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第七話

『皆様、転移された全員が魔王の魔力が保管された場所へ移動できました。それでは皆様、作戦通り悪魔の襲撃に備えて下さい』


 王宮魔術師が全員の準備ができた事を念話で連絡する。

 シルフィー、ファルコ、ラザフォードはライエール伯爵家別邸の中庭にある魔王の魔力が保管されている祠の前にいる。


「それにしてもこれが別邸なのか?普通の貴族の屋敷と変わりないではないか」


 ラザフォードの目の前に建っているライエール伯爵家別邸は貴族が住む大きな屋敷と遜色ない豪華な別邸に驚きを通り越して呆れていた。


 貴族は一般的に領民を守り領民の暮らしを保障する代わりに領地に住む領民から税金を徴収して暮らしている。しかし勇者の血族の貴族はそれに加え魔王の魔力を悪魔から守るかつての勇者が施した罠による国からの褒賞金が定期的に受け取っている。


 ライエール伯爵は噂では豪遊な人物で領民から徴収している税金を領民のために還元せず私利私欲のために使っているという。その一つがこの別邸だ。


「注意して下さい、勇者ラザフォード。いつ悪魔の襲撃が来るのか分からないのですよ」


 傍にいるシルフィーは自分より一回り以上大きい体躯の獣人であるラザフォードにいつも通り凛とした態度で注意する。


「すまない。こんな別邸を建てるような貴族でも魔王の魔力を守ってる勇者の血族と考えるとなんか複雑でな」


「その通りだ勇者ラザフォード。かつての勇者の血族であろうと、今の勇者は僕達だ。勇者の紋章は遺伝されないにも関わらず先祖の偉業に縋り続ける貴族程みすぼらしいものはない。そうとは思わないか勇者シルフィー?」


 ラザフォードの小言にファルコはライエール伯爵を含む勇者の血族の貴族を嘲笑しながら言った。そしてシルフィーにファルコの考えに賛同するか質問を投げかける。


「今はその質問に答える状況ではありません」

「相変わらず真面目な人ですね。勇者シルフィー」


 ファルコが投げかけた質問を受け流したシルフィーにファルコはやれやれという感じで息を吐く。

 ラザフォードは先程のファルコの言葉に何か引っかかっていた。


 ファルコが言った言葉は自身が勇者の紋章を持つ勇者である自身から来るものなのか、それとも勇者の血族の貴族と以前何かあったからなのか。

 他人の過去など考えても意味のない事だと割り切ってラザフォードは周りの様子を注意深く観察する。


 ラザフォードも勇者の紋章を得て勇者になって随分と経つが他の勇者とも関わりが浅い。

 勇者の中でも関わりが長いシルフィーについても勇者である事と王族の血を引く事以外は何も知らない。


 そのせいか勇者同士の連携が取れていない。

 これは勇者四人全員が思っている事だ。しかしファルコは自身が勇者である自尊心からか、魔王の血族でありながら勇者の紋章を持つノクトを毛嫌いしている。そんなファルコの態度にノクトもファルコを毛嫌いしている。


 このような状態ではいけないとシルフィーは思っているがこれに関してはノクトとファルコの問題だ。自分が勝手に割り込んでいい話ではない。

 周りを注意するように言ったシルフィーも胸中の奥ではそんな事を考えていた。


 祠を警備してしばらく経つと空は夜の帳に染まり、三日月が空に浮かび星も夜空の上に輝いていた。

 三日月が流れてくる雲に隠れて地面が影に覆われる。

 その時シルフィーとファルコは今まで感じた事のない肌がひりつく感覚を覚えた。


 ラザフォードはこの感覚を覚えている。かつて勇者の罠が施されていない魔王の魔力を奪おうとした相手と戦いになる前に感じたのと同じ感覚だ。


 三日月を覆っていた雲が風に流され三日月が露わになると中庭に差す別邸の屋根の影に四つの影が屋根の影の上に立っていた。

 勇者三人は肌がよりひりつく方向である別邸の上を見た。


 別邸の屋根には三日月を背にしている四人の人物が立っていた。四人全員がゆらゆらと揺らめく黒の外套を羽織り、四人の内三人は人とは似ても似つかない恐怖を感じさせる異形の顔をしている。残血の一人は他の三人と違い三人と同じ顔を模した仮面をしている。三日月の光が仮面の人物の風になびく長い金髪を美しく輝かせる。


「一回しか言わないから肝に銘じておけ。二人共——」


 ラザフォードが鋭い牙を食いしばりながらシルフィーとファルコに声をかけた。

 ラザフォードがかつて戦った二体との死闘を思い出しながら屋根に立つ人物達を睨みながら言う。


「——あいつらが悪魔だ」

お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

二話連続投稿の二話目です。

明日も投稿していきますので気が向いたら読んで下さい。

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