第三十六話(表裏)
ラザフォードが避難誘導を一通り終えて自分も避難しようとすると肌のひりつく感覚と共に目の前には悪魔の顔を模した仮面を被った少女が現れた。
「数日ぶりですね。勇者様」
目の前の仮面の少女は恭しくお辞儀をするとラザフォードは腰に携えた聖剣を引き抜いてお辞儀を終える前の仮面の少女に奇襲をかける。
ラザフォードの聖剣術により周囲の火事で燃え上がる炎が統率を取るように仮面の少女を中心に炎がとぐろを巻き出す。
火事で建物に燃え移る炎はラザフォードの聖剣術で仮面の少女に引き寄せられて建物の炎が取り除かれた。
とぐろを巻く炎は仮面の少女の背丈より高く巻き上がり徐々に仮面の少女を締め付けるために用に炎が接近する。
とぐろを巻く炎が仮面の少女を締め付けようとした時炎が突然氷に変わり凍結した。
凍結した炎の冷気が空間に伝播していくと村中に燃え移った炎が一瞬にして凍結して建物全体が氷漬けになる。肌を焼く熱気が嘘のように消えて肌が悴む冷気が空間を支配する。
「挨拶の途中で攻撃とは勇者様も卑怯な手を使いますね?」
氷の壁に四方を囲まれた仮面の少女は氷の壁越しにラザフォードへ話した。その声は奇襲に驚く声ではなく余裕を感じさせる分に気の口調だった。
仮面の少女が話終わると四方に囲まれた氷の壁は一瞬で砕け散り仮面の少女の姿を見せた。
「村中を火事にしたと思ったら一瞬で氷漬けにしたお前に正々堂々と戦うだけだと思うなよ」
ラザフォードは村中の火事で炎が舞い上がる状況を一瞬で氷の世界に変えてしまう仮面の少女の力量に対して吐き捨てるように言った。
「それに勇者様は勘違いしてますが私は村に火を放っていません。むしろ何者かが起こした村の火事を全て鎮火したしたのです」
仮面の少女は火事を引き起こしたのは自分ではないと主張するとともに火事の鎮火は自分がやったと主張する。
「それよりなぜ悪魔側のお前がこの村に来た?」
「それを敵側の勇者様に言うと思いますか?」
ラザフォードの威圧感をはらんだ喋り口調に一切臆さず仮面の少女は質問を拒否した。
「生憎お前達の狙いは俺達が所持している魔王の魔力の欠片じゃないことは知っているんだ」
ラザフォードの言葉に仮面の少女が仮面越しにも関わらず考えを読まれたと思い驚いているのが伝わった。
「まさか、他の勇者達から連絡が届いたのか?」
「こんなことで取り繕ってたメッキがはがれるようじゃまだまだだな」
ラザフォードはシルフィーからの伝書で悪魔側の狙いが勇者達が所持している魔王の魔力の欠片ではなく他の何かである事を知っている。その事を使って言葉で揺さぶるつもりだったが予想以上に目の前の少女は言葉の揺さぶりに弱い事が判明した。
「それに悪魔達も数体この村で何か探してるみたいだな?」
ラザフォードはすでに左目に勇者の力を込めて第一開放状態の力を使って村中に存在する悪魔の魔力を目視していた。
左目の力で確認した限り悪魔の数は二体程度。おそらく仮面の少女と戦闘を繰り広げている間に悪魔がこの村にある何かを探し出す作戦だろう。
仮面の少女達が探している物は一体何か不明だがシルフィーの伝書から本のような見た目のものである事は分かっている。
「まさか悪魔があんな本を探しているとは予想もしなかったぜ」
「私達の探しているものを知っているのか?」
「やっぱり本を探してるんだな?やっぱりお前はもっと交渉術を勉強した方がいいぜ」
「カマをかけたのか……!」
ラザフォードの言葉の誘導に乗せられた仮面の少女は仮面に隠れているはずなのに悔しそうな顔が見えるような苦々しい雰囲気を醸し出した。
「事態が分かった時点でお前とまともに戦う気は毛頭ない。ここでこいつらの相手をしてろ!」
ラザフォードの聖剣から炎が噴き出し火の粉が空中に飛散する。飛散した無数の火の粉は鳥の形状に変形して仮面の少女に襲い掛かる。
無数の火の鳥が仮面の少女に向かって襲い掛かろうとすると仮面の少女は魔法陣を展開して光の球を生成して火の鳥に向かって射出する。射出された光の球は火の鳥と衝突して火の鳥が火の粉に飛散する。
仮面の少女の魔術で火の粉が飛散した直後火の粉が火の鳥の形状に変形した。しかも飛散して複数の火の粉が全て火の鳥に変形した分火の鳥の数が増えている。
「この聖剣術は攻撃すればそれだけ数が増える自律型の聖剣術だ。お前はそいつらと遊んでな」
ラザフォードが聖剣術の火の鳥を放ち仮面の少女に火の鳥の仕組みを言い残した直後ラザフォードは氷漬けにされた村の中央へ走っていく。
仮面の少女もラザフォードの後を追おうとした瞬間、聖剣術の火の鳥が行く手を阻む。仮面の少女が行く手を阻む火の鳥を追い払おうと下手に魔術を使えば火の鳥の数を増やしてしまう。
行く手を阻み襲い掛かる火の鳥を躱して火の鳥を放ったラザフォードを探すと既にラザフォードの姿はなかった。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
今回も読んで頂き誠にありがとうございます。
明日も投稿しますので良ければ次話も読んで下さい。