が変わります」


 ノクトの判断力を鈍らせるには十分な提案を投げかけた悪魔達は矢継ぎ早に決断を急かす。

 ノクトは決断を急かしてくる悪魔達の策である事は把握している。


 悪魔達が急かせばノクトは決断する必要のない事でも脳裏にはア先程まで脳裏をよぎっていた思考が再び蘇る。そして無意識のうちにノクトの判断力を奪っていく。

 ノクトが悪魔達の策にはまりどんどん判断力が欠如していく。


 今の状況は跪いた悪魔達に攻撃するには絶好の機会なのはすぐ分かるはずだが今のノクトの脳内は勇者側か悪魔側かの二択が脳内を占領するあまり目の前の機会を見失っている。


 そしてノクトは閉じていた口を開こうとする寸前、後ろから弱く引っ張られる感覚を覚えた。

 ノクトは後ろからかかる力の方を見るとホホが後ろからノクトの服を強く掴んでいた。ホホは目の前にいる悪魔達の偉業の顔に恐怖しているのが原因で無意識にノクトの服を強く掴んでいた。


 ホホは恐怖で表情が歪み体中が震えている。

 そんなホホの様子を見たノクトは今まで脳内を占領していた思考が途切れた。


 そのおかげで判断力が戻っていくノクトは今の状況を十分に把握できる状態まで戻った。

 ノクトは開こうとした口を再び閉じてポケットから何かを手に取り目の前に転がるダリルの頭に握っている物を置いた。


「何をなされているのですかノクト様?」

「この男の記憶を記録している」


 悪魔がノクトの行動に質問するとノクトはダリルの頭に置いた魔石に先程ノクトが見た記憶を複写している事を告げた。


「これを聖母教皇に問いただす。俺は悪魔の言動が真実をなのか分からない以上悪魔を信用しない」


 ノクトはダリルの記憶を魔石に複写し終わると魔石を懐に締まった。魔石を懐にしまうとノクトは腰の聖剣を引き抜いた。引き抜いた聖剣を構えて聖剣から聖なる白と黒の気が噴き出す。

 ノクトは聖剣の聖なる気を足元に放ち土埃を巻き上げた。


 土埃を巻き上げたノクトは後ろで強張っているホホを抱えた。ノクトはホホを抱えたまま後ろの壁に聖剣術をぶつけて大きな穴を開けた。

 金に穴が開いた直後ホホを抱えたまま全速力で穴を通り悪魔達から逃げ出した。

お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

明日も投稿しますので良ければ次話も読んで下さい。

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