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第一話

 三週間後——



 裏庭の薪置き場。


 今日もノクトは魔術の訓練をしていた。


 丸太を用意したノクトは風の魔術で生成した風の刃を丸太に射出した。


 風の刃が丸太に当たり、丸太が一瞬で切り刻まて薪に一変する。


 均等に八等分された薪を拾い薪置き場に並べる。


 ノクトは薪の一つを地面に立て距離を取る。


 今まで練習した風の魔術の応用。風の収束、圧縮、流動維持、射出。


 この一連の工程を一度に行う、風の塊で的を倒さず貫通させる訓練を続けて一ヵ月余りが過ぎた。

ノクトは左手を前に広げる。


 薪の周囲に風の収束点が生まれる。風の収束点は全部で四ヵ所。


 風は収束点の周りで風速が増していくも三週間前と違い他の風の収束点に干渉していない。


 収束点で圧縮された風の塊は以前と違い口径が小さく収束点を高速で流動する風の形状も球体で維持されている。


 そして球体で維持された風が薪に向かって射出される。


 射出された風の塊四つは的である薪を貫通して地面を抉る。


 そして貫通した薪は倒れることなく立っていた。


「よっし!」


 風の収束点を掌の前でなく離れた対象の周囲に複数展開することに成功した。


 ノクトは喜びを隠し切れず握りこぶしをつくる。


 風が貫通した薪を薪置き場に並べるためノクトは貫通した薪を拾う。


 以前と違い貫通した穴の口径は小さく綺麗な円を描いている。


 薪置き場に手に持つ薪を置き新しい薪を四本手に取る。


 手に取った薪をそれぞれ地面に無造作に距離を置いて立ててノクトは先程より距離を置く。


 ノクトは左手を前に出し薪四本それぞれの周囲に風の収束点をイメージする。


 薪それぞれの周囲に風の収束点が生まれ風が収束・圧縮されていく。


 先程と違い複数の的に複数の風の収束点を展開しているので難易度は桁外れに上がる。


 しかし風は干渉せず収束点で高速流動し球状に圧縮されていく。


 風の塊は小さく圧縮されて今までより口径が小さくなる。


 そしてノクトは風の塊を薪四本に向かって射出した。


 風の塊は薪四本を貫通し地面を抉る。


 薪を貫通した風の塊はそれぞれ三つ。的となった薪は倒れずに中心を狙撃されていた。


「~~~~~~っ‼」


 ノクトは言葉にならない達成感が全身を駆け巡った。


 三週間前では綺麗に貫通せず倒れたり割れてしまった。しかし今は離れた対象の周囲から魔術を的の中心に当てて貫通させた。


 ノクトは三週間、朝から晩まで複数の的を的の周囲から風の塊を貫通させる練習をしていた。


 失敗した的は粉々に砕け薪として使えなかったので麻袋に詰め燻製が趣味の隣人におすそ分けした。


 最初は隣人も喜んでいたが、一日に受け取る木屑の量が大量であったため毎日木屑を送る度どんどん怪訝な表情が表れてきたことをノクトははっきり覚えている。


 今回の失敗はこれまで以上に難航した。


 当初の目的は複数の的を風の塊を一つずつ当てて的を倒さず貫通させることだったが、エドワードが見せた、的の周囲から風の魔術を発動させ複数の風の粒を的に狙撃して的が蜂の巣になるところをノクトは直接見たことで当初の到達点を忘れ、いくつも段階を超えた難易度のことにのめり込んだ。


 それは目指した目標せなかに一刻も早く追い付きたい、追い越したいと思うノクトの向上心。それと目標のエドワードに一人前の魔術師として認めてもらいたいと思う承認欲求だった。


「今日も練習してるのか?」


 エドワードがノクトの後ろから声をかけてきた。


「ジジイか、そうだよ。予定より時間がかかったがジジイと同じことをやってやったぞ!」


 ノクトは自慢げに胸を張り貫通させた的の薪を指さした。


 エドワードは地面に立った薪を拾い観察する。


「三週間前と違って風の収束・圧縮は合格点と言ったところか。風の塊を複数展開したのにも関わらず互いに干渉せず形状を維持できたみたいだ。的の狙いも中心に当たっているから倒れることなく立っている。逆に三週間でここまで仕上げたお前のことを恐ろしいと思うよ」


 エドワードは真剣な表情で並んでいる四本の薪と周囲の地面を抉っている風の魔術の跡をまじまじと見て尊敬の意が籠った言葉をノクトに言った。


 今までエドワードから言われたことのない称賛の言葉に少しの間思考が止まった。

 そして思考が再び回り出すと、目指している目標の人物から称賛されたことに今までと比べ物にならない達成感と満足感が徐々に溢れ出してくる。


「これなら、これから俺が教えなくてもノクト一人で魔術を極められるだろう」


「えっ」


「だからノクト。これからは教えてもらうんじゃなくて自分で探し、見つけていくんだ」


「ジジイ。それってどういう——」


「これからアンリとシャルを含めて大事な話がある。家に戻って来い」


 ノクトの言葉を遮るようにエドワードは言葉を発した。


「——おい、ジジイ!」


 ノクトの言葉を無視したエドワードは家の扉を開けて家の中に戻っていった。




 ノクトはこれから起きることなど考える由もない。これから起こる壮絶な出来事について。


 お疲れ様です。

 tawashiと申す者です。

 さすがに執筆中暖房を入れようかと考えている私です。

 今回も読んでくださり誠にありがとうございます。

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