第二十四話(表裏)
ファルコがノクトを治癒してからしばらく経つと、ノクトは目を開いた。
目を開いたノクトは体を起こして周囲を見渡した。
傍観者の手によって半壊した王宮は意識を失う前よりも倒壊していた。
「ようやく目を覚ましたか」
ノクトは傍から聞こえた声の方を振り返ると、そこには瓦礫が転がっている床に座っているファルコがいた。
「意識を取り戻したようで何よりです」
ファルコの傍にはシルフィーが瓦礫を背もたれにして座っていた。
「……傍観者は?」
ノクトは意識を失う前に戦っていたはずの傍観者の姿を探す。しかしノクトの視界には傍観者の姿はなかった。
「傍観者ならこの場から立ち去りました」
シルフィーはノクトの言葉に返事を返すと、ノクトは状況を理解した。
ノクトはふと全身を見ると意識を失う前にあった傷がいつの間にかなくなっていた事に気付く。
「傷は勇者ファルコが治癒した」
背中側から声がするとノクトは振り返った。
振り返った先にはラザフォードが床に座っていた。
ラザフォードの言葉を聞いたノクトは驚いた表情を浮かべてファルコを一瞥した。
「治癒を施して二時間は意識不明だったんだ。今回ばかりは勇者ファルコに感謝を言うべきだ」
ラザフォードはノクトが意識を失ってからの状況を説明した。
「こいつが?」
ノクトは驚きの眼差しをファルコに向けるとファルコは怪訝そうな視線をノクトに向けた。
「今は有事だ。一人でも人員は確保しておきたい。だから貴様を治癒した」
そう言うとファルコはノクトから視線を逸らした。
その様子を見たノクトは一瞬苦い表情を浮かべた。そしてすぐに表情を戻す。
「……助かった。感謝する」
ノクトは絞り出すような声でファルコに感謝を伝えた。
感謝を伝えたノクトの表情は若干苦い表情を隠し切れていなかった。
「まさか、貴様に感謝を述べられるとは思いもしなかった」
感謝を伝えられたはずのファルコも苦い表情を浮かべていた。
互いに苦い表情を浮かべた二人にシルフィーは咳払いをする。
「こんな時までいがみ合っていてどうするんですか?今は有事です。また敵の襲撃が来ないとは限りません」
シルフィーは眉間にしわを寄せて二人に注意をすると、ラザフォードは苦笑した。
そんな時魔法陣が床に展開されて光の柱が立つ。
勇者四人は一瞬で臨戦態勢を取り警戒する。
光の柱から人影が一つ現れた。
光の柱から現れた人影は黒の服と金色の髪をなびかせて勇者達へ歩み寄る。
光の柱から現れた人の姿を見て勇者四人は警戒を解いた。
「どうしたんだ?シャル」
魔法陣から現れたシャルはノクトの言葉に何も返さないまま勇者達の方へ進む。
そしてノクトの目の前まで近付いた。
「……ごめん」
シャルはぼそっと呟くとノクトの腕を掴んだ。
するとシャルとノクトの足元に魔法陣が展開された。
「⁉」
足元に展開された魔法陣から光の柱が立つとシャルとノクトを呑み込んだ。
光の柱に呑み込まれたシャルとノクトは魔法陣が消えると同時に姿を消した。
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