第三話
エドワードから三人に大事な話をして二日が過ぎた。
ノクトは地下魔法薬学実験室にいた。
エドワードが受けた魔法薬調合の依頼の下準備をしているノクトはガラスのビーカーに聖水を注ぎ金網を置いた三脚台の上に置く。
アルコールランプに火を灯し三脚台の下に動かす。
ビーカーの中の聖水がアルコールランプの火で徐々に加熱されていく。ビーカーの中の聖水に温度計を差し温度を測る。
「50℃か。もう少しだな」
ノクトは実験台に準備していたマンドラゴラの側根を薬包紙に包む。
薬包紙に包んだマンドラゴラの側根を三脚台の横に置き聖水が60℃になるのを待つ。
聖水に差した温度計が60℃を示したことを確認したノクトは包んでいた薬包紙を開き中身のマンドラゴラの側根を加熱した聖水の中に投入した。
投入してすぐアルコールランプを三脚台から離し、アルコールランプに蓋をして火を消す。
ビーカーの中の聖水にマンドラゴラの側根が投入されるとマンドラゴラの側根から徐々に橙色の成分が聖水に浸出していく。
橙色の成分が浸出されたのを確認したノクトはビーカーばさみで三脚台から実験台の上に一旦置きビーカーにガラス蓋をして60℃に保温した恒温槽に移してビーカーの中身を保温する。
マンドラゴラの側根から成分が浸出していることを確認していると地下魔法薬学実験室の出入り口の扉が開く音がした。
音を出した主はエドワードだ。
「回復薬の調合一人でやらせてすまなかったな」
エドワードは申し訳なさそうにノクトに声をかけた。
「別にいいよ」
ノクトは素気なく返事をする。
「どこまで工程進んだ?」
「マンドラゴラの側根を60℃の恒温槽で成分を浸出させてる」
「そうか。ありがとう」
ノクトが進めた回復薬の調合工程を端的に説明する。
いつもなら調合の工程を一人でやらせようものならノクトはエドワードに文句を言い続けるが、今日に限ってそれがない。
ノクトは二日前のエドワードからの話以降、エドワードに必要最低限の会話しかしなかった。
「後は俺が一人で調合するからノクトは好きにしていいぞ」
「分かった」
ノクトは簡潔にエドワードに返事をすると地下魔法薬学実験室を出た。
家に戻ろうとするノクトは魔法薬学実験室の階段を上り地上に出る。
エドワードに頼まれて朝から実験室に入り準備とエドワードが来るまでの間調合を進めていて、ノクトが地上に出ると太陽が空の真上で地上を照らしている。
昼頃であるのは一目でわかったノクトは家に戻って昼食に呼ばれる前に戻ることにした。
家に戻ると家の中には誰もいなかった。
いつもならアンリとシャルが昼食の準備をしていて家の中に入るはずなのだが。
ノクトはテーブルのの席に座り二人の帰りを待つ。
小一時間が経ちノクトは胸中に不安を抱き始める。
アンリとシャルはいつもなら遅くても今の時間には戻っていた。
なのに今日はアンリもシャルも家にいない。
ノクトは内心そわそわしながら二人の帰りを待つ。しかし一向に二人は帰ってこない。
突然玄関の扉が勢いよく開かれる音がする。
音がしたところに視線を向けるノクト。
ノクトの視界には汗まみれの双子の少女の一人が息を切らして玄関の扉を開けていた。
「シャル⁉」
双子の少女の一人シャルはいつもとは違うすごい剣幕で汗を拭うことを忘れてノクトに走って近づきの両腕を掴んだ。
「どうしたんだよシャル⁉」
「どうしよう!アンリが!アンリが!」
いつも大人しいシャルが見る影もなく声を荒げ動揺している。
「シャル。いいから一旦落ち着け。ゆっくり深呼吸をするんだ」
ノクトはシャルを落ち着くよう宥める。
シャルは必死に呼吸を整えるためゆっくり深呼吸をする。
息が荒かったシャルは徐々に呼吸が整い始める。
シャルの表情も先程より落ち着きを取り戻し始めている。そしてノクトは再度質問した。
「どうしたんだシャル?」
呼吸が整い動転した脳内がすっきりしたシャルは言葉を発した。
「アンリが攫われたの」
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
土曜日久しぶりに3DSのゲームをしていたら熱中しすぎて夜までやってしまいました。
今回も読んでくださり誠にありがとうございます。
次回も読んでくれると嬉しいです。