最終話
「ここなら大丈夫か」
ノクトは王宮の外の誰もいない広場に到着した。
広場の中央へ到着したノクトは懐から瓶を取り出した。
瓶の中には淡く輝く光の粒子が詰まっていた。
シャルから受け取った悪魔達の魂だ。
ノクトは千がされている瓶の蓋を開けると光の粒子は瓶の口から外へ出て周囲に漂い出した。
漂い出した光の粒子は周囲に広がると空中で収束し始める。
収束した光の粒子は淡く輝く光の塊になる。
『久しいな。ノクト』
光の塊から頭に直接届く声が響くとノクトは光の塊を見る。
「やっぱりしぶといな。魔王」
ノクトが光の塊——魔王を見ると、魔王はノクトの頭の中に直接語り掛ける。
『その考えは間違っている。我はノクトの手で確実に討たれた。今語り掛けているのは我の眷属の魂を介して、いわゆるあの世から語っていると言えば理解してもらえるか?』
「さすがすぎて逆に呆れるぜ。そこまでして何か俺に話があるのか?」
魔王は現状の現象を説明をすると、ノクトは呆れた表情を浮かべて息を吐いた。
『我と傍観者が討ち滅ぼされた今、もう勇者達に立ちはだかる敵はいなくなった。これで世界は平和になった。ノクト達には感謝している』
「ここまで魔王の策通りに事が運んだって事か。それに関しちゃ癪だが、こっちも感謝はしている」
魔王とノクト、互いに感謝を口にするとノクトは口を開く。
「魔王。最後に訊きたかったことがある」
『何だ?』
光の塊の輝きが徐々に弱くなっていくとノクトは最後に尋ねる。
「魔王。あんたが人間だった頃の名前は何て言うんだ?」
ノクトが尋ねた何の変哲もない他愛ない質問に光の塊の魔王は一瞬間が開いた。
『なぜ我の人間だった頃の名を知りたいのだ?』
「魔王にはこれまで大事な人を危険に晒された。殺された人もいる。そしてあんたの血族というだけで、人から疎外された事もあった。本当なら清々したんだろうけど、今はこう思う。あんたの血族でなければ俺はとっくに死んでた。それにあんたがいなかったら傍観者も打ち滅ぼせなかった。だから今ではあんたの血族だった事に感謝している」
「……」
ノクトが初めて魔王に感謝を意を伝えると魔王は戸惑いからなのか黙ってしまった。
「だからあんたの子孫として、戦友としてあんたの本当の名前を知る義務があると思った」
『……そうか』
ノクトの意志の籠った言葉に魔王は間をおいて言葉を紡ぐ。
『どうやら我もここにいる限界がきたようだ。今更我の本当の名を知る人がいなくなっても良いと思っていたが、最後にノクトに知ってもらって見送られるのも悪くない』
光の塊の輝きが徐々に弱くなっていくと魔王は自身の存在の消失を悟る。
『我の名は——』
徐々に輝きが霧散する中、光の塊の魔王は自身の名を言葉にした。
言葉にして自身の名を言葉にすると光の塊は空中で霧散していき。光の塊は光の粒子に変わった。
光の粒子は外に吹く風に乗って空高く飛ばされていった。
「じゃあな、——」
了
お疲れ様です。
最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。
これまでほぼ毎日投稿してきましたが、初めての投稿作品を無事完結することができたのも読者の皆様のおかげです。
また別の投稿作品で出会えたら幸いです。
tawshi