第十一話(表裏)
悪魔側の仮面の少女に向かって直進するファルコの後ろでラザフォードは青い炎を纏う聖剣の切っ先に青い火の玉を複数生成する。
仮面の少女の黒い盾で防がれた青い火の玉と違い大きさは先程より小さいものの数が多く生成されいた。ラザフォードは聖剣を振ると複数の青い火の玉は悪魔達に向かって飛んでいく。
黒い盾で防がれた巨大な火の玉の軌道と違い仮面の少女に向かって直進するファルコを避けるように弧を描きながら悪魔達に向かって青い火の玉が襲い掛かる。
青い火の玉が悪魔達に直撃する直前仮面の少女が再び黒の外套を縦に形状を変化させるが仮面の少女に直撃する軌道の火の玉以外は悪魔に向かって軌道を変えて進む。悪魔三体は聖剣術の火の玉から距離を取って聖剣術の炎を躱す。
黒の外套を盾に形状を変化させた少女はラザフォードの放った火の玉を防ぐ。火の玉が盾にぶつかり聖剣術の炎を防ぐと仮面の少女は盾に喧嘩させた外套を元に戻すと少女の目の前には聖剣を振り上げて仮面の少女に振り下ろす寸前のファルコの姿が目に入った。
ラザフォードが放った炎は盾にわざと形状変化させる事で目の前の視界を奪いファルコの聖剣の一撃が必中するための目くらましに過ぎない。
「はあああぁぁぁっ‼」
ファルコが振り下ろす銀色の聖剣には神聖な光が纏い仮面の少女の被っている仮面に直撃する——寸前、金属同士がぶつかった時の甲高い音が響くとともにファルコの振り下ろした聖剣が止まった。
「⁉」
仮面の少女の一瞬ともいえる早業にファルコは驚愕で息を呑んだ。
仮面の少女が盾に形状変化させた黒の外套を元に戻す時には眼前にあるファルコの振り下ろした聖剣を両手で展開した魔法陣二つから白と黒の双剣を生成してファルコの聖剣を受け止めた。ファルコだけではないこの場にいたシルフィーやラザフォードも同じ気持ちだろう。
一瞬と言って遜色ない短時間で眼前に振り下ろされた突進気味に直進した勢いと全体重を乗せた聖剣を仮面の少女は双剣で軽々と受け止めた事に勇者三人は驚愕のあまり声が出ない。
聖剣の一撃を少女に受け止められたファルコに距離を取った悪魔達は魔法陣を展開した。悪魔達の魔法陣から光の球が生成されてファルコと仮面の少女が超至近距離で鍔迫り合いしているにもかかわらず仮面の少女に被弾覚悟でファルコめがけて射出する。
射出される瞬間、ファルコと鍔迫り合いしている仮面の少女の羽織っている外套が仮面の少女を包み込むように形状が変化しようとしている。
仮面の少女が自身を防御しながら目の前にいるファルコへ確実に悪魔の攻撃を命中させるための連携攻撃だ。
ファルコは仮面の少女と鍔迫り合いの状態で今聖剣にかけている力を抜けば仮面の少女に押し切られて双剣で返り討ちに遭う。
躱す事のできないファルコに光の球達が襲い掛かる時、光の球達がファルコへ着弾する軌道上に透明な盾が三個生成され悪魔が放った光の球を遮った。
遮られた光の球は透明な盾に衝突した勢いで爆発した。光の球達が爆発してもなお透明な盾が光の球の爆風を遮りファルコに傷一つ付けず守った。
「「「⁉」」」
今度は悪魔達が驚愕した。
ファルコに必中すると確信していた光の球達がファルコに着弾する前に防がれた。ファルコは少女との鍔迫り合いに必死で悪魔達の攻撃を防ぐ余裕はなかったはずだ。なのに悪魔達の攻撃を防いだ透明な盾を展開したのは誰か悪魔達は想像がついた。
悪魔達はファルコの後ろにいるシルフィーを見た。シルフィーは金色の聖剣の切っ先をファルコの方へ向けていた。ファルコに切っ先を向けたシルフィーの聖剣には聖なる気配が纏われていた。
「これは厄介ですね」
悪魔達の一体が声を発すると悪魔達は忌々しそうにシルフィーを見る。
これがシルフィーの聖剣術。透明な盾を展開して物理的魔術的攻撃を完全に防御する。しかも透明な盾は遠距離でも展開可能である。
シルフィーが悪魔達の魔術を防御する以上仮面の少女への援護や勇者達への妨害が無効化されてしまう。これでは実質少女はファルコとラザフォード二人の勇者を相手にする事になる。しかもラザフォードは遠距離から仮面の少女だけでなく悪魔達にも聖剣術を使用して攻撃できる。
数の上では悪魔側が有利だが現状有利なのは勇者側だ。
ファルコは仮面の少女と鍔迫り合いの中、右手に意識を集中した。ファルコの右手の甲に神秘的な力が宿る文様が浮かぎあがり、聖剣が纏う神聖な光が更に増していき銀色の聖剣が見えなくなるほど光が強くなると仮面の少女が鍔迫り合いしている双剣に亀裂が入った。そしてファルコは仮面の少女の双剣へファルコの聖剣に全体重をかけた。
ついに仮面の少女の亀裂の入った双剣はファルコの聖剣によってどんどん亀裂が侵食していきファルコの聖剣に圧し斬られた。
仮面の少女は双剣を圧し斬られたと同時にファルコから距離を取り、双剣を圧し斬られた聖剣に斬られないよう躱した。仮面の少女が聖剣を躱すために距離を取ったと同時にファルコは握っている聖剣の切っ先を距離を取る仮面の少女に向けた。
ファルコは聖剣に意識を集中させ聖剣に纏っていた光を切っ先に集中させ神聖な光が切っ先に収束する。収束された神聖な光は光線となり仮面の少女めがけて放った。ファルコの聖剣術による公選は目で追えない速度で仮面の少女へ直進する。
仮面の少女は距離を取ると同時に魔法陣を展開して防御魔術を起動させようとするが、少女の魔法陣展開の早業よりも速く光線が少女の羽織る黒の外套を貫き肩を掠めた。
ファルコの聖剣の切っ先から聖剣術の光線が消えると勇者側はファルコの方へ、悪魔側は仮面の少女の方へ集合した。
「大丈夫ですか!勇者ファルコ⁉」
「あぁ、なんとかな。けどあの女、双剣の方が耐え切れなかっただけで僕の本気の鍔迫り合いを余裕で相手していた。しかも勇者ラザフォードの聖剣術の炎をいとも容易く防いだ」
「そうだな。普通の悪魔なら俺の聖剣術の炎に触れるだけで灰になるはずなんだがな。あの仮面の女はやっぱり只者じゃない」
勇者三人の連携でも少女にやっとの事で掠り傷一つ付けた。しかも悪魔達の支援もない中勇者達と渡り合う手腕は敵として戦うのにこれ以上恐ろしいものはない。
「だけど、このフォーメーションなら悪魔達を近づけずに遠距離からの攻撃も勇者シルフィーの聖剣術で防御しつつ僕が近距離でも遠距離でもあの女に攻撃できる」
「それに俺が聖剣術の炎で陽動をかけつつ悪魔との距離を離すこともできる」
「そうですね。悪魔達に隙ができれば私も悪魔に攻撃する事もできそうです」
勇者達は先程のフォーメーションで戦った時の手ごたえを感じつつ更に作戦を立てた。
一方仮面の少女の周りに集まった悪魔達も勇者達のの連携に驚愕していた。
「大丈夫ですか⁉」
「大丈夫、掠り傷よ。神聖術ですぐ治癒できるわ」
仮面の少女は両手に持つ折れた双剣を捨てて聖剣術の光線が肩を掠めた所から血が滴っている所に逆の手をかざす。手から癒しの光が肩にできた傷を照らした。すると数秒もしないうちに肩の傷が時間を巻き戻したように塞がり傷が元からなかったかのように完治した。
「しかし、今回の勇者はかつての湯者ほどではないが今までの勇者より連携が取れている。これでは我らがシャルロットの支援と勇者側の妨害がしにくい」
「そうですね。しかし私達の作戦とは関係なくシャルロットと勇者が一対一で戦おうとしています」
「そうだな。幸いな事に他の勇者は中距離からの支援と我らがシャルロットの支援を妨害する事で精一杯のように見える」
「そうね。後は勇者同士の距離をもっと離すだけ」
「それができれば今回の目的が達成できます」
悪魔達も話し合いの結果、今までの作戦で十分に目的が果たせると結論付けた。
勇者側も悪魔側も話し合いが終わり互いに互いを睨みつける。
そして程同時にファルコと仮面の少女が先陣を切った。
胃疲れ様です。
tawashiと申す者です。
今回も読んで頂き誠にありがとうございます。
今回も二話連続投稿しますので良ければ次話も読んで下さい。