第三十七話(表裏)
悪魔が視界に入った途端、火の海だった村が一瞬で火の海が氷漬けにされて村全体が氷の世界に変貌した。
村人達は一瞬で氷の世界に変貌した村を見て驚愕のあまり氷漬けになった村の風景から目が離せなかった。
ホホを羽交い絞めにしていた大人も驚愕のあまり力が緩む。ホホは羽交い絞めにされた力が緩んだ事を体感すると羽交い絞めにする腕を振り解いた。
「おい!何してるんだ!」
羽交い絞めを振り解いたホホに大人が呼び止めようとするが氷漬けになった村の中へ走っていくホホは聞く耳持たず氷漬けの村に戻っていく。
「あのバカ!」
ノクトは村へ戻ったホホに毒づいた後ホホを追って村に戻った。
ホホはおそらく薬屋に本を置いたままで薬屋に戻ったのだろう。
ノクトはホホが向かったであろう薬屋に向かう。
薬屋に向かう道中悪魔と接触した時の対処法を考えていた。
ノクトは村に戻る前にラザフォードとの修行で勇者の力を使い切っている。つまり悪魔を滅する力を使えない今の状態では勇者の力が付与されていない聖剣術と魔術のみで相手しなければならない。
できればラザフォードと合流してから行動するのが最善策だがラザフォードもおそらく悪魔達と相手しているだろう。
そうなればホホを安全な場所まで運んで勇者の力なしで悪魔と戦わなければならない。
明らかに不利な戦況だ。それなら一層ホホを早く見つけて安全な場所に避難させる事が最優先だ。
ノクトは全速力で薬屋へ走る。
薬屋の前に着いたノクトは急いで氷漬けの店に入ると予想通りホホが本を探しに店の中にいた。
「ホホ!」
ノクトは大声でホホに呼び掛けた。
ノクトの声が聞こえたホホは声を発したノクトの方を見た。
「先生⁉」
ホホはノクトが視界に入ると本を探していた手を止めた。
ノクトは手を止めたホホに駆け寄る。
「ホホ!今がどういう状況なのか理解してるのか!何が起こるか分からない状況で不用意に戻るのはただの自殺行為だ!」
ホホはノクトがすごい剣幕で叱るのを初めて見た。ノクトのすごい剣幕を初めて見るホホは慄いた。
「……けど火が消えたから大丈夫だと思ったんです……」
ホホはノクトに慄きながらも薬屋へ戻って本を探しに行った理由を述べた。ホホが薬屋に戻った理由を聞いた直後ノクトは怒りや苛立ちと違う感情が渦巻いた。
「状況を把握してない状態で危険な場所に行くな‼死にたいのか‼」
ホホが今までの人生で聞いた事のない怒声をノクトがあげた。
ノクトの怒声に驚いたホホは体を縮めて目を閉じた。目を閉じたホホは次の瞬間何かが自分の体を包む感覚を覚えた。
体を包むほのかに温かい感覚にホホは目を開けるとノクトがホホを抱きしめていた。
「心配かけさせるなよ……」
先程まで怒声をあげたあととは思えない不安そうな声音でホホに言葉を発した。
ホホはその時自分が行った行為がどれだけ他の人に不安を煽るような愚行をしていたのか。ノクトに心配をかけさせたのか改めて知った。
「……ごめんなさい」
ノクトがどれだけ心配していたのか知ったホホは素直にノクトへ謝罪した。
ホホが謝罪した後ノクトは抱きしめていたホホから離れた。
ノクトが離れた後ホホの視界に探していたものが入った。
ホホは探していた本を拾った。本を拾ったホホは安心した表情を見せる。
「探し物は見つかったんだな。なら一刻も早く村の外に——」
ノクトがホホに村の外に出るのを伝える途中で何者かが天井を突き破って落ちてきた。
埃が舞い上がる中、身に纏う黒い外套と異形の顔。悪魔が二体薬屋に落ちてきた。
「ホホ!俺の後ろから絶対に離れるな!」
ノクトはホホに忠告すると腰に携えていた聖剣を抜いて構えた。
「奇遇ですね。翻訳本を探していたらまさかノクト様と出会うとは」
「これも運命の悪戯というものなのですかね?」
悪魔がノクトに向かって話しかける。
ノクトは心の中でこの場で一番出会いたくない相手と出会い最悪の気分だった。
ノクトは聖剣を構えたまま後ろで悪魔に怯えてノクトの服を掴んでいるホホごと後ろに下がりつつ距離を取る。
「そこまで警戒しなくても大丈夫ですよノクト様」
「その通りです。私達はそこの亜人の少女が所持している本さえ渡してもらえればそれでよいのです:
悪魔達はホホの持っている本が目的らしい。
「お前達がこの村に火を放ったり氷漬けにしたのか?」
ノクトは村に起こった奇怪な現象の現況が悪魔の仕業なのか尋ねた。
「私達は火事になった村を氷漬けにしましたが火事を起こしてはいません」
「私達がこの村に到着する前に村に火は放たれていました」
悪魔達はノクトが尋ねた事に答えた。
「だったら誰がこの村に火を放った?」
ノクトは悪魔達を睨みながら低い声で尋ねる。
「私達の邪魔をしたいものなど決まっています」
「ノクト様も私達の邪魔をしたいものの見当はついているはずです」
悪魔達が村に火を放った犯人についてノクトに回りくどく説明してくる。
悪魔の言葉にノクトは一つの推測が浮かぶ。
悪魔達にホホが持つ本を奪われないために村ごと焼き払うような横暴な所業が許され、なかったことにできる者。
「それにしてもタイミングが良過ぎる!お前達が来るのを見計らって村に火を放つ事がなぜできる⁉」
悪魔がホホの持っている本を手に入れる直前に火を放つなどあまりにもタイミングが良過ぎる。まるで本を探しに来た悪魔諸共巻き添えにするようだ。
「ノクト様も知っているはずです。あちらには予見者がいることを」
「あちらにしてみれば私達がいつ村に来るかなどお見通しなわけです」
悪魔の話を聞いて虫唾が奔る感覚を覚えた。
悪魔の話が本当であれば村人の命を奪ってでも悪魔を火事の巻き添えにしたいのかと考えてしまう。
「お前達の話が信用できる証拠はあるのか?」
ノクトはあくまで根拠のない話を信用しない事を悪魔に伝える。
「証拠ならありますよ」
悪魔の一体が魔法陣を展開して光の柱が立つ。立ち上がる光の柱が消えると手足が普通では曲がらない方向に曲がっている男性が魔法陣の上に転がっていた。
激痛で意識を失っているが呼吸はしている。どうやらまだ男性は生きている。
「この男が村に火を放った犯人です。ノクト様の魔術であればこの男の記憶を読むことができるでしょうこれが私達が提示できる証拠です」
悪魔は火を放った犯人を捕まえていた。その上で提示できる証拠として殺さず逃がさないために手足を使いものにできないようにした。
「どうぞ、ノクト様。この放火魔の記憶を読めば真実が分かります」
悪魔達は手足をへし曲げた放火魔をノクトの足元まで投げた。
足元に転がった放火魔は手足を経絞められた激痛に顔を歪ませたまま意識を失っているせいでノクトの後ろにいるホホが恐怖で体をこわばらせた、
ノクトは悪魔が足元まで投げた放火魔の頭の前に手をかざす。かざした手から魔法陣が浮かび上がりノクトは足元に転がっている放火魔の記憶を読んだ。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
本日も読んで頂き誠にありgとうございます。
明日も投稿しますので良ければ次話も読んで下し。