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第二話

 王宮の門前に立っているレイノスにやる事を終えたノクトが駆け寄った。


「レイノスさん。待たせてすみません」

「王宮の中に入る時間より早く来たんだ。謝る必要はない。それより伝えたい事は伝えられたか?」


「そのことで、墓の手入れありがとうございます」

「気にするな。入院中は外出できなかったんだ。墓の手入れができるのは俺だけなんだから怪我人は休むことが最優先だ」


「それを言うなら大怪我を負うような厳しい修行をしなければいいだけのように思うんですが」

「ほう?俺の今までの修業内容に物足りなさがあったか。それならこれからはより厳しく修業を付けてやる」


「冗談です!今までの修業内容がとても良いと思っています!」

「こっちも冗談だ。これ以上厳しい修行にしたら入院期間の方が長くなって修業時間が短くなって修業する意味がなくなる」


 レイノスはノクトをからかうと王宮の門を潜ろうと歩き始める。レイノスを追ってノクトは後ろに付いていく。


 門を来る儀王宮の敷地の中に入ると甲冑を着た騎士達が通路の端に並んでレイノスとノクトを出迎える。

 レイノスとノクトはそのまま通路を進むと通路の先に大きな空間が広がった。王宮の大広間に着いた二人は目の前にいる人物と目が合った。


 王宮専属予見者のみが羽織る事のできる純白のローブを纏った老齢の男性と目が合った二人は老齢の男性の前まで進むと会釈をした。


「お久しぶりです、ポーセイン卿」

「おぉ、聖騎士レイノス殿と勇者ノクト殿ではありませんか。こちらことお久しぶりです」


 二人が会釈した老齢の男性——ポーセインは長く伸びた白髭を触りながら二人に返事をした。


「勇者様全員と上級騎士以上の聖騎士様も招集されたとなると、これは今までにない程大事な招集なのでしょうな」

「そのようですね」


 ポーセインとレイノスがこの招集された意味について話す。

 今回招集されたのは現在勇者の紋章を宿す勇者四人と聖騎士を含む上級騎士、王宮直轄の魔術師と神聖術師、そして王宮専属予見者。聞くだけで豪華な面子だ。


「それにしてもノクト殿も勇者の力を制御できたようですね」


 ポーセインはノクトの右目と左手を見て言葉を発した。


「聖騎士様との修行でなんとか自分のモノにしたところです。聖騎士様の話ではまだ修練の余地はあるそうです」


 ノクトはポーセインの言葉に対しノクトは王宮の外では話した事のないとても丁寧な言葉で答えた。

 ポーセインの言う通りノクトは勇者の力をやっと制御できるようになった。それがポーセインに伝わったのはノクトの右目と左手に宿っている勇者の紋章が見えなかったからだろう。


 勇者の紋章は勇者の力を制御できれば紋章を不可視化する事が可能である。そしてノクトが右目と左手の紋章を不可視化できている事をポーセインはノクトを見て察したのだろう。


「他の勇者様達は先に集会の間に集まっております。私達も向かいましょう」

「そうですね。国王が来る前に集会の間へ行きましょう」


 ポーセインとレイノスが話すとポーセインとレイノス、ノクトは大広間の奥にある階段へ進んで階段を上る。


 階段を上り切ると視界に広がるのは先程の大広間と同じくらいの広い空間に十数名の老若男女が立っていた。この人達全員勇者や上級騎士、王宮直轄の魔術師と神聖術師である。


 この集会の間の奥には一段高く段差があり一段高いところには一際豪奢な椅子が置かれている。一段高いところの端には元老院が待機している。豪奢な椅子に歩み寄る豪奢な衣服を着ている一人の男性がいた。


 ノクトは二年前自分を処刑しようとした時以来その男性の事を好印象を持った事は一度もない。

 レイモンド王が豪奢な椅子——玉座に座ると集会の間に集まった人全員が跪く。御託に漏れずノクトも自身の体裁のため跪く。

 玉座に座るレイモンド王は跪く人達を見て口を開いた。


「顔を上げよ」


 レイモンド王の言葉に跪いている人達が全員レイモンド王の方を見た。


「此度は急な招集に関わらずこの場に集まってくれた事、ご苦労であった。単刀直入だが貴公らを呼んだのはほかでもない。魔王が動き出した」


 レイモンド王の言葉に跪いている人達はどよめく。

 どよめくのも無理はない。かつてこの世界を掌握しようとして勇者達の力でようやく討伐できた敵が動き出したのだ。


「静粛に!ここから先は私が詳しい事態を話します」


 レイモンド王のそばに歩む法衣を着た男性が声を発した。

 法衣の男性が発した言葉で跪いている人達は静かになった。


 ノクトはレイモンド王が処刑しようとした時にレイモンド王の隣にいた男性——聖母教皇サイグリューを覚えている。

 レイモンド王の傍まで来たサイグリューはノクト達の方を見る。


「この数ヶ月かつて魔王を討った勇者の血族であるライエール伯爵家、オルタニア子爵家が厳重に保管している魔王の魔力が何者かによって盗まれた。目撃者からは黒の装束を着た者達の手によって盗まれたいう証言を得た」


 黒い装束を着た者という言葉にノクトは耳を聳てた。

 二年前、ノクト達の養父であるエドワードを殺した黒の装束を着た悪魔を思い出した。


「しかも本来悪魔が解除する事ができない勇者の施した罠を掻い潜って魔王の魔力が盗まれている。この事態を受けて我らも策を考えた」

「その策とは何でしょうか教皇様?」


 サイグリューの言葉にレイノスはこの場に集められた人たちを代表して質問した。


「簡単な事だ。ライエール伯爵領とオルタニア子爵量はこのヒストリニア王国の南西にある。その南西の領地の端から中央に向かって魔王の魔力を封じ込めた魔石が盗まれている。次に盗まれるであろう魔王の魔力が保管されている場所はライエール伯爵別邸だ。そこを重点に勇者を配置して悪魔の襲撃に備える」


 サイグリューは立てた策をレイノス達に話す。


「もし目星をつけた場所以外で悪魔達が魔王の魔力を盗むために襲撃された時はどうするのですか?」

「その時のために王宮直轄の魔術師を読んだ。王宮直轄の魔術師には万が一のためにあらかじめ魔王の魔力が保管されている場所の近辺に転移魔術を施してある。もし目星と違う場所に襲撃されてもすぐ移動できる準備はしている」

「そういう事でしたか」


 レイノスの質問にサイグリューは事前にしていた転移魔術を話す。


「なので勇者達はライエール伯爵別邸に直行し警備をしてもらう。他の上級騎士達は他に魔王の魔力を保管している場所で悪魔達が襲撃した時のために待機、王宮魔術師は転移魔術の維持と展開を、王宮神聖術師は悪魔達との戦闘で負傷者の治療を命じる」


 サイグリューが策を伝えると再びレイモンド王が口を開いた。


「聖母教皇の話した策で悪魔達の襲撃に対抗する、これで今回の魔王再討伐会議を終わる」

お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

二話連続投稿の二話目です。

明日も投稿しますので良ければ次も読んで頂けると嬉しいです。

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