第十四話(表裏)
呑み込んでいた光が消えるとファルコの右手に触れていた立体魔法陣は跡形もなく消えていた。
呑み込んでいた光が消えた後ファルコの右手を強引につかんでいた仮面の少女は腕ごとファルコを投げ捨てた。投げ捨てられたファルコは力なく地面に転がった。ファルコを投げ捨てた仮面の少女は目の前にある祠へ近づいた。
シルフィーとラザフォードは一刻も早く祠に近づく仮面の少女を祠から離したいのだが、目の前に衣類悪魔達は臨戦態勢で構えている。シルフィーもラザフォードもすぐには仮面の少女の元へ駆け寄れない。
仮面の少女は祠の目の前まで歩み寄り祠の中へ手を突っ込む。祠へ突っ込んだ部分は穴が開き周りは亀裂が入った。そして仮面の少女の動きが一瞬止まり次に祠に突っ込んだ手を勢いよく引き抜いた。引き抜いた手には研磨された宝石のように加工された魔石が掴まれていた。仮面の少女が掴んでいた魔石にはシルフィーやラザフォードの感じた事のない禍々しい気配を放つ魔力が纏っていた。
仮面の少女が魔石を掴んだ瞬間シルフィーの目の前にいる悪魔は仮面の少女の方に気をられた。その瞬間を見逃さなかったシルフィーは両足に意識を集中させた。シルフィーの左足と右足に勇者の紋章が光を放つ一瞬気を取られたシルフィーの前に立っていた悪魔がシルフィーに気付く頃にはシルフィーは姿を消していた。
そして姿を消したシルフィーは一瞬で仮面の少女の目の前に現れ聖剣で斬りかかった。仮面の少女は一瞬で帰化づいたシルフィーに気付き前職でシルフィーの振るう聖剣から距離を取った。
仮面の少女が距離を取った直後シルフィーは仮面の少女に殴られた上投げ捨てられたファルコの元へ一瞬で駆け寄った。ファルコの容態を確認すると鳩尾を殴られた衝撃であばら骨が数本折れて内臓にもダメージが及んでいた。強引につかまれた右手首の骨も折れていた。シルフィーは至急王宮魔術師へ魔法具で念話づ手で状況を説明した。
状況を説明し終わった後すぐにファルコの足元に魔法陣が浮かび光の柱がファルコを呑み込み光の柱が消えると魔法陣ごとファルコが姿を消していた。
「冷静な判断ね。実力が計り知れない相手に策もなく攻撃するのではなく戦闘不能の仲間を撤退させる。この状況では最善の策よ」
シルフィーは初めて仮面の少女か会話らしい会話を聞いた。シルフィーは仮面の少女を見ると、聖剣の一閃を躱し切れなかった仮面の少女の仮面に斬られた跡が広がる。
広がっていく仮面の傷は仮面の端まで広がり仮面が割れる音がした。
悪魔の顔を模した仮面が割れて仮面が落ちると仮面をしていた少女の顔が露わになった。
美しい青い瞳と整った鼻梁。顔立ちが醸し出す雰囲気からシルフィーと大して変わらない年齢の少女だと分かる。
「仮面を壊した腕は認めてあげる。けれど魔王の魔力を奪還できたのは私達」
「これ以上好き勝手に祠を荒らす事などさせると思いますか>」
「いいえ。もう全ての祠にある魔王の魔力は私達の手の中にある」
「どういうことです⁉」
シルフィーの威圧的な雰囲気の問いに少女は表情一つ変えず答えた。
「それでは勇者様。ごきげんよう」
少女はシルフィーに会釈をすると少女と悪魔達の足元に魔法陣が展開されて光の柱に呑み込まれる。光の柱に呑み込まれたと同時に光の柱ごと少女と悪魔の姿が消えた。
▽
「どういう事です⁉なぜ各地の祠に施された立体魔法陣が自壊しているのですか⁉」
ライラックは勇者だけではなく魔王の魔力を保管している祠に転移した上級騎士達から念話で受けた報告に動揺で声を荒げてしまった。
ライラックだけではない。王宮にいる王宮魔術師全員がこの予想もしていなかった状況に動揺している。
王宮にはファルコの右手の紋章を使って仮面の少女によってライエール伯爵家別邸にある祠の立体魔法陣が壊されている事は報告があった。しかし各地の祠に施された立体魔法陣全てが自壊するとは予想外だった。
悪魔達はこれを狙って勇者達とは戦闘というより牽制して時間稼ぎをするような行動をとっていたのも合点がいった。
「なんという事だ……!」
ライラックは悪魔達の真の目的を知り唇を噛んだ。
▽
「どうやらシャルロットは成功させたようですね」
「あぁ、シャルロットの報告通り魔王様の魔力が保管されている祠に施されたかつての勇者の罠、立体魔法陣は全て同じ魔法陣で構成されている事を聞いてピンときた。あの立体魔法陣は同じく勇者の力がないと魔法陣を壊すことはできない。シャルロットでも精々一時的に無効化する事が精一杯だ。けれどその場に勇者がいれば話が別だ——」
シータは想定通りに事が運んでついつい自分が組み立てた策を話してしまう。
「——勇者なら誰で良い。勇者の紋章を使ってシャルロットが立体魔法陣を自壊させる。しかも事前に他の祠に施された立体魔法陣全てを遠距離で自壊できるようにリンクさせた。これでシャルロットが祠の立体魔法陣を一つ破壊すれば他の立体魔法陣も全て自壊する。そして各地の祠には俺達悪魔が配置されている」
「これならシータの言った通り一気に魔王様の魔力を奪還できるという事ですね」
「これで俺達が圧倒的に有利に立つ」
シータはここまで自分の作戦通りに進み過ぎた事に輪wライを堪え口角が異常に上がっていた。
▽
呑み込むような強い光が消える頃には祠に施されていた悪魔達から魔王の魔力を奪う事を拒む立体魔法陣は跡形もなく壊れてなくなていた。
それぞれ祠の傍にいた上級騎士達を悪魔達は魔術でそれぞれの祠ごと攻撃した。上級騎士達は悪魔の攻撃を防御するが、祠までは防御しきれず祠は悪魔の攻撃で崩れ落ちる。
身を守るために防御していた上級騎士達の懐に悪魔達は踏み込んで魔術で遠くに吹き飛ばした。上級騎士達が吹き飛ばされた隙に悪魔達はそれぞれ崩れ落ちた祠へ近づいた。
立体魔法陣がなく祠に踏み込む事ができる悪魔達は崩れ落ちた祠に手を突っ込んだ。そして突っ込んだ手を引き抜いた。引き抜いた手には魔石を手にしていた。悪魔が手に持っている魔石には禍々しい気配を放つ魔力が閉じ込められていた。
魔王の魔力を手にしてしまった悪魔達に上級騎士達は吹き飛ばされた場所から悪魔達に聖剣術を放った。
しかし上級騎士達が聖剣術を放ったと同時に足元に魔法陣が浮かび魔法陣から光の柱が立ち上り悪魔達の体を呑み込む。
聖剣術が悪魔達に届く頃には光の柱は消えて悪魔達の姿は跡形もなく消えて聖剣術は空を切った。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
今回も読んで頂き誠にありがとうございます。
本日は二話連続投稿をしますので良ければ次話も読んで下さい。