第十四話(裏)
傍観者の前に現れた魔王は腰に携えた聖剣を抜剣した。
抜剣した聖剣を魔王は聖剣の切っ先を傍観者に向けた。すると切っ先から漆黒の炎が顕現して収束する。
切っ先に収束した漆黒の炎を魔王は聖剣を振るい傍観者へ放った。
放たれた漆黒の炎は傍観者へ衝突して全身を包む。
「もうその炎は私に通じない」
傍観者は漆黒の炎に呑み込まれてなお涼し気な表情で魔王を見る。
全身を覆う漆黒の炎を傍観者は握っている剣に吸収させる。
漆黒の炎を吸収した剣の刀身は漆黒に染まっていく。漆黒の炎に焼かれていたはずの傍観者の体には火傷一つ付いていなかった。
「これまで私の体を焼き尽くしたこの炎、今度は魔王が味わってみるか?」
傍観者は漆黒の炎を吸収して刀身が漆黒に染まった剣を魔王に向かって振るった。すると漆黒に染まった剣から漆黒の炎が放たれて魔王の元へ奔った。
傍観者が放った漆黒の炎が魔王にぶつかると、魔王の体を漆黒の炎が覆った。
漆黒の炎に呑み込まれた魔王は先程の防火者のように火傷一つ付いていなかった。
「この炎は元々我のものだ。我がこの炎で焼き尽くされるわけがない」
そう言うと魔王は右手を伸ばした。
魔王の体を呑み込んだ漆黒の炎は魔王が伸ばした右手に収束していく。
右手に収束した漆黒の炎を魔王は右手を握り掻き消した。
右手を握り漆黒の炎を掻き消すと魔王は左手に握る聖剣を正眼に構えた。
聖剣を正眼に構えると魔王は傍観者の元へ一気に駆け寄った。
傍観者の間合いに詰め寄った魔王は構えた聖剣を傍観者へ斬りかかる。
魔王の斬撃を傍観者は握っている剣で受け止める。聖剣を受け止めた傍観者に魔王は鍔迫り合いになっている聖剣に力を込めた。
聖剣に力を籠めると聖剣の刀身と両手の紋章が力強く輝いた。
紋章が力強く輝くと聖剣から金色の炎が溢れ出す。
聖剣から溢れ出した金色の炎は鍔迫り合いになっている魔王と傍観者を覆った。
二人を呑み込んだ金色の炎は鍔迫り合いになっている傍観者の肌を焼いていく。
「その炎は⁉」」
漆黒の炎でも焼かれなかった肌が金色の炎で火傷を負っている事に傍観者は驚きを隠せなかった。
「我の奥の手の一つだ。まさかこんなところで使う事になるとはな」
金色の炎に呑み込まれながら鍔迫り合いをしている魔王は傍観者に対して火傷一つ負っていなかった。
奥の手を見せた魔王から傍観者はすぐに距離を取ろうとした。しかし傍観者の石とは別に体の自由が利かなかった。
「この金色の炎は封印の力を宿した炎だ。どれだけ動こうとしてもこの炎に包まれた状態では指一本も動かせない」
傍観者に説明する魔王は金色の炎に呑み込まれる中、鍔迫り合いになっていた剣から少し距離を取った。
魔王は傍観者から距離を取ると金色の炎に呑み込まれた傍観者の背後に回った。
「これで終わりだ」
そう言うと魔王は聖剣を傍観者の首めがけて一閃した。
聖剣を一閃すると傍観者の首が刎ね飛ばされた。
傍観者の首が胴体から離れると首の切断面から大量の血が噴き出した。
そして離れた首と胴体は力なく床に転がった。
お疲れ様です。
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