第十三話(裏)
駆け寄って間合いを詰めたシャルは構えた漆黒の剣を刺突する。
刺突される漆黒の剣を傍観者は握っている剣で受け流す。
刺突を受け流されたシャルは剣を持つ手とは逆の手を傍観者の体に触れた。
傍観者に触れた直後シャルの手から魔法陣が展開された。
展開された魔法陣が傍観者の体に広がると魔法陣から鈍色の鎖が顕現して傍観者の全身に巻き付く。
巻き付いた鈍色の鎖に傍観者は身動きが取れなくなった。
シャルはすぐに傍観者から距離を取ると床に漆黒の剣を突き刺す。
床に突き刺したと同時に傍観者の足元に魔法陣が展開された。
傍観者の足元に魔法陣が展開されるとシャルの周囲にいた悪魔達は展開された魔法陣を囲むように移動した。
移動すると悪魔達は自身の足元に魔法陣を展開する。悪魔達の足元に展開された魔法陣は傍観者の足元に展開された魔法陣と重なると、傍観者の足元に展開された魔法陣は一層強く輝き出した。
魔法陣同士が呼応して光の強度が増すと、シャルは床に突き刺した漆黒の剣を引き抜き切っ先を傍観者に向けた。
すると傍観者の足元の魔法陣から巨大な漆黒の火柱が立った。
「この火力ならあなたも無傷というわけにはいかないでしょ」
切っ先を傍観者に向けたシャルは先程の漆黒の炎よりもはるかに強い火力の漆黒の火柱を発現した。
シャルは火力を上げた漆黒の火柱に呑み込まれた傍観者が今度こそ焼き尽くされたと確信した。
「だから言っただろう。今の私にはこの炎では致命傷を与えられない」
「⁉」
シャルの耳元に聞こえた声にシャルは咄嗟に振り返った。
振り返った先には鈍色の鎖で身動きが取れなかったはずの傍観者が立っていた。
傍観者はすでに鈍色の鎖の拘束から逃れていた。その上漆黒の火柱アに呑み込まれたはずが火傷一つしていなかった。
その傍観者は振り向いたシャルの首を掴んだ。
「聖典に書かれていたのだろう?ノクトの魔力を吸収した私が魔王の根城に現れシャルや悪魔に殺される、と」
傍観者はシャルが読んだ聖典の原本の内容を口にし出す。
「だが、一つ失念している。聖典に書かかれている未来の出来事は常に書き換わっている。つまりここでシャルロット達がここで私を殺すことも虚偽になる事もあるのだ」
傍観者はシャルの首を掴みながら悠然と語る。
それに比べてシャルは首を強く掴まれてまともに呼吸ができず、苦悶の表情を浮かべた。
首が閉まり徐々に顔色が青ざめていくシャルは首を掴む傍観者の腕を握り返す。
すると腕を掴んだシャルの手から漆黒の炎が溢れた。
「ノクトと同じ事をするか。だが今の私に効かないのは分かっているだろう?」
傍観者はシャルの首を掴む手の力を一層強くすると傍観者の腕から血が噴き出した。
シャルを掴んだ傍観者の腕が八つ裂きになっていた。
「ここまで同じだとむしろ感心してしまう」
傍観者はシャルの首を絞めていた腕の力が抜けてシャルを放した。
シャルは傍観者から解放されると締め付けられていた気道が広がり咽る。
「やっとお出ましか。魔王」
傍観者は背後を振り返った。
振り返った先には金色の髪と漆黒の服を着た少女の姿が映った。
「前の戦いぶりか、傍観者」
お疲れ様です。
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