第二話
すでにテーブルの椅子に座っているアンリとシャルのところにエドワードとノクトは向かう。
エドワードはシャルの隣アンリの斜向かいの椅子に座った。ノクトは残りのエドワードの正面の椅子に座る。
「みんな集めて大事な話って何なの養父さん?」
アンリがエドワードに質問する。
「単刀直入に言う。一週間後、お前達三人にはこの家から出て行ってもらう」
衝撃の一言に声が出ない三人。
「そ、それはどういうことですか?」
先に声を絞り出して発したのはシャルだった。
三人とも動揺していたが先に落ち着きを取り戻したシャルはエドワードの言葉の真意を尋ねる。
「そのままの意味だ。俺は一週間後王宮に招集される」
王宮。
王都の中心に建立する国の中枢部で、騎士、元老院などさまざまな国の上層部が集う場である。
「また何でジジイが招集されるんだよ?」
「国の機密で他言無用だから話せない」
ノクトの質問を機密という盾でエドワードから聞くことができない。
「でも招集されてもまた家に戻れば問題ないじゃない。なんで私達が家を出ないといけないの?」
アンリのもっともな質問をエドワードに投げかける。
「それは俺が家に戻ることが前提だ。俺が王宮に招集されれば一生ここには戻らない。お前達の面倒は見られない」
アンリの質問に真っ当な理由を告げる。稼ぎ頭のエドワードがいなくなれば三人は生活はできない。
「俺達が稼げば俺達がこの家から出る必要なんてないだろ!」
ノクトは半ば怒りが混じった声でエドワードに反論する。
「俺が王宮に招集された後この家は更地にする。これは元老院からの命令だ。覆すことはできない。だからお前達がここで暮らすこと自体無理だ」
突然の出来事の連続で三人は状況を把握しきれていない。
「お前達の新しい住居と仕事場は俺のツテで住み込みで働かせてくれる働き先を見つけた。お前達はそこでお金を貯めて、そのあとはお前達の自由にしろ」
「おいクソジジイ!なんでそんな大切な事、もっと早く伝えないんだよ!」
ノクトの言葉はごもっとも。こんな大切な事を伝えなかったのかアンリとシャルも同意見だ。
「これも機密事項だ。これ以上は話せない」
エドワードは淡々と状況を説明していく。その言葉にはいつもの優しい雰囲気はなく感情が感じ取れない、冷徹ささえ感じる声音だった。
「機密事項、機密事項って。ジジイはそんなに国の命令が大事なのか⁉」
「ああそうだ。国の命令は最優先事項だ」
ノクトの怒声交じりの質問に淡々と答える。それは有無も言わさない冷酷ささえ感じる。
「何で俺達に対して国はそんなことをするんだよ⁉」
ノクトは思ったことをそのまま口にした。
いくら何でも急すぎるし、家を更地にするなんて酷過ぎる。
自分達が国に何かしたのか。そんなことを思うノクト。
「お前達は知らないままでいい。世の中には知らないままの方が幸せなこともある」
エドワードは怒りで頭に血が上っているノクトと突然のことが続き呆然としているアンリとシャルに告げた。
それはエドワードのせめてもの慈悲であろう。
「大事な話はこれで終わりだ」
エドワードはそう言うと席を立ち自分の書斎に戻る。
ノクトはエドワードにもっと詳しく事情を聞こうと考えるも喉元から言葉が出なかった。
今まで見せなかったエドワードの冷徹な雰囲気に怯えているのか。それとも真実を聞きたくなかったのか。それともどちらもなのか。
ノクト、アンリ、シャルはテーブルに座ったまましばらく沈黙の空気が流れていった。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
本日久しぶりに煮物を作ったのですがここしばらく冷え込んできて煮物がより美味しく感じます。
今回も読んでくださり誠にありがとうございます。