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第三十三話(表裏)

『まさか、最後の体まで焼き尽くされるとは』


 鈍色の炎の中から溢れ出した膨大な魔力から直接頭の中に届く声が聞こえるとこの場にいる全員が鈍色の炎から溢れ出した魔力に目を向けた。


「体を壊されてなお魔力に思念を転写するとはな」


 魔王は魔力に思念を転写させた傍観者に向かって鋭い視線を向けながら悪態を吐く。


『それはお互い様だ。英傑の体を器にしている貴様に言われる筋合いはない。魔王』

「そうだったな。だが我をここへ連れてきたのはこの体が目的だからだろう?」


 傍観者の言葉に苦笑を浮かべてすぐに魔王は手元の聖剣を構えた。


『その通りだ。その器、私が頂く』


 傍観者が魔王の言葉に返事を返すと鈍色の炎から溢れた魔力は一直線に魔王の元へと移動した。

 魔力だけとなった傍観者が魔王の元へ飛んでいくと魔王は空中を素早く移動して魔力だけとなった傍観者から距離を取った。


 魔力だけの傍観者から避けると魔王は聖剣から漆黒の炎を傍観者に放つ。

 魔力だけとなった傍観者に漆黒の炎が触れる瞬間、漆黒の炎は魔力だけとなった傍観者をすり抜けてそのまま遠くへ飛んでいった。


「⁉」


 漆黒の炎を素通りした傍観者はそのまま突き進み魔王の元へ近付く。


「魔王様!お逃げください!」


 魔王に近付く傍観者の魔力に悪魔の一体が進行方向に割り込み立ちふさがった。

 立ちふさがった悪魔に魔力の傍観者はそのまま突き進み悪魔と衝突すると、傍観者の魔力に衝突した悪魔の体は瞬く間に灰と化した。


「っ⁉」


 目の前の光景に魔王だけでなく悪魔や勇者達も目を疑った。

 立ちふさがった悪魔が灰とかした直後、灰になった悪魔の魔力が魔力だけとなった傍観者に吸収された。

 直進する魔力の傍観者に魔王はとっさに空中を移動して躱した。


『これで分かっただろう?どれだけ貴様の眷属を盾にしようと私に殺される。そして私の力の肥やしとなるのだ。貴様たちがどれだけ攻撃しようが今の私には通用しない』


 傍観者の言う通り、魔王の漆黒の炎を素通りした時点で悪魔には魔術による攻撃は通用しない事を悟らされた。その上傍観者の魔力に触れてしまえば一瞬で体を灰に代えられ魔力までも吸収される。


 これでは復活の儀でも復活ができない。

 空中を素早く移動する魔王を後を付いていく傍観者の魔力へシルフィーは聖剣術の盾を顕現した。

 聖剣術の盾は魔力だけとなった傍観者を閉じ込めるように顕現するが、魔力だけとなった傍観者は聖剣術の盾をすり抜けた。


「これもダメですか」


 聖剣術の盾を顕現したシルフィーは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 聖剣術すらも通用しなくなった傍観者に苦悶の表情を浮かべる勇者達。

 ノクトも渋面していると空中に浮かんでいたシャルがノクトを一瞥した。


 シャルがノクトを一瞥するとノクトはふとここに到着する前の話を思い出す。

 一瞥してきたシャルの瞳はどこか覚悟の決まった輝きを宿していた。

 するとシャルは空中を素早く動き回っている魔王と傍観者の方へ飛行していく。

お疲れ様です。

本日も読んで頂き誠にありがとうございます。

これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。

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