表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/336

第三十四話

 村の外れの崖付近でノクトとラザフォードは昨日と同じくノクトの右目の第二開放状態の修業を始めていた。


「その調子だ。昨日より早く右目に力が集まってるぞ」


 勇者の右目の修業でラザフォードから力を集める時のコツを実践して二度目の現在、右目に集める力が右目を中心に渦を描きながら集まるイメージを想像しているノクトの右目の紋章は四回の修業の中で一番強く輝く。

 強く輝く右目の紋章の幾何学的な文様が変形し始める。


「あともう少しだ。そのまま力を集めて蓄え続けるんだ」


 ラザフォードの言う通り今の調子で力を集め続けると突然修業後に覚える脱力感が全身に感じた。

 幾何学的な文様が変形していた右目の紋章も変形が途中で止まったと同時に紋章の輝きも急激に弱くなり浮かび上がった紋章が消えていた。


「……また失敗した」


 全身に感じる脱力感にまた第二開放状態の力を不発に終わってしまった事を理解した。

 ラザフォードはノクトが第二開放状態の力を不発に終えたのを見た後ノクトに歩み寄る。


「そんなに落ち込むな。まだコツを教えて二回目で紋章の文様が変化し始めたんだ。俺より早くコツを掴んでる方なんだ。もっと喜んだらどうだ?」


 ラザフォードは落ち込んでいるノクトに励ましの言葉をかけた。


「確かに右目に溜まっていく力が前より多くなっているのは俺も感じてます。その分反動が大きくて回復に今まで以上にかかるのがとてももどかしいです」


 昨日の夜に修業した時に失敗してから力を回復するまでこれまで以上に時間を要した。前は昼前に修業したのが今日は昨日消失した力を完全に回復するまで昼過ぎまで時間がかかった。

 今の時間に消失した力を完全に回復させるのには今日中では無理だ。


「まあ、明日にはこの村から出るんだ。今日はゆっくり体を休める方がいいだろう。今日は薬屋で薬を買いにいくか」

「そうですね。今日で店主との約束は終わりですから四割引きで薬を買えます」

「にしても驚いたぞ。最初は亜人の嬢ちゃんに教える気のなかったノクトが修業を終えてから薬屋に行って嬢ちゃんに魔法薬を教えるなんて」


 ラザフォードはノクトを見て何か感慨深い表情を浮かべる。そんなラザフォードをノクトはジト目で見返す。


「諦めてもらえるように一日じゃ終わらないと思っていた宿題をちゃんと終わらせてきたから引き際を失っただけです」

「そんなこと言ってるけど、あの嬢ちゃんが宿題を終わらせてくるのを分かって宿題を渡してるように見えるのは俺の検討違いか?」


 この数日でラザフォードはノクトを事をよく観察している。

 ホホに魔法薬の指南を受けさせる気が毛頭ないのなら最初から断る事もできたはずだ。しかしホホに諦めさせると言って高難易度の宿題を与えて実際に魔法薬の調合も指南している。

 ノクトもホホに指南するのも満更でもないのだろう。


「ラザフォードさんがそう思うのならそれでいいです」


 ノクトはラザフォードの指摘をはぐらかすような言い回しで話題を終わらせようとした。

 ノクトとラザフォードの会話が一区切りついた時、風が強く吹いつけた。

 風が強く吹く空から小鳥の囀りが聞こえて二人は空を見上げると小鳥の姿をした光の塊がノクトの方へ空から降りてくる。


「何だあれ?」

「勇者シルフィーの聖剣術の伝書だ」


 ノクトが光る小鳥について疑問に思っているとラザフォードが光る小鳥を見てシルフィーの聖剣術である事を教える。

 空から降りてきたシルフィーの聖剣術の小鳥がノクトの方に止まった。


『ノクト。勇者ラザフォード。この伝書が音声を流しているということは私が無事に生きていて無事に伝書が届いているのでしょう。手短に用件を話します。数日前、私達はとある村で前回相対した仮面の女性と再会し戦闘しました』


 ノクトとラザフォードは聖剣術の伝書の音声の途中までを聞いた直後、驚愕で顔が険しくなった。


『私達は最初、仮面の女性は私達が所持している魔王の魔力の欠片だと思いました。しかし彼女は魔王の魔力の欠片ではなく村にある何か本のようなものを奪っていきました。幸い私達が到着した村には村人が誰もいなかったおかげで怪我人は出ませんでした』


 伝書の音声を聞いているノクトとラザフォードは険しい顔をしたまま聖剣術の伝書を見ていた。


『お二人も十分に気を付けて下さい。悪魔側の狙いが不明な現在、より警戒するのが賢明だと考えられます。何か私達に伝えたいことがあればこの伝書に念を込めて送り返して下さい。それではお互い気を付けましょう』


 聖剣術の伝書から音声が流れなくなるとノクトとラザフォードはお互い視線を合わせた。


「あの仮面の女。また現れやがったのか」


 ラザフォードは苦虫を噛み潰した表情を浮かべて吐き捨てるように話す。

 ノクトは聖剣術の伝書から仮面の少女の事が話されてからの売りにシャルの顔が浮かんでいた。しかしノクトは脳裏に浮かぶシャルの顔を掻き消すように伝書から聞いた事態について頭の中で整理していく。


 シルフィー達はとある村に到着すると仮面の少女が到着した村に現れた。シルフィー達は最初シルフィー達が所持している魔王の魔力の欠片を奪うことが目的で仮面の少女が現れたと考え仮面の少女と戦闘をした。しかし悪魔側はあ狙っていたのは魔王の魔力の欠片ではなく別の物だった。それは本のような品だった。


「けどまた何で悪魔側は本なんかを探してるんだ?」

「俺にも分かりません。けど伝書の言っていた通り悪魔側の狙いが分からない今、十分警戒する必要があります」


 ラザフォードが疑問に思った事にノクトも分からないが、伝書で伝えた通り十分に警戒する必要があるのは間違いない。

 ラザフォードは吹きつけてくる風の空気を獣がにおいを嗅ぐ仕草と同じ鼻の動きをする。

 空気を嗅ぎ終わるとラザフォードは血相を変えて風上の方向を向いた。


「村で火事が起きてる!」


 鼻の利く動物と同じくらいの嗅覚を持つ獣人のラザフォードは風上の方向である村の方角を向いてノクトに伝える。

 ノクトもラザフォードの話を聞いた直後の売りによぎる幼馴染の顔が浮かび上がってしまう。


「早く村に戻って救助に行くぞ!」

「分かりました!」


 ラザフォードの言葉にノクトは声を張って答えると二人は全速力で村へ戻る。

明けましておめでとうございます。

tawashiと申す者です。

今年も毎日投稿ができるように体調を崩さないよう気を付けていきます。

明日も投稿しますので気が向いたら読んで下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ