第三十三話(裏)
シャルは一緒に同行したシグマと共に悪魔達のアジトに戻った。
「陽動ご苦労だったシャルロット」
シグマは今回の作戦で陽動に尽力したシャルロットに労いの言葉をかけた。
「それより、今回こそ本物の翻訳本なの?」
シャルはシグマの手に持っている本について尋ねた。
「開いてみなければ分からぬ。なにせ探知魔術でも本物と偽物の区別がつかないのだ。こればかりは虱潰しに探していくしかない」
「これまで五回中五回連続で偽物を引いたのよ。そろそろ本物を引きたいわ」
シグマの返答にシャルは渋い顔をした。
シャル達は魔王の魔力の大半を奪還してから数日、魔王の指示で二年前エドワードの集めた聖典の解読した後の解読文を翻訳する翻訳本を探していた。
悪魔達が半年かけて解読した解読文にはところどころ解読しても翻訳できない部分が存在した。その部分を解読するために翻訳本を探していた。
「まさか次に翻訳本を探す場所に勇者達がいるとは思わなかった」
「だから魔王は私とシグマを同行させたんでしょう」
シグマ一体では翻訳本を探索しながら勇者二人の相手をできない。シャルの陽動がなければ不可能だった。
「それではシャルロット頼むぞ」
シグマは手に持っている翻訳本をシャルに手渡した。
翻訳本を手渡されたシャルは受け取った後本を開くために表紙を捲ろうとした。
表紙を捲ろうとしたとき翻訳本から魔法陣が浮かび出した。浮かび出た魔法陣が一瞬で消失すると翻訳本の端から火か点いた。
「どうやらこれも偽物のようだな」
シグマはシャルが開こうとした翻訳本から突然火が点いた事で偽物であると判断した。
シャルは翻訳本を開く時に偽物の翻訳本であれば自動的に燃やす魔術を展開していた。
「だけど聖典を崇拝している教徒達も用心深いわね。偽物にまで悪魔が翻訳本を開こうとすると灰になるまで焼き尽くしてしまう仕掛けを施すなんて」
「それだけ我らに本物の翻訳本を渡したくないのだろう」
シグマはシャルの手にしている火が点いた偽物の翻訳本を見てシャルに呟いた。
「けれど我らにはシャルロットがいる。聖典を崇拝する奴らの仕掛けも効かない」
「私にいつもこの作業をする必要があるのは面倒だし、これで六回連続偽物を引いたわ」
シャルは手にモテいる偽物の翻訳本を床に捨てた。火の点いた偽物の翻訳本はどんどん全体に火が広がり本全体を燃やし尽くした。
「それで次はどこへ探しに行くの?」
シャルはシグマに次の目的地を尋ねた。
「次は今回勇者と出くわした村とは逆の方角の村だ。しかも魔王様の魔力の反応もある」
「……」
シグマが魔王の魔力という言葉を聞いた直後シャルは口を閉じてしまった。
今回相手した勇者は二人。今存在する勇者は全員で四人。勇者達は魔王の魔力を所持して悪魔達の襲撃の対抗策を取っている。カイの意識を共有して伝えた事が本当であれば次に出会うであろう勇者は——
「気を落とすな。我らの目的は魔王様の復活。ノクト様を殺す事ではない。であったとしてもそんな心持では返り討ちにされる可能性も出る。しっかり心を落ち着かせるのだ」
シグマの言葉を聞いてシャルは本来の目的を思い出した。
シグマの言う通りノクトを殺すのが目的ではない。魔王を復活させるのが目的だ。
「ごめんシグマ。やっぱり敵陣営にノクトがいるって知っちゃうと考えちゃうんだ」
「それは我も同じだ。だが敵陣営にいるとしても目的の中に含まれていない事まで考えては精神が持たないぞ」
「忠告ありがとう。おかげで気持ちを切り替えられるよ」
シャルの表情と言葉にシグマは一抹の不安を抱いた。
シャルはそう言っているが表情には不安を無理に押し殺そうとしているのが一目で分かる。
それだけ敵側に大事な人であるノクトがいる事に不安を感じているのだろう。
「決行は三日後だ。それまでしっかり休んで気持ちを切り替えておくんだ」
「分かったそれじゃあ私も自分の部屋で休むわ」
シャルはシグマの言う通り体と心を休ませるために自分の部屋に戻っていった。
お疲れ様です。
二話連続投稿の二話目です。
明日も投稿しますので良ければ読んで下さい。
最後に私事ですが新作を明日から投稿しますので良ければそちらも読んで下さい。
それでは良いお年を。