第十三話
閃光が消えていくと傍観者の視界に広がるのは王宮が瓦礫と化した情景だった。
傍観者は瓦礫と化した王宮に倒れているノクト達を見下ろした。
「……ッ」
傍観者の瞳に映るノクトは床に倒れていた。
ノクトは体中に奔る激痛に耐えながら再び立ち上がろうとするが、尾も用に体を動かせずにいた。
「これだけ傷を負ったのだ。いくら魔王の血族と言えど動けまい」
空中に浮いている傍観者は徐々に降下して勇者達の元へ近寄る。
傍観者が地面に着地すると目の前に倒れているノクトに歩み寄る。
「ノクト、私が手に入れるはずだたものを返してもらうぞ」
そう言うと傍観者はノクトの頭を掴んだ。
傍観者はノクトの頭を使うとノクトを頭から持ち上げた。
ノクトを掴む握力はノクトの頭蓋骨を軋ませるくらいの怪力で、ノクトは声にならない悲鳴を上げる。
するとノクトの頭を掴む手から傍観者の手に魔力が吸われていく。
ノクトは体中から吸われていく魔力と体中に蓄積した激痛に抗い、傍観者の腕を掴んだ。
すると傍観者の腕を掴んだノクトの掌から漆黒の炎が点火された。
「まだ悪あがきはできるみたいだな。だが——」
傍観者はノクトを掴んでいる手から点火された漆黒の炎を見るとノクトの頭を強く握った。
ノクトの頭がきしむほどの力にノクトは悲鳴を上げた。そして点火された漆黒の炎は跡形もなく消えた。
「——今のノクトに私を倒せるだけの力は残ってないだろう?」
痛みに悶えるノクトに対して傍観者は平坦な様子でノクトの魔力を吸っていく。
魔力を吸われているノクトはついに掴んでいた傍観者の腕が離れてしまった。
「もう握り返す力もないか。それならこれで終わりにしよう」
傍観者はノクトを掴んだ手とは逆の手に魔法陣を展開した。
展開された魔法陣から漆黒のラ身なりが火花を散らす。
傍観者の手から散る火花をノクトの方へ放つ直前、ノクトを掴んでいた傍観者の腕から血が溢れた。
「っ⁉」
傍観者の腕から血が溢れると、傍観者の腕が切断されていた。
傍観者は周りを見ると地面に倒れている勇者の中でファルコが聖剣の柄を握って傍観者を睨んでいた。
「他の勇者を過小評価していたようだ」
傍観者は切断された腕を逆の手で押さえた。掴んだ手から魔法陣を展開すると、血が溢れる腕の切断面が止血した。
「まあ、今回の目的は果たせた。それでは失礼する。勇者達よ」
そう言って傍観者は足元に魔法陣が展開されて光の柱が立ち呑み込まれた。
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