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第二十一話

 村へ到着したノクトとラザフォードは魔王の魔力を封印している魔石の所持を交代した後、腹ごしらえをしようと食事処を探した。


 通りすがる村人に尋ねて村に唯一ある食事処を教えてもらった。教えてもらった食事処へ向かい店の中に入ると、人が来客する時間帯を過ぎているからか客がまばらにいるくらいだった。


 ノクトとラザフォードは開いているテーブルに座った。ラザフォードの獣人由来の巨大な体躯がテーブルの傍にある椅子に座るとテーブルの傍にある椅子に座るノクトと比べて二、三倍は高くなって店の中でとても目立つ。幸い店内はシークを過ぎて人気が少ないのでラザフォード達を見る人自体がかなり少なかった。


 テーブルの上に置かれているメニュー表をそれぞれ手に取って食べたいメニューを探す。ノクト以外の勇者には王宮からこの任務で白金貨十枚が支給されている。一方のノクトは王宮から銀貨二十枚しか支給されていない。


 ちなみに一番相場で価値の高い通貨は白金貨でその次から金貨、銀貨、銅貨、小銅貨である。価値は白金貨一枚で金貨二十枚分、金貨一枚で銀貨十枚分、銀貨一枚で銅貨十枚分、銅貨一枚で小銅貨五枚分の価値がある。


 つまりノクトは他の勇者より百分の一の金額しか支給されていない。ノクトは王宮に抗議しても良かったが抗議したところで何か変わるわけでもない。それに銀貨二十枚でも旅をするには十分足りる金額なので王宮に抗議しなかった。


 この食事処のメニューの中で一番高い料理でも銅貨五枚が上限である。


「注文決まりましたかラザフォードさん?」

「あぁ決まった。店員を呼ぶか」

「そうしますか。すみません!」


 ノクトはホールスタッフに声をかけた。ホールスタッフはノクトの声掛けを聞いてノクトとラザフォードのテーブルに近づいてくる。


「はい。ご注文お決まりでしょうか?」

「A定食をお願いします」


 A定食はメニューに書かれている定食の中で一番安い料理だ。値段は銅貨一枚。


「俺は三種の肉と五種の野菜の盛り合わせ定食を」


 ラザフォードは銅貨五枚の料理、つまりこの店で一番高い料理を注文した。


「かしこまりました。A定食一つ、三種の肉と五種の野菜の盛り合わせ定食一つ承わりました」


 ホールスタッフは調理場に注文を伝えるためノクト達のテーブルを離れた。


「ノクトももう少し高い料理を注文しても良かったんじゃないか?」

「俺はラザフォードさんより百分の一の支給金しか受け取ってないんです。いくらそれで十分とはいえ無駄遣いすればすぐなくなる金額です。ラザフォードさんも気を付けた方がいいですよ」


「確かにこの店で一番高い料理を頼んだがそれでも銅貨五枚だ。十分余裕があるから大丈夫だ」

「それならいいです。今回は言った店が良心的な値段の店だから良かったですが他の店でも高いモノを頼めば支給金もどんどん減っていくのは忘れない方がいいと思いますよ」

「お前は俺のオカンか。俺もお金の使い方くらいわかってるわ」


 ラザフォードに倹約の心得を伝えるノクト。そんな会話を続けていると、先程のホールスタッフが両手に料理が乗っている皿を持ってノクト達のテーブルに近づく。


「お待たせいたしました。A定食と三種の肉と五種の野菜の盛り合わせ定食です」


 ホールスタッフがテーブルに置いた料理の一つであるノクトが注文した料理はライス、焼いた牛の干し肉、葉物野菜のサラダ、根菜のスープが付いた定食だった。

一方ラザフォードが注文した料理は大盛りのライスに焼いた牛、豚、羊の肉に三種の異なる葉物野菜に二種の香味野菜が生で豪快に盛り合されている。


 見るからにラザフォードの方が美味しそうに見えるが料理の総量を比べるとノクトの料理の約二倍。ノクトはそれを見て安い定食を頼んで良かったと心の中で思った。


「飯も来た事だし冷めないうちに食うか」

「そうですね」


 ノクトとラザフォードはテーブルに置かれた木製のスプーンとフォークを使い料理を食べていく。


 ノクトが口にしたライスはほのかにまろやかな塩味があり、ライス本来の甘味を引き立てていた。次に口に運んだサラダも葉物野菜の青臭さが少なくシャキシャキとした触感にフレッシュな水気が口に迸り、サラダの上にかけられているドレッシングもさっぱりとした塩味と酸味でサラダ全体が引き締まった印象を受ける。焼いた牛の干し肉も肉を干す前に筋を完全に落としてある上に保存食として肉が完全に乾燥させるのではなくあえて半分水分が残る程度まで乾燥させて焼いたおかげで程よく噛み切れる食感と凝縮された肉の旨味が口に広がる。


 ノクトは安い定食なのにとてもおいしい料理に驚いた。まりに上手い料理に無言で食べ進めてしまう。

 定食の中の料理一つ一つに丁寧な仕事をされているのが口に入れるだけでよく分かった。これで銅貨一枚はとても安い買い物だ。ノクトは定食を食べながら得した気持ちになった。


 目の前にいるラザフォードも食べている料理が美味であるのか料理を口に運び続けた。

 目の前でラザフォードが巨大な体躯で体躯と比べて小さなスプーンやフォークを駆使して無言で料理を一心不乱に食べるさまはノクトにとって初めて見るシュールながら面白い光景だった。


「それで、飯食い終わったら旅の道具や薬を買いに行くか?」


 食事中ラザフォードはノクトに旅で用意する物を揃えるか提案した。


「そうですね。この店もそうですがこの村の物価は王都より格段に安い上、質も悪くありません。食べ終わったら買いに行きましょう」


 ノクトも村に入ってから村の露店で売られていた値段や質を見てこの店で買う方が良いと判断してラザフォードの意見に賛成する。


 そして二人はこれから買いに行くものを話しながら食事を口に運んだ。

 食事を食べ終え舌鼓を打った二人は食事代を払い店を出た。

お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

今回は三話連続投稿をしますので良ければ次話も読んで下さい。

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