第二十二話
「道具も買えたし薬屋で薬を調達するか」
「そうしましょう」
旅に必要な道具を買い揃えたノクトとラザフォードは道具と一緒に買った鞄に締まって次に買う薬を買いに薬屋を探す。
探していた薬屋は意外と近くにありすぐ見つかった。
薬屋の店舗に入ると薬剤独特のにおいがほのかに漂う。店内は綺麗に商品である薬が並んでいて丸薬、液体、粉末、軟膏など薬の形状ごとに商品が細かく区画されている。
「いらっしゃいませ!」
入店したノクト達に入店の挨拶をする活発な声が聞こえた。
声の聞こえる方を向くと視界に一人の少女が立っていた。
都市はノクトより二、三歳ほど幼いくらいの少女で肩まで伸ばしている水色の髪にはつらつとした明るい表情、全体的に肉付きの細い体つきの少女には普通の人間にはない物が付いていた。腰辺りには髪の色と同じ水色の毛に包まれた尻尾と頭部に猫のような大きく尖った耳がついている。
愛人族の少女だった。
亜人族の少女がノクト達の入店を出迎えた。
「初めてのお客様ですね。どのようなお薬をご所望でしょうか?」
亜人族の少女がラザフォードにどのよう殿薬が星野か尋ねた。
「あぁ、旅に必要な薬が一通りほしいな」
「分かりました。こちらの方でお薬を選んでもよろしいでしょうか?」
「それは大丈夫だ。薬は自分達が決めるからどれがどの薬か教えてくれ」
「かしこまりました」
ラザフォードと亜人の少女が会話をしている間、ノクトは店内に並ぶ薬を見ていた。
「この店は魔法薬も売ってるんだな?」
店内に並んでいる薬とは別に魔法薬も並んでいる事に気付いたノクトは亜人の少女に尋ねた。
「はい。当店では薬の他に魔法薬も調合、販売しております」
「だったらなんで魔法薬の中に即効性の解毒薬だけがないんだ?」
「なんで分かったんですか⁉」
亜人の少女はノクトの指摘に驚いた。
それもそうだ。素人が魔法薬の並んでいる商品群を見てそこに即効性の解毒薬だけがない事を当てるのは不可能だからだ。
特に即効性の解毒薬は魔法薬に携わる人でも色も透明度も近い液体の二級回復薬と間違う人がいるくらい傍目では酷似している。
「よくわかったなノクト」
「昔に魔法薬学を教わった事があるだけです」
ラザフォードがノクトに感心するとノクトはぼそっと魔法薬学を習っていたことを呟いた。
「お客様すごいですね!店内には見た目が似ている二級回復薬が置かれているのにざっと見ただけで即効性の解毒薬だけない事を当てるなんて、只者ではありませんね⁉」
「そんなことはどうでもいいんだ。それより魔法薬の中で万人に需要が高い即効性の解毒薬がないのはなんでだ?」
「それは……」
ノクトが亜人の少女に質問すると亜人の少女の表情が曇り黙ってしまった。
「ほっほっほ。まさか初来点のお客様に一本取られてしまうとは。ホホ、お前ももっと勉強する必要があるのー」
店内からしわがれた老人の声が響いた。
声が聞こえる方を見ると店内の奥に長い白髭を蓄えた老齢の男性が椅子に座っていた。
「オジジ⁉」
亜人の少女が老齢の男性に向けて声を発した。
「あなたは?」
「これは失礼。わしゃこの薬屋の店主のコンと申すもんです」
ノクトが老齢の男性——コンに質問するとコンはこの薬屋の店主であることを説明した。
「ここにある魔法薬以外の薬はわしゃの教え子のホホに調合させたものでさ。それで初めて店で売る魔法薬を調合させているんですが、一度も店で売れるようなものができませんで」
「それが即効背の解毒薬ということですか」
コンは亜人の少女——ホホを指差して事情を説明した。
ノクトは紺の説明で納得がいった。
ここにある薬の約半分はホホが調合して店主であるコンが商品として認めたものを店頭に置いている。しかしホホが初めて調合した魔法薬である即効性の解毒薬はコンが商品として店頭における代物でないから店頭には即効性の解毒薬のみが置かれていないというわけだ。
「だが即効性の解毒薬は旅には必要だぞ」
ラザフォードは店内に置かれていない即効性の解毒薬を欲しがっている。それもそのはずだ。即効性の解毒薬は動物由来の猛毒や昆虫由来の猛毒に対して即効で解毒する効果のある。魔法薬で特に野宿をする旅人にとって毒を持つ生き物に対する需要の高い魔法薬だからだ。
ノクトは再び店内を見回した。
「店内の薬や魔法薬を見る限り即効性の解毒薬に必要な試料は揃ってるみたいですね」
「やはり、あんさん只者じゃないの。店にある薬を見ただけで試料の種類を把握して即効性の解毒薬に必要な試料が全て扱っている事を当ててしまうとは」
「そんな大層な人間ではありません」
「良ければなんじゃが、失敗続きのホホにあんさんが手解きをしてくれないじゃろか?
」
「え?」
「もちろんお礼はするぞ。ホホに手解きをしてくれたら必要な薬を値引きしよう」
「お⁉いいじゃねえか。安くなるのはノクトにとってもいいことじゃねえか」
「いや、そうですが」
コンの提案にラ座f-度は乗り気だがノクトはラザフォードと比べ乗り気ではなかった。
「俺、人に教えたことがないんでうまく教えられるかどうか」
「お願いします‼」
ノクトが渋っているとノクトの目の前でホホが頭を下げた。
「お願いします。あたしに魔法薬の作り方を教えて下さい‼」
頭を下げたホホは本気でノクトに頼み込んだ。
「……分かりました。ただ即効性の解毒薬の作り方を教えるだけでいいですねコンさん?」
「ほっほっほ。交渉成立じゃ」
ホホに根負けしたノクトは渋々コンの頼みを了承した。
「ありがとうございます‼」
ホホは再び頭を深く下げてノクトにお礼を言う。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
三話連続投稿の二話目です。
良ければ次話も読んで下さい。