第三十四話(表裏)
空中で縦横無尽に動き回る魔王と魔力のみの傍観者の元へ飛行するシャルは手元から魔法陣を展開した。
展開された魔法陣から光の矢が顕現するとシャルは魔王の後を追って空中を移動している魔力のみの傍観者に向かって光の矢を放った。
シャルの放った光の矢は瞬く間に魔力のみの傍観者の元へ飛んでいき射貫く——はずが光の矢は魔力のみの傍観者をすり抜けた。
『さっきも言ったが今の私にそのような攻撃は通用しない』
「そうね。けどこれならどうかしら」
シャルは傍観者の言葉に含みのある笑みを浮かべた。その笑みに傍観者はすり抜けた光の矢の進行方向先を見た。
光の矢が突き進んだ先には魔王が聖剣を構えていた。
魔王の構えている聖剣は今までになく力強い光を纏っていた。
『最初から私を射る目的で放ったわけではなかったというわけか』
「その通りよ」
シャルが放った光の矢は聖剣を活性化させるための強化の矢、
攻撃の効かない今の傍観者にとってシャルの放つ魔術など何も防ぐ必要などない。その意表を突いて強化の矢を傍観者の進行方向先にいる魔王の握っている聖剣に命中させた。
『だがいくら魔王の聖剣を活性化させたところで今の私には何の意味もなさない』
「それはどうかしら?」
傍観者がシャルを見ているとシャルの手には既に魔法陣を展開してもう一本光の矢を顕現していた。
顕現した光の矢をシャルは地上にいるノクトの方へ向けて放った。
シャルが放った光の矢をノクトは構えている聖剣で受け止めた。
光の矢を聖剣で受け止めると光の矢はすぐに光の粒子となり聖剣の刀身に吸収される。
光の粒子を吸収した聖剣の刀身んは力強い聖なる光を纏い出す。
「今よ!」
シャルは大きな声を出し合図をすると手元から魔力が収束したと思うや否や魔力が鞭のようにしなりながら傍観者の元へ伸びていった。
傍観者へ伸びて行く魔力の鞭は傍観者を絡め捕ろうと蠢く。
『だからこのようなもので私を——』
傍観者が呆れた声を漏らそうとしたその時、シャルの伸ばした魔力の鞭が魔力だけとなった傍観者を絡め捕った。
『何⁉』
シャルの魔力の鞭に絡め捕られた傍観者は驚きの声を漏らした。そして少しの間をおいて気付く。
傍観者をからめとったシャルの魔力の鞭の中にわずかながら傍観者自身の魔力が混入していた。
おそらく最後の体を鈍色の炎で焼き尽くした時、傍観者を捕えていた赤熱した鞭から傍観者の魔力をいつの間にか吸収していた。
そして魔力の鞭に混ぜ合わせた事によって魔力だけとなった傍観者に干渉して絡め捕った。
シャルが傍観者を絡め捕る間、魔王とノクトは聖剣に力を注いで刀身にそれぞれ金色の炎と漆黒の炎を纏わせていた。
そして次の瞬間、魔王とノクトはシャルの魔力の鞭に身動きが取れなくなった傍観者にへ詰め寄った。
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