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第十話(表裏)

「あれが悪魔ですか……」


 シルフィーは生まれて初めて見る悪魔の存在感から感じる潜在的な警戒心と恐怖心を煽られる。

 ファルコも同様で肌から伝わるひりつきが勇者の力による潜在的な敵対心からくるものと本能的な勘で感じる。


 ラザフォードは以前悪魔二体と同時に戦闘をしているため悪魔の実力は身に染みている。そんなラザフォードでも金色の髪をなびかせている仮面を被っている者に関して全く情報がない。


 人間と同じ四肢と胴体の造り、そして悪魔達からは見えない金髪をなびかせている。月の光が背後にあり仮面を被った人物のシルエットがはっきり見える。シルエットからして人間の少女だろう。


 そしてこの場にいる勇者三人は仮面を被った金髪の少女は傍にいる悪魔達より格段に強い力を宿している事が勇者である三人の直感が訴えかけている。


「悪魔共!何をしに来た⁉」


 ファルコは理性的に思考を戻して別邸の屋根にいる悪魔達に問いかけた。


「そんなの決まっています。私達の目的は魔王様の魔力を奪還する事です」


 黒の外套を羽織った少女の右隣にいる悪魔は人間ではありえない程甲高い声でファルコの問いに答える。


「それでは始めますか。頼みましたよ」


 黒の外套を羽織った少女の左隣にいる悪魔が人間の女性に呟くと黒の外套を羽織った少女がその場から一瞬で消えた。


 勇者三人が姿を消した少女に警戒していると勇者三人の背後に突如少女が現れた。あまりにもの早業に勇者三人は背後に移動した女性を腰に携えている聖剣を鞘から抜いて攻撃する前に少女が展開した魔法陣から発せられる衝撃波に勇者三人は吹き飛ばされた。


 吹き飛ばされた勇者三人は空中で体勢を立て直して地面に倒れ込む事無く着地する。しかし今の衝撃波により魔王の魔力が保管されている祠から随分と離れた所へ吹き飛ばされた。

 祠から随分と離れた瞬間、別邸の屋根にいた悪魔達が勇者それぞれの前に姿を見せる。


「僕達を分断して一対一で戦う作戦か?前ら悪魔は僕達勇者に手の足も出ないはずなのに」

「減らず口の多い勇者だ」


 ファルコの前に現れた背丈が赤子程の重低音の声を発する悪魔がファルコの挑発に乗る事なく切った。


「まさか私の相手が四年前、私達悪魔の中でも手練れ二体と同時に戦って生き残った上手練れ二体に致命傷を与えた勇者であるラザフォードとは私も運がない」

「俺の名を知ってるとはな」

「貴方は悪魔の中では有名人ですよ。悪魔狩りのラザフォード」


 ラザフォードの目の前にいる悪魔はラザフォードの勇名を発した。


「まさか私の相手が女性とは。なんだかやりにくいですね」

「私が女性だからと油断しないことです。それがあなたの命取りになります」

「やはり、女性といえど勇者といったところです。ここにいる勇者の中で悪魔狩りのラザフォードの次に肝が据わっています」


 シルフィーの目の前にいる悪魔は甲高い声でシルフィーの度胸に感服する意をシルフィーに伝える。


 そしてほぼ同時に勇者三人は腰に携えた聖剣を引き抜いて構える。そしてそれぞれの目の前にいる悪魔に袈裟斬りを振るう。悪魔達は勇者の振るう聖剣の袈裟斬りを後ろに下がり躱す。


 悪魔達がそれぞれ勇者達の聖剣を躱すと勇者達は目の前にいる悪魔ではなく魔王の魔力が保管されている祠に歩み寄っている黒の外套を羽織った少女に向かって駆け寄った。


 黒の外套を羽織った少女は祠に展開されている立体魔法陣に手が触れるか触れないかの距離まで手を伸ばすと伸ばした手から魔法陣が展開された。展開された魔法陣と立体魔法陣が歯車のように噛み合うと立体魔法陣の魔法陣一つ一つが今まで不可視化された魔法陣が可視化され全ての魔法陣が連動して回り出した。


「立体魔法陣を無力化する気だ!」


 ラザフォードはシルフィーとファルコに聞こえるように声を張って少女のしている事を伝える。


 ラザフォードは手に持っている持ち主の体格に合う巨大な紅蓮色の聖剣に意識を集中した。意識を集中した瞬間、紅蓮色の聖剣はどんどん青色に変色して聖剣には青い炎が纏う。聖剣に青い炎が纏い出すと聖剣の切っ先から炎が収束しだして巨大な青い火の玉が生成される。切っ先に巨大な青い火の玉が生成されるとラザフォードは握っている聖剣を振り切る。すると切っ先に収束していた青い火の玉は祠の前にいる少女に向かって飛んでいく。


 青い火の玉は勇者の仕掛けた立体魔法陣を無力化している女性の背後にぶつかる瞬間、女性が羽織っている炎のようにゆらゆらと揺れている黒の外套の形状が変化して後ろから飛んでくる巨大な青い火の玉から身を守るための巨大な黒い盾になる。


 青い火の玉は黒い盾にb命中した。青い火の玉は黒い盾に命中した後黒い盾を焼き尽くそうと黒い盾に平がるが黒い盾が黒の外套の時のようにゆらゆらと動き出すと青い炎を侵食し始めた。そして青い炎は少女に触れる事なく黒い盾に侵食されつくした。


 しかしラザフォードには想定の範囲内だった。青い炎に気を取られて立体魔法陣の無力化がお留守になった。その時にはシルフィーが黒の外套の少女との距離を瞬時に詰めて傍に着いていた。


 シルフィーが持っている金色の聖剣が黒い外套の少女へ鋭い刺突を繰り出す。

 黒の外套の少女は金色の聖剣んオ刺突を躱すために立体魔法陣の無力化を中断してシルフィーから距離を取った。


 距離を遠田少女な周りに勇者の袈裟斬りを躱した悪魔達が集まってくる。

シルフィーの傍にもファルコとラザフォードが集まってきた。


「今の状況は王宮魔術師に念話で伝えた」

「ありがとうございます。ファルコ」

「それよりどうする。数の上では三対四。しかも人間の女は他の悪魔より強いぞ」


 ラザフォードは直接悪魔と戦った事があるため分かっていた。勇者が使用する聖剣術は悪魔には防ぐ手段がないため基本は回避するしかない。しかし目の前の人間の少女は羽織っている外套のみでラザフォードの聖剣術の一つをいともたやすく防いだ。それが陽動で生んだ隙にシルフィーの俊足で接近しラザフォードの生んだ隙を狙ったシルフィーの刺突も躱された。


 明らかに目の前の少女は只者ではない。


「僕があの女を相手する」


 声を発したのはファルコだった。


「だから他の悪魔三体の妨害を阻止してくれ」

「確かに目の前の人間は他の悪魔より強い。その上悪魔が三体揃って妨害されたら俺達は簡単にやられてしまう」

「かといって目の前の女性に多く人員を割けば悪魔達の妨害を阻止しきれません。名案だと思います」


 シルフィーとラザフォードはファルコの作戦に同意する。

 そしてファルコは目の前の少女に向かって銀色の聖剣を構えたまま直進する。


お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

今回も読んで頂き誠にありがとうございます。

今回から勇者側と悪魔側が直接戦闘を繰り広げる話に突入しました!

気が向いたら次も読んで下さい。

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