第二話(裏)
悪魔が集会する漆黒の部屋には既に大半の悪魔が集まっていた。
「シャルロットはまだ来ていないのか?」
「シャルロットなら貴方の思念通信をする前に魔王様の魔力を奪還した後で一度自分の部屋で休むと言っていましたよ」
「それなら悪魔全員に記憶を共有しておけ、ユプシロン」
「いやぁ、私も魔王様の魔力を奉納するのに忙しかったものですから記憶を共有する暇がなかったのですよ。シグマ」
「記憶の共有など奉納が終わってからでもできるだろう。記憶の共有はしっかりしろと何度も言っているだろう」
「今後気を付けますので」
悪魔のシグマは記憶の共有を怠ったユプシロンに対して注意していると漆黒の部屋の通路が開く音がした。
開いた通路から来たのは濡れた髪を緩く結い、タオルを肩にかけて薄着を着た状態のシャルが現れた。
「すまないシャルロット。ついさっきユプシロンから魔王様の魔力を奪還して休んでいたばかりな事を聞いた。ユプシロンの記憶共有が遅かった事が原因で疲労が溜まっているはずなのに呼び出してしまった」
シグマは元々の小柄な体格で深々と頭を下げて謝罪した。
「謝らなくてもいいよシグマ。もう身支度してこの部屋に来ちゃったし。それに謝るべきなのは記憶の共有を怠ったユプシロンが悪い」
シャルはシグマの隣にいるユプシロンをジト目で見た。
「私も魔王様の魔力を奉納するので忙しかったもので」
「それなら奉納が終わってからでも間に合うよね」
「シャルロットもシグマと同じ事を言いますか」
シャルとシグマにジト目で見られるユプシロンはそれに耐えきれずそっぽを向いた。
「それより至急報告しないといけないことって意識共有じゃダメなことなの?」
「そうだ。先程偵察に出向いたイプシロンとプサイからの伝言だ」
話を本題に戻したシャルの質問にシグマは答えた。
「皆もイプシロンとプサイの伝言は頭の中で共有できていると思うが、魔王様の魔力を奪還している事が知られ勇者側も動き出そうとしている」
シグマの言葉にシャル以外の部屋にいる悪魔達は軽く頷いていた。
その伝言を共有していないシャルだけが悪魔達と反応が違い驚いていた。
「どうして私には共有されてないの?」
「イプシロンもプサイも気を使ったのだろう。シャルロットだけが残りの魔王様の魔力を奪還できる者だから余計な心配をかけないためにわざとシャルロットだけ共有しなかったのだろう」
シグマはイプシロンとプサイの気遣いを代弁してシャルに伝えた。
「勇者側もこれ以上魔王様の魔力を奪還させまいと動き出す。そこで今から作戦会議をしたいと思う」
シグマが話終わるとシグマの後ろからシグマと同じくらいの以上に小柄な体躯で床に引き摺る程長い黒の外套を羽織った悪魔が前に歩いてくる。
「ここからは我ではなくガンマに会議を進めてもらう」
「これから会議を進行するガンマである。先程シグマも話していたが勇者側が儂らに対抗して動き出そうとしている。おそらくは残りの魔王様の魔力を湯者達が見張り奪還を阻止しようとするだろう」
ガンマはしわがれた声で今後勇者側が行動しそうな案を上げる。
「しかしながら、現在勇者は四人です。そのうち勇者の紋章を二つ持つ勇者は二人いると聞きました。だからと言って我らがまだ奪還できていない魔王様の魔力は十七ヵ所あります。気に留める必要はあると思いますが作戦を立てるにも勇者側の動きが分からないのではいささか尚早ではないかと」
「だがすでに勇者側が手を打っているのであればシャルロット一人で魔王様の魔力を奪還するのは危険すぎる」
「そうだ。勇者が四人だけとはいえ、奪還を進めていけばいずれ勇者と対面する確率が高くなる。シャルロットがいなくなる事だけは避けなければならない」
悪魔達は各々の意見を言い合う。
「一つ俺に案があるんだが聞いてくれないか?」
悪魔達が様々な意見を言い合う中、割り込むように悪魔の誰かが声を発した。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
本日も読んで頂き誠にありがとうございます。
今回も二話連続投稿いたしますので良ければ次話も読んで下さい。