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第二十八話

 村に戻ったノクトはその足で村の薬屋へ向かった。

 薬屋の前に着いたノクトは薬屋の扉を開いて店内に入った。


「いらっしゃいませ——って、先生⁉」


 入店したノクトに挨拶したのはホホだった。ホホの後ろには会計をする場所でお茶を啜るコンがいた。


「お~あんさん。いらっしゃい」

「どうも」


 ノクトはコンに軽く会釈をした。


「ホホ。その様子だと寝る時間を削って宿題に精を出したみたいだが宿題の方はどうだ?」


 会釈をした後ノクトはホホを見て尋ねた。ホホの目元には隈ができていて顔色も昨日より微かに青白い。ノクトの言う通り寝不足なのだろう。


「はい。しっかりやってきました」


 そう言うとホホはノクトに紙を渡した。ホホが渡した紙にはペンで文章がが書かれていた。


「紙に答えとその理由を書いてきました」

「そっちの方が分かりやすいから助かる」


 ホホは自作の解答用紙をノクトに渡すとノクトはホホの回答に目を通し始めた。

 ノクトが回答を読んでいる間、ホホは緊張しながらノクトを見ていた。

 ノクトが回答を読んでから数十秒が経つと回答用紙を見ていたノクトがホホと目を合わせた。


「三十点」


 ホホと目を合わせたノクトは一言ホホに告げた。


「え?」

「この解答だと百点満点中三十点が良いところだ」


「それって……」

「これでは赤点だ」


 ノクトの採点を聞いてホホの表情が一気に暗くなった。


「答えは確かにスイセイアオバラの花の蜜を使用した手順書プロトコルの方が効能が高い。それは正解だ。だけどその理由が不十分だ」

「……はい」


 ホホはノクトに返事をする声がノクトが採点する前より小さかった。


「ホホが示したようにどちらの調合工程の一つである花の蜜を加熱して調合に必要な成分以外の気化しやすい物質を蒸発させて純度を高くする。その工程でセイウンアオバラの花の蜜は聖水で希釈せずに加熱すれば一気に熱が伝わってセイウンアオバラの花の蜜にのみ含有する気化しない成分が分解されて後の工程で有効成分を回収する時の阻害因子になって有効成分の収率を下げることは記されている。けどその阻害物質がどの工程でどのように阻害するのか詳しく記されていない」

「………はい」


 ノクトはホホの解答のどこが不十分かホホに口頭で教えるが、ホホはそれを聞いていくにつれどんどん表情が暗くなり返事も消え入りそうだった。


「そこまで記されてないと十分な理由の説明になってない。だから三十点だ」

「…………はい」


 ノクトが赤点を出した理由を一頻り聞いたホホは返事が届くか届かないかぐらいの声しか出なかった。


「けどホホが解答用紙を渡す前まで俺は宿題を終わらせられず答えられないと思ってた」

「え?」


 採点理由を言った後、ノクトが言った言葉にホホは疑問の声が漏れた。


「本当は今のホホだと一日じゃ答えられない宿題を出してホホが答えられずに終わる。そして次の日俺に答えとその根拠を提示できないホホは俺から見放される予定だったんだけどな」

「ほっほっほ。やっぱりそうだったんじゃな」


 ノクトの話した内容にコンは笑いを零してノクトの真意を悟った。


「どういうことですか?」

「あんさんは今日でホホに指南するのをやめる気だったんじゃ」

「えっ、えぇぇーー⁉」


 コンがノクトの真意を代弁するとホホは予想していなかった答えに驚いた。


「ど、どうしてですか⁉」

「俺も用があるんだ。貴重な時間を割くのが面倒だったんだ」


「それが理由でですか?」

「そうだったんだが。俺も予定が空いて時間が余ってしまった。なにより三十点の答えでも出せないと思ってた答えを出したんだ。ホホのやる気だけは感じた」


「それじゃあこれからも先生が教えてくれるんですか?」

「俺がこの村にいる間だけな」


 ノクトが今日までではなくこれからも魔法薬について指南してくれ医師がホホに伝わると、今までの暗くなっていた表情が嘘のように一気に明るい表情に変わった。


「やったー!まだ先生に教えてもらえる!」

「言っておくがあと二、三日したら俺達は村を出る。それまでの間に教えるだけだ」


「はい!これからも教えて下さい。先生!」

「本当に分かってるのか?」


 一気に元気になったホホにノクトは言葉を理解しているのか疑問に思ったが元気のないままのホホより良いだヨウト割り切った。


「まあいい。これからは実際に魔法薬を調合する訓練と宿題として本の内容から問題を出す。俺が村にいる間はそれが日課だと思っておけ」

「分かりました!先生!」


 ノクトの組んだ予定にホホは明るく大きな声で返事した・


「コンさん。調合室をお借りしてもよろしいですか?」

「あんさんが滞在する間は式に使ってよいぞ~」

「ありがとうございます」


 コンに店の調合室を使う許可を取ったノクトは快く許可してくれたコンにお礼を言う。


「それじゃホホ。今回は宿題で出した一級耐幻術薬を調合するんだ」

「分かりました!」


 ホホが明るく返事をするとノクトとホホは店の調合室へ向かった。

お疲れ様です。

二話連続投稿の二話目です。

明日も投稿しますので気が向いたら読んで下さい。

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