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第二十五話

「あ~~~‼」


 机の前で手順書プロトコルと試料事典をにらめっこをしているホホは座っている椅子の背もたれに寄り掛かり大きな声を出した。


 ホホは一度目を通した本の内容はすべて覚えられるので本とにらめっこする必要がないのだが与えられた宿題の難易度が高いせいで必要のない事までしてしまっている。


 ノクト達が店から出て行って四時間以上経つがホホはノクトが与えた宿題を取りかかっているが一向に進んでいなかった。宿題である二冊の手順書に記載されている一級耐幻術薬の調合方法でどちらの手順書が効能の高い一級耐幻術薬を調合できるか答えを出せないでいる。


 二冊の手順書に書かれている一級耐幻術薬の調合の手順はほぼ同じ。使用する試料も一つを覗いてすべて同じ試料。二冊の手順書で使用する試料が唯一違うスイセイアオバラの花の蜜とセイウンアオバラの花の蜜の違いである。


 試料事典で調べるとセイウンアオバラの花の蜜は高価なスイセイアオバラの花の蜜と有効成分が同じで比較的安価に市場に出回るためスイセイアオバラの代用として使用される試料という事だけが記載されている。


 試料事典に記載されている二種類の試料の成分組成も大きな違いもない。

 これだけ手掛かりがないとどちらがより効能の高い一級耐幻術薬か見当がつかない。

 ホホは完全に手詰まりになった。


「ほっほっほ。どうしたホホ。宿題が分からないのか?」


 ホホの後ろから声が聞こえた。

 ホホは寄り掛かってる椅子の背もたれに首を預けて後ろを見た。


「オジジ。何か用?」


 ホホに声をかけたコンはホホの後ろで淹れたばかりのお茶をすすりながら飲んでいた。


「いやぁ、ホホに指南したあんさんが帰ってすぐ手順書を読んでもう四時間半は経っているのに一向に机から離れないで本とにらめっこしてるから行き詰っているのじゃと思ったまでじゃ」

「余計なお世話だよ」


 コンが宿題に行き詰っているホホに声をかけるもホホは一蹴した。


「それにしてもあのあんんさんもわしゃと同じくらい、一日の時間制限を与えているんじゃ。わしゃより厳しい教え方をするもんじゃ」


 コンはお茶を飲み干すと長い白髭を触りながらノクトが宿題で渡した三冊の本を見た。


「そうだ!あんんで大事なところが書かれてない手順書なんかを渡したの!おかげで今まで失敗続きだったじゃない!」


 ホホはコンが即効性の解毒薬の調合方法が記載されている手順書として渡した穴だらけの本について文句を言う。


「じゃがホホはわしゃが渡した本一冊だけの情報で今日は調合に成功したじゃろ?」

「それは先生が教えてくれたからできたんだよ」

「そのあんさんもホホが覚えた本の情報だけで調合を成功させる事ができる証明したじゃろ?」


 その通りだ。ノクトはホホの覚えた穴だらけの手順書一冊に記載されている情報だけで魔法薬を調合できる事は実際に本の内容を覚えていて実際に調合したホホが一番よく分かっている。


「ホホの悪い癖じゃ。読んだ本を全て覚えられるからと魔法薬を一つ調合するのに視野が狭くなり過ぎじゃ。じゃから一つの魔法薬を調合するのに何度も失敗する。あんさんは一冊の本の情報すべて使って調合を成功させた。そういう事じゃ」


 コンの言葉は今日起きた出来事で実感した。ホホは即効性の解毒薬の調合手順が記載されている部分だけの内容で調合したのが原因で何度も失敗した。しかしノクトはホホが読んで覚えた一冊の本に記載されている内容すべてを使い、注意する点をホホに教えてホホは初めて魔法薬の調合に成功した。


「うん。今日先生に注意されて身に染みた」

「じゃったら、今度はそれを生かすまでじゃ」


「それって——」

「おっと。これ以上喋るとあんさんが宿題を与えた意味がなくなるの~」


 コンは飲み干したお茶を再び淹れて飲み始める。

 ホホはコンが言った言葉を頭の中で反芻する。


 今まで一つの事に視野が狭くなりすぎて注意点を見逃した。しかも同じ本に書かれている注意点だった。

 コンが言っているのはもっと視野を広げて注意点を見逃さないようにしろという事なのだろう。

 そうなると二冊のノクトが宿題で出した二冊の手順書の一級耐幻術薬の部分だけでなく二冊の手順書すべて読破して注意点を探し出す必要がある。


「確かに。これはオジジ以上に厳しい教え方だ……」


 ホホはコンが言っていたノクトがコンより厳しい教え方をしている事が今更理解できた。それと同時に京ホホが魔法薬の調合に成功した後にノクトが宿題を与えた時に言った言葉も頭によぎった。


 “ホホならできると思ったんだが無理か?”


 挑発してホホをやる気にさせるために言ったのか、ホホならできると信じて言ったのか、ノクトの真意はホホには分からない。けれどノクトにその言葉を言ってもらえた時、ホホはノクトに認められた気がして嬉しかった。


 その時の感覚がよみがえったホホはもたれかかっていた椅子の背から離れて前のめりで本んを読み始めた。

お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

今回も読んで頂き誠にありがとうございます。

本日は二話連続投稿しますので良ければ次話も読んで下さい。

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