第十七話(裏)
シャルは魔王のいる部屋を出て悪魔が集会していた部屋に繋がる階段を上った。
階段を上り切ると黒い部屋に戻ってきた。先程までいた悪魔達が今もそのまま部屋にいた。
「あなた達待ってたの?」
悪魔達の方を見てシャルは話した。
「もちろんだ。魔王様が直々に顔を合わせて人間と話すなど前代未聞だからな」
シャルの質問にシグマが答えた。
「それでシャルロット。先程まで名前で呼ばず貴公と呼んでいた事謝罪する」
シグマは小さな体で深々と頭を下げた。もう少しで床に額が付きそうだ。
「何で奥の部屋で話したことを知ってるの?」
シャルは魔王の部屋で話した魔王とタウのみが知っている事をシグマが知っていた事に驚いた。
「我々悪魔は記憶を共有している。それ故、タウが経験した魔王様の部屋での出来事も共有できているという事だ」
「なるほど」
道理で悪魔達それぞれのやり取りが手早い訳だ。
「私もあなた達悪魔の記憶も共有できるの?」
「アルファとオメガの力が完全に順応できた後ならできるはずだが、シャルロットの場合我々の記憶は共有できるがシャルロットの記憶は我々に共有できないだろう。シャルロットは元々人間だからな」
シャルの質問にシグマは丁寧に説明した。
「あなた達悪魔に聞きたい事があるの」
「何でしょうかシャルロット様?」
シャルの言葉にイプシロンが返事をした。
「アンリは今どこにいるの?」
シャルは一緒にここへ連れ来られた双子の姉アンリの居場所を聞いた。
「英傑の転生者ならこの空間の最奥部の部屋で眠っています」
イプシロンはシャルの質問に答えた。
「その英傑の転生者って呼び方も直して。アンリにもアンリエットっていう名前があるの。これから注意して」
シャルはアンリを英傑の転生者と呼ぶ悪魔達に名前で呼ぶように注意を促した。
「すみません。これから気を付けます」
イプシロンがそう言うと部屋にいる悪魔達はシャルの方を向いた頭を下げた。
「それと私はあなた達の名前を知らない。記憶が共有されるのに一年近くかかるからその間の時間で名前を覚えた方が早いから教えてくれると私も助かるわ」
シャルの言った言葉に頭を下げていた悪魔は驚きで頭を上げた。
「そんなに驚かなくてもいいでしょ。私はお養父さんを殺したことは許してないけど、私と同じ決意を持つ同志なんでしょ?それなのに私だけ名前を呼ばせるのは公平じゃない」
シャルは悪魔達を同志として認めた。そのシャルの発した言葉に悪魔達は少々困惑した。今まで人間から名前を呼ばれる事などなかったからだ。
「でもここで一気に名前を教えてもらっても覚えきれる自信がないから、これから会ったら名前を教えて?」
悪魔達はシャルの対応に心の中で困惑していた。
今まで悪魔達が出会ってきた人間は自分達を人に害をなす存在として敵対され討伐される対象だったのにシ、ャルの対応はまるで対等な仲間としてのものだった。
「わっ、分かりました、シャルロット様。今度私達悪魔に顔を合わせた時名乗りますので、覚えて頂けると幸いです」
イプシロンは戸惑いを隠し切れず言葉を詰まらせたがシャルの要望に応える約束をした。
「あと聞きたいことがあるんだけど、私に部屋はどこにあるの?」
「では我が案内する。ついて来いシャルロット」
シャルの質問にシグマが答えシャルの部屋へ案内する。
シャルが悪魔が集会する部屋を出るとそれと同時にタウが魔王の部屋に続く階段を上って現れた。
「何なのだ?あのシャルロットという人間の娘は」
「まるで我々と対等な存在として扱うような態度。今までこんな人間に会った事などない」
「あの少女の胸中が読めない」
「何か企んでいるのか?」
悪魔達はシャルがいないこの部屋でざわめいていた。
「タウはどう思います?」
イプシロンはタウにシャルの言動について質問した。
「シャルロットさんは魔王様であろうと臆せず自分の意志で動くと言ってました。私事ですがシャルロットさんの言葉は嘘偽りのないものだと感じましたよ」
「親の仇である私達にあの対応ができるシャルロット様なのですからタウの言っている事もあながち間違いでもなさそうですね」
イプシロンとタウはそんな会話をしているとプサイが二体の元へ歩み寄る。
「やはり奴の机に聖典が保管されていましたか」
タウの記憶を共有したプサイは魔王の部屋でのやり取りで机の中身が王宮からの依頼書と聖典が入っている事を知った。
「奴も聖典の間違いに気づいて独自に調べていたようです。しかし調べきれなかったようです。複数の聖典も最近手に入れたみたいです」
タウがエドワードが調べていた聖典の虚偽や不備についてしらべた内容を話す。
「私達の仕事は聖典の改竄箇所を調べて魔王様に報告する事です。シャルロット様が力に順応するまで私達はそちらに専念しましょう」
「そうですね。今の私達にはそれしかできませんからね」
悪魔達はプサイとイプシロンの会話に賛同すると、タウが黒の外套にしまっていた聖典を取り出した。
タウは手に取った聖典を空中に投げた。その瞬間空中に舞う聖典に立体の魔法陣が展開された。聖典は展開された立体の魔法陣の中に漂い出し、た。漂い出した聖典から光る文字列が立体の魔法陣から溢れ出した。溢れ出した光る文字列を悪魔達は床に羊皮紙をばらまき床中に羊皮紙を敷き詰める。
溢れ出した光る文字列が床に敷き詰められた羊皮紙に触れると、羊皮紙に吸い込まれるように光る文字列が消えて代わりに羊皮紙に文字が書かれていく。
「書き換えられているとはいえ流石聖典です。解読するのにかなり時間がかかりそうですね」
悪魔達が合同で展開した立体魔法陣で聖典を解読しているとタウが呟いた。
「これだと軽く半年はかかりそうですね」
「シャルロットさんが力に順応する前に解読できるだけ良しとしましょう」
愚痴をこぼすイプシロンにプサイは宥める。
一向に続く聖典の解読を悪魔達は立体魔法陣を展開し続けて行った。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
二話連続投稿の二話目です。
最近の冷え込みでこの冬初めて暖房を入れました。
私も毎日投稿ができるように健康に気を付けますので皆様も健康には十分に気を付けていきましょう。
明日も投稿しますので気が向いたら読んでください。