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第二十三話

 ノクト、ラザフォード、ホホ、コンの四人は店内の魔法薬調合室へ着いた。

 ノクトは魔法薬調合室を歩きながら見渡した。

 エドワードの家の側にあった魔法薬学実験室程ではないが、十分な道具や試料が揃っていた。


「コンさん。俺の方法で教えていいんですね?」

「一度や二度の失敗なら予備があるから大丈夫じゃ」


 ノクトはコンにホホへ自己流の教え方で良いと許可をもらった。


「ホホだったな。まずは即効性の解毒薬に必要な試料を用意してみろ」

「分かりました!」


 ホホはノクトに言われたとおりに即効性の解毒薬に必要な試料を魔法薬調合室の奥にある試料保管庫から取り出す。

 取り出した試料をトレイの上に置いていき必要な試料を出し終えると試料保管庫を閉めて試料を置いたトレイごとノクトの方へ持っていく。


「試料を持ってきました」


 ホホはトレイに置いた試料をノクトに見せた。


「全て必要な試料を用意できている。特にリュウジンキの根をゴジュウマリユリの根を間違えずに用意できている」


 ノクトの言葉にホホは表情が明るくなった。


「次は自分が今まで調合した通りに一度調合してみろ。俺も何が原因で失敗するのか分からないままだと指摘できない。間違っている所は調合した後に指摘する」

「分かりました!」


 ホホはノクトへ返事をすると調合に取り掛かった。

 ホホはトレイに置いた黒く大きな種であるリュウジンノヒトミの種子をトレイから手に取り調合室の机に置かれているすり鉢に入れてすりこぎを用いて砕きながらすりつぶす。すりつぶした試料を茶漉しを用いて黒色の液体だけを濾して別の容器に移した。


 次にトレイから黒褐色の細長い根の形をしているリュウジンキの根を取り出して机の上にあるまな板の上に置いて刃の鋭いナイフで細かく刻んだ。水が入っている小さな鍋に刻んだ試料を入れて鍋の下のコンロに火を点けた。


 コンロに火を点けた後、ホホはトレイに置いてある掌くらいある大きさの白色の葉のコンゴウソウの葉を別のすり鉢に入れてすりこぎですりつぶした。すりつぶした試料を別の容器にそのまま移した。


 最後にトレイに残った青々と空いた緑色の太く着のボウキャクソウの茎を手に取りコンロの火で沸いてる鍋の中に入れた。ボウキャクソウの茎を鍋に入れて五分経過するとホホはコンロの火を消して鍋の煮汁を濾すためにざるの上に木綿の布を被せた。木綿の布を被せたざるを煮汁を移す容器の上に置いて鍋の中身を流し込む。流し込まれた煮汁は木綿の布によって綺麗に濾されて黒褐色の液体だけが容器に移された。


 鍋から取り出した煮汁から粗熱が取れ後煮汁を計量カップで200ccを空の容器に移す。計量した煮汁を移した容器にリュウジンノヒトミの種子をすりつぶし濾した液体を全量加えると黒褐色の液体が薄紫色に変色する。


 薄紫色に変色した液体にすりつぶしたコンゴウソウを全量加えて攪拌棒で満遍なくかき混ぜた。かき混ぜた試料は青色に変色した。素色に変色した試料を小さな木綿の布を被せた茶漉しを用いて濾した後の液体を別の容器に移す。濾した試料は濃青色の透明な液体だった。


「できました!」


 ホホは自分の知っている作り方で即効性の解毒薬を調合した。


「どうですか⁉失敗した時と同じ手順で造りましたがどこが間違っているか教えて下さい!」


 ホホはノクトへどこが間違っているか尋ねた。

 ホホに尋ねられたノクトは目を大きく開けて唖然としていた。


「……コンさんはこの手順を見たんですか?」

「わしゃ手順書プロトコルが書かれた本を渡しただけじゃ」

「道理で失敗が続くわけだ……」


 コンの答えを聞いてノクトは大きくため息を吐いた。


「ホホ。どの本を読んで手順書を理解した?」

「この本です」


ホホはノクトに読んで手順を覚えた本を見せた。ノクトはホホから本を受け取ってパラpらと本の中をざっと読んだ。


「ホホ。読んだのはこの手順書だけか?」

「はい」

「……はぁー」


 ノクトは大きくため息を吐いた。


「コンさん。本当にホホに魔法薬の調合の仕方を教える気があるんですか?」

「もちろんじゃ。じゃからこの手順書を選んだんじゃ」


 ノクトは手順書の本んを渡したコンがホホに教える気があるのか直球で尋ねてコンは教える気がある事を伝えた。


「どうしたんですかノクトさん?」

「ホホ。お前魔法薬を調合する時一切この手順書を読みながら調合しなかったな。どうしてだ?」

「それは、その本に書かれている手順は全て頭の中に記憶してるからです」


「全部覚えたのか⁉この本の書かれている事を⁉」

「はい」


 ホホの返事にノクトは疑問を覚えたノクトはホホが天寿書として読んだ本を開いた。


「二百一頁三行目に書かれている内容は?」

「自白薬を調合する時容器の温度と試料の温度との温度差は避ける事」


「百五十二頁九行目に書かれている内容は?」

「マンドラゴラの主根を使用する際は耳を塞ぐ道具を着用して調合を行う事」


「用途別にナイフの材質の使い分けが書かれている頁は?」

「六十二頁です」


 全問正解だった。


「はああぁぁーー」


 全問正解だった故に余計深いため息を吐いた。


「どうかしたんですかノクトさん?」

「コンさんがホホに渡したこの手順書の本は書かれたのがかなり古い上に即効性の解毒薬が記されている部分は大事な調合途中の試料の状態が抜けている問題だらけの手順書だ」

「えぇぇぇーーーー‼」


 ホホは大声で驚いた。大事な所が書き洩らされているのだから無理もない。


「それでもホホはこの本の中を全て暗記してるんだろな?」

「はい!一言一句覚えてます!」


「だったらなんで正しい手順で調合できない?」

「え?でもその手順書には書き漏れがあるんじゃ」


「即効性の解毒薬以外の所で試料を調合に使うために加工する時の注意点は書かれているはずだ」

「あっ」


 ノクトの言葉で本に書かれている試料の加工の仕方についての注意点を思い返した。


「なんで一番最初にリュウジンノヒトミの種子をすりつぶした?リュウジンノヒトミの種子はすりつぶして種子の中が空気に触れるとどんどん成分が気化する。リュウジンノヒトミの種子をすりつぶすのはすりつぶしたコンゴウソウの葉を最後に混ぜる直前まで手を付けないのが普通だ」

「……はい」


「しすてリュウジンキの根は刻む前に根の周りを削いで根の皮を除去してから刻む。煮込んでいた時の煮汁の色は本来橙色の液体でないといけない。それにボウキャクソウは刻んだリュウジンキの根を水から煮込む前に鍋に張った水の中で三十分近く放置しないと刻んだリュウジンキの根から有効成分以外の有効成分を阻害する成分まで浸出してしまう」

「……はい」


「極め付けはすりつぶしたコンゴウソウの葉を移した容器の材質だ。ホホがすりつぶしたコンゴウソウの葉を移した容器は金属製だ。コンゴウソウの葉を金属製の容器で保管すると即効性の解毒薬の有効成分以外を沈殿させる成分が金属の材質によって分解されて有効成分以外を十分に沈殿できない」

「……はい」


 ノクトが指摘した事は即効性の解毒薬に記述されていなかったが他の魔法薬を調合する際に注意事項として書かれていた事だ。ホホはノクトに注意されるたびに本に書かれていた注意点を思い返して悔しくなった。


 ノクトはホホへ一方的に指摘し終わるとホホは両手で服の端を掴み目を赤く腫らして瞳に涙を蓄えていつ泣いてもおかしくない状態だった事に今更気付いた。


「い、言い過ぎた。すま——」

「ご指摘ありがとうございます‼」


 ノクトはいつ泣き出すか分からなかったホホにしどろもどろになっていると、ホホは手で目をこすって溜まっていた涙を拭いてノクトへお礼を言った。


「もう一度調合しますのでおかしい点があれば教えて下さい‼」

「わ、分かった」


 ホホは目を腫らしたまま再び調合を始めた。

 先に鍋に水を溜めた中にボウキャクソウの茎を入れた。付けている間にリュウジンキの根の皮をナイフで削いで皮の除去をした。ホホが除去をしたリュウジンキを刻もうとした時ノクトが声を発した。


「ホホ。リュウジンノヒトミの種子ほどじゃないがリュウジンキの根も空気に多く触れると有効成分が気化する。良質な薬を調合したいなら先にコンゴウソウの葉を先にすりつぶせ」

「わかりました!」


 ノクトの指摘によりホホは革を削いだリュウジンキの根を刻むのを後にしてコンゴウソウの葉をすり鉢とすりこぎですりつぶした。しろつぶした試料はガラス製の容器に移した。

 次に皮を削いだリュウジンキの根をナイフで刻んで三十分以上ボウキャクソウの茎を浸けた鍋へ調乳して鍋の下のコンロに火を点けた。


 鍋の中が煮立ち始め煮汁が橙色に変色していた。ざるに木綿の布を被せて煮込んでいた煮汁を濾して別の容器に移した。

 橙色の煮汁の粗熱をつっている間にリュウジンノヒトミの種子を別のすり鉢ですりこぎを使いながらすりつぶした。すりつぶした試料を茶漉しで濾して濾した液体を別の容器に移した。

あら夏の取れた橙色の煮汁を200㏄計量して別の容器に移した。計量して別の容器に移した煮汁についさっき濾した試料を全量流し込んだ。すりつぶして濾したリュウジンノヒトミの種子の液体を加えると橙色から黄色へ変色した。


「すりつぶしたコンゴウソウの葉を黄色の液体と混ぜる時ゆっくり泡立たないように混ぜるんだ。その方が沈殿物がより大きくなって不純物が少なくなる」

「分かりました!」


 ノクトの助言でホホは黄色の液体にすりつぶしたコンゴウソウの葉を加えて攪拌棒でゆっくり混ぜ合わせる。混ぜ合わせていると調合を失敗した時より白く濁ったものができてくる。

 混ぜ合わせた試料を小さな木綿の布を被せた茶漉しで濾して別の容器に移すと、濾した液体が失敗した時の濃青色ではなく薄い黄色の液体になった。


「調合成功だ。ホホ」

「……」


 ホホは無言のまま調合に成功した魔法薬を見た。

 魔法薬を見ていたホホの潤んだ目から徐々に大粒の涙が零れ落ちてきた。


「……調合できた。……あたしが調合できた……。うっ、うっ……うわあああああああぁぁぁぁん~~‼」


 涙を零すホホはついに大声で叫びながら泣いた。


「やっどっ……。やっど調合でぎだ……!」

「魔法薬一つ調合できたからってそんなに泣くなよ」


 涙でぐじゅぐじゅになるホホにノクトは落ち着くように声をかけた。するとホホはノクトの胸元に飛び込んだ。


「あっありがどっ……ございっます……」


 ノクトへ感謝を伝えるホホはノクトの胸元にしがみついたままノクトの胸元で号泣し続ける。

 ノクトはホホが自分の胸元で号泣し続ける状態に戸惑っていると魔法薬調合室にいるラザフォードとコンがとてつもなくにやけていた。


 ノクトはにやけている二人を無言で睨みつけた後ため息を吐いてホホが落ち着くのを待った。

お疲れ様です。

三話連続投稿の三話目になります。

明日も投稿していきますので気が向いたら読んで下さい。

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