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第十七話

 王宮内集会の間では先日の悪魔達により魔王の魔力同時多発強奪を成功された事で緊急会議が開かれた。


 もちろん玉座にいるレイモンド王も玉座の隣に立つサイグリューも険しい顔で眼下で跪いている勇者、上級騎士、王宮魔術師、王宮神聖術師を見ている。


「どういう事だ⁉十七ヵ所あった魔王の魔力を保管していた祠から大半が悪魔によって奪われる始末‼こちらが無事強奪を阻止できたのは二個のみとは貴様達はこの国を守る気があるのか‼」


 サイグリューはものすごい剣幕で眼下にぢざまずく者達へ怒鳴りつける。


 これに関してはサイグリューが企てた作戦より、悪魔達の企てた作戦の方が遥かに上手だった。それは今レイモンド王とサイグリューの目の前で跪いている全員が思っている事だ。しかし上級騎士や王宮魔術師、王宮神聖術師がサイグリューに心の中で思っている事を言えば侮辱罪で即座に処刑だ。その恐怖で誰も言い出せない。


 反論が許されない法律をつくったこの国の元老院の人間や聖母教皇、国王には改めて虫唾が奔るノクトは先陣を切ってサイグリューに物申そうと口を開きかけた瞬間、隣から声が発せられた。


「聖母教皇様。お言葉ですが、今は過去の失敗を話し合うより、まじかに迫っている悪魔達が襲撃を仕掛ける残りの魔王の魔力について話し合う方が先決だと思います」


 サイグリューに物申したのはシルフィーだった。

 シルフィーは今回の失敗に帰した原因である作戦の杜撰さには触れず次の脅威に話を変えようとした。


 サイグリューは眼下に跪く人間から話を変えようとされて自分勝手な抗議をしようとした矢先、先に口を開いたのはレイモンド王だった。


「そうであるぞ、聖母教皇。勇者シルフィーの言う通り、いつ悪魔達がこちらへ襲撃してくるか分からぬのだ。次の策を練る方が先であろう」


 シルフィーの言葉に賛同するレイモンド王に眼下で跪く全員が安堵した。それに反してサイグリューはぶつけどころのない鬱憤を溜め込んだ。


「それで、勇者達には何か案があるのか?」


 レイモンド王は今回の作戦を勇者達に提案した。幸か不幸か時々サイグリューではなく作戦を企てる人間をその場の雰囲気で自分勝手に決めるレイモンド王に今回は助けられた。


「私に一つ案があるのですが聞いていただけますか?」

「言ってみよ。勇者ラザフォード」


 レイモンド王に提案の意志を伝えたのはラザフォードだった。


「現時点でこちら側にある魔王の魔力が封印されている魔石は二個。しかも勇者以外が持ち運ぼうとすれば即座に命を奪うような危険な代物です。聖騎士レイノスでさえ短時間持ち運び悪魔の強奪を阻止しただけでかなり消耗しました——」


「それではどうするのだ?今の勇者が悪魔達から強奪を阻止するために結界を張ったとしても悪魔側にいる人間に突破されるのだぞ」


「——ですので我々勇者が二人一組になって魔王の魔力を預かり各地に散らばるのです。その方が魔王の魔力を発見される可能性は減ります。もし悪魔達が襲撃してきても我々勇者が相手では悪魔達も下手に襲撃してこないはずです」


 ラザフォードの提案を聞いたレイモンド王は首を縦に振って賛同していた。隣にいるサイグリューもラザフォードの提案に何も言い返すところのない最善の策に沈黙してしまった。


「ですので我々勇者が魔王の魔力が封印されている魔石を預かってもよろしいでしょうか国王様?」

「よかろう。では勇者達は魔王の魔力を所持次第勇者ラザフォードの案通り動くのだ」

「承知いたしました」


 こうして今回はサイグリューによる策ではなく勇者側の策が採用された。

 緊急会議が閉会して少し時間が経ち勇者四人は魔王の魔力を一時的に保管している宝物庫へ向かう。


 王宮の地下にある宝物庫へ向かう道中では勇者四人が誰と二人一組になるのか話し合っていた。

 この話し合いでノクトとファルコが再び口論を始めてしまうと思っていたシルフィーの予想とは裏腹にノクトもファルコも何か上の空で口論をしなかった。


 ファルコは悪魔側の人間の女性に一方的にやられた怪我は王宮神聖術師によって完治したものの、勇者である自尊心を壊された事で上の空なのは予想できるがノクトは何が原因で上の空になっているのは分からなかった。


「お前ら少しは俺の作戦をまともに聞く気あるのか?」


 口を開いてノクトとファルコに注意したラザフォードは呆れた様子だった。

 ラザフォードの言葉にノクトとファルコは上の空だった思考をラザフォードの言葉に向けた。


「俺と勇者ノクト、勇者シルフィーと勇者ファルコで一組になるので異論はないな?」


 ラザフォードの提案に勇者三人は頷いた。

 ラザフォードは勇者達の実力や特徴をしっかり理解した上で組を決めている事を三人は十分に理解している。


 勇者として日が浅いが魔術と聖剣術を同時使用できるノクトに勇者として歴が長いラザフォードで一組、防御に特化している聖剣術のシルフィーと攻撃に特化している聖剣術のファルコで一組。

 現状最善の二組である。


 組を決め終わる頃には王宮の宝物庫の巨大な鉄扉の前に着いていた。ラザフォードは宝物庫の鍵を鍵穴に差し込み鍵を捻った。開場する音がすると巨大な鉄扉に魔法陣が浮かんだ。正規の方法で開錠しないと目の前の鉄扉が周りの壁と一体化する仕掛けが施されている。魔法陣が浮かぶのは正規の方法で開錠された証である。


 開錠した鉄扉は独りでに開き宝物庫の中が見える。

 宝物庫の中へ足を踏み入れると宝物庫の中のランプに火が灯り室内が明るくなる。


 宝物庫が明るくなり保管されている者がはっきり認識できるようになる。

 無数の宝石を保管している金装飾された宝石箱や王家に減少される国宝級の魔法具、世界的に価値のあるオブジェなど様々だ。その中で異質な雰囲気を放っている物が宝物庫の奥にあった。勇者達はそこへ進むと異質な雰囲気を放つ魔石の元へ着いた。


「これが魔王の魔力が封印された魔石か」


 悪魔達との戦いで途中意識を失ったファルコは初めて魔王の魔力が封印された魔石を見た。


「この魔石は勇者のみがなんの拒否反応もなしで持つ事ができるが、所持するだけで力は少しずつ消費するから逐次交代して所持するんだ」


 ラザフォードの言葉に三人は頷くと魔石二個をそれぞれラザフォードとシルフィーが手に取る。

 魔石を所持した勇者四人は踵を返して宝物庫を後にした。

お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

今回も読んで頂き誠にありがとうございます。

明日も燈越していきますので気が向いたら読んで下さい。

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