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第十六話

 王宮魔術師によって王宮へ転移されたノクトの視界に広がるのは負傷した上級騎士達と負傷者を治癒している王宮神聖術師達だった。


 負傷した上級騎士達にそれぞれ王宮神聖術師が二人がかりで神聖術による治癒を行っている。

 上級騎士達の多くの負傷は重傷で治癒するのに時間がかかっている。

 周りをよく見るとシルフィーやラザフォードも王宮神聖術師に神聖術による治癒を受けていた。


「ノクト!無事だったんですね⁉」

「あぁ。なんとか」


 シルフィーもノクトが視界に入り王宮へ戻ってきた事に安堵したように胸を撫で下ろした。


「やっぱり各地の魔王の魔力が保管された祠に悪魔が現れたようだな」

「そのようです。これに関しては私達勇者三人の落ち度です」


「どういうことだよ?」

「それは俺が説明する」


 シルフィーのと会話にラザフォードが割り込み、シルフィーやラザフォード、ファルコが転移された祠での一部始終をノクトに説明した。


「それじゃあ、あのクソ野郎は今どうなってる?」

「今は王宮神聖術師の神聖術によって意識は取り戻しました。けれどまだ神聖術による治療は続いています」

「勇者ファルコにも意識を失ってからの事は説明した。やっぱりあいつも責任を感じてた。しばらくは一人になりたいと言ってる」


 ノクトは悪魔側の少女に敗北して意識を失っていたとはいえ自分の勇者の紋章を利用されて全ての祠に展開していた立体魔法陣を破壊してしまった。その上立体魔法陣が破壊された直後に悪魔達が奪還を成功させて大半が奪われた。


 もしノクトがファルコの立場であったら非常に悔しいが同じ対応をするだろう。


「けれどノクトとレイノス様のおかげで魔王の魔力全てを奪われることは阻止できました」

「師匠も悪魔の奪還を阻止したのか⁉」

「そうです。今は魔王の魔力が封印されている魔石を王宮まで保持していた影響でかなり消耗して王宮神聖術師による治癒を受けています」


 シルフィーの説明でレイノスが悪魔から魔王の魔力を守った事と、それが原因で治療を受けている事を知った。


「師匠はどこで治療を受けてるんだ⁉」

「落ち着け勇者ノクト。聖騎士は集中治療を受けている。面会謝絶だ。それにお前も治療を受けるべきだ」


 ラザフォードの言葉にノクトは気が付いた。

 ノクトは雨曝しの中悪魔との戦闘したので髪や肌、着ている衣服も泥だらけで大怪我ではないが掠り傷と戦闘の疲労が蓄積していた。


 気付くまではカイの最期の言葉が頭に残っていて自分の体の異常に気が回らなかった。

 ラザフォードもノクトの歩く姿勢や動きから疲労が蓄積している事を瞬時に見抜いて更にその疲労を自身が気付いていない事まで見抜いた。


「分かった。王宮神聖術師に治癒を頼んでくる」

「それが一番良い。今は体を休ませろ」


 ラザフォードは優しい口調でノクトへ休む事を促した。

 ノクトは手の空いている王宮神聖術師を探すためシルフィーとらざふぉードのいる場から離れた。

 ノクトはラザフォードの言葉で気付いた疲労で体を動かす事がやっとであるのを知った事でいつもより体をうまく動かせない。


 幸運にも近くに上級騎士の治癒を終えた王宮神聖術師がいたのでノクトは手の空いた王宮神聖術師に治癒を頼んだ。


 王宮神聖術師の神聖術の手腕なのかノクトの元々の自己治癒力の高さなのか、王宮神聖術師の治癒はものの数分で完了してしまった。ノクトを治癒した王宮神聖術師はあまりの治癒の速さに声を出さずに驚愕していた。

 万全の状態になったノクトは再びシルフィーとラザフォードの所へ戻った。


「もう治癒が終わったんですか⁉」


 シルフィーが驚くのも無理はない。自分達と大して変わらない負傷で自分達より後に治癒を始めたのに自分達より速く治癒が完了したのだ。


「シルフィー。聞きたいことがあるんだ」

「何ですか?」

「あのクソ野郎でも歯が立たなかった女ってどんな容姿だったのか詳しく教えてくれ」


 ノクトはラザフォードの悪魔達との戦闘の一部始終を聞いて悪魔側にいた金髪で青い瞳の少女の事が気になった。

 ノクトの考えている事が自身の的外れな考えであってほしいと思っていた。


「私は似顔絵が上手いわけではないので、これでノクトに見せることにします」


 シルフィーはポケットから指輪を取り出した。


「これは?」

「頭の中の記憶を映像化できる魔法具です」


 シルフィーは魔法具の説明をすると魔法具へ魔力を流して意識を集中させた。すると指輪の宝石から光が発せられた。発せられた光の中に一人の少女の姿が映った。

 ノクトは指輪が移した少女の姿に外れてほしかった予想が当たってしまい唇を噛んだ。


 二年が経過して容姿はだいぶ大人らしくなったが金色の髪と青い瞳、二年前まで見慣れた目鼻立ちの面影は残っていた。


 ノクトの心の中では何でこうなったのか分からなかった。しかし指輪から映された人物は間違いなくノクトと二年前まで一緒に過ごしていたシャルその人だった。

お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

今回二話連続投稿しますので良ければ次話も読んで下さい。

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