第三話(裏)
「シータ。案とは何でしょう?」
悪魔達が集まる部屋から悪魔の誰かが割り込んで声を発したシータに尋ねた。
悪魔に共通している黒の外套を羽織っているがシグマやガンマとは対照的にシータは異常に背丈が高く普通の成人男性より一回り大きい。
「この際、一つずつ魔王様の魔力をちまちまと一つずつ奪還するんじゃなくて一気に奪還しようぜ」
シータの言った事に一瞬部屋の中が静まり返ったが次の瞬間悪魔達が一斉に口を開いた。
「何を言っているシータ!私達が勇者の仕掛けた罠に手も足も出ない事は同じ悪魔であるお前も知っているはずだ‼」
「そうだ!我々に無駄死にさせる気なのか‼」
「私達が消えては魔王様を復活させる目的が果たせなくなってしまう‼」
この部屋にいる悪魔達はシータの言った案に罵声で反論した。
それもそうだろう。長い年月をかけてようやく分散された魔王の魔力の大半を回収して残りの在処を見つけてもなお全て回収できなかったのは、かつての勇者が施した罠によって厳重に保管されているからだ。
勇者の力は悪魔にとって致命傷になる。だからシャルが悪魔の代わりに魔王の魔力を奪還するまで手も足も出なかった。
それをシータはこれまでの苦労を全否定する事を言っている。
「そんな怒らないでくれよ。俺だってシャルロットが勇者が施した忌々しい罠を掻い潜って魔王様の魔力を奪還できてから思いついた案なんだ。俺だって失敗する事ならこの場で話に割り込むなんてしない。成功確率を上げるためにシャルロットに魔王様の魔力を奪還している間に調べてもらってたんだ」
シータの話を聞いていた悪魔達が修二にシャルの方を向いた。
「シャルロットはシータの案を知っていたのか?」
「知ってたけどシータが成功する算段が付くまでは絶対に共有するなって釘を刺したから、今まで共有しなかった」
悪魔の問いにシャルは申し訳なさそうに話した。
「それはそうだろ。成功する算段が付く前に提案なんてしたら真っ向から否定してなかった事にするだろ?」
「そうだが。だがシータ。今この場で案を話そうとしたって事は成功する算段が付いたって事だな?」
「あぁ。この案は悪魔である俺達だからできる事で、この案の要はシャルロットだ」
シータは徐々に真剣な口調に変わっていく。
その様子がシャルや他の悪魔にも伝わった。
「これから俺の案を共有するからしっかり頭の中で反芻しておいてくれ」
シータは話し終えると悪魔達に案の全貌を共有した。
シータの案を共有した悪魔達はシータが共有した案の大胆かつ緻密な全貌に驚愕してしばらく声が出なかった。
「黙っているってことは俺の案に否定する気はなくなったって事で良いよな?」
シータの言葉に悪魔達は何も言い返さなかった。肯定の沈黙に部屋中が包まれる。
「けど言っておくが、もし勇者と対面したらシャルロット以外は戦闘をしようなんて考えるなよ。無駄死にになる」
シータは悪魔達に注意を告げた。
「そういえばシャルロットは魔王様の魔力を奪還したばかりで疲れいるのでしたね。シータ、この案はいつ決行しますか?」
ユプシロンがシャルの疲れを労わってシータに欠航する時間を尋ねた。
「シャルロットが回復したらいつでも行動できる。それに夜間に行動した方が人間である勇者側に有利に動けるから明日の夜からはどうだ?」
シータは案の要であるシャルの体調を気にしてシャルに尋ねた。
「それだけ休む時間があれば私も大丈夫。しっかりと休めるわ」
シャルが了承すると悪魔達全員が首を縦に軽く振って頷いた。
「決まったようだな。儂らが動くのは明日の夜。それまでの間、各々準備する事。これをもって会議を終了する」
ガンマの会議の終了する言葉を聞くと悪魔達は羽織っている外套の炎のように揺らめく挙動が激しくなり全身が黒い炎に包まれる。黒い炎に包まれて黒い炎に呑まれたと思った瞬間炎が霧散して悪魔達は跡形もなく消えている。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
二話連続投稿の二話目です。
明日も投稿しますので気が向いたら次も読んで下さい。