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第十話(裏)

 通路を開けて進んでいくと探知魔術に今までと違う反応を示す。今までの部屋には一部屋ごとに通路を開く仕掛けが一つだったが探知魔術で探知される仕掛けが両手で数えきれない程探知された。


「やっぱり」


 シャルの予想していた通りの状況になった。


 奥へ進んでいけば通路を開閉する以外の仕掛け——罠が仕掛けられているはず。

 そして罠がある部屋程今閉じ込められている建物の大事な部屋、もしくは外への出入り口の可能性が高い。


 シャルは再び探知魔術を起動する。


 魔法陣が浮かび上がり天井をすり抜け展開される。展開された魔法陣が光の粒子に変わり天平に展開されている魔法陣に収束する。収束した光の粒子が霧散すると掌の魔法陣の上に広がっている部屋の見取り図に変化が起きた。


 今いる部屋のいくつも仕掛けられた仕掛けを探知した青い点が消えていき青い点が一つになる。


「よし」


 シャルの目論見通りになった。

 シャルは先程まで探知していた部屋に仕掛けられた仕掛け全てから、前の部屋に仕掛けられた通路を開閉する仕掛けに探知対象を変更した。


 探知魔術の欠点は探知する対象を自身が把握できていないと先程シャルが『周りにある部屋全て』や『部屋に仕掛けられた仕掛け全て』のような漠然とした対象しか探知できない。しかしシャルは先程の部屋で通路を開閉する仕掛けを実際に見て対象として把握した。


今まで仕掛けられた通路を開閉する仕掛けを実際に見て把握したシャルだから罠と通路を開閉する仕掛けと選別できた。


 シャルが探知した通路を開閉する仕掛けに触れた。

 夜空のような風景の部屋に穴が開き新たに通路が開かれた。


 シャルは開いた通路を通り次の部屋に向かった。

 通路を進み次の部屋に足を踏み入れると先程とは少し違う光景が広がっていた。


 部屋の広さもそうだが、星のように散りばめられた魔力が宿った宝石は前の部屋と同じだが散りばめられている宝石の量が違う。


 先程までの部屋は夜空で見える光の強弱様々な星が斑に広がっていた。しかし今いる部屋は散りばめられている宝石が銀河系の星々のように一点に渦を巻きながら収束して見えるよう埋め込まれている。

 まるで夜空を超えて宇宙の中に漂っているような錯覚を覚えてしまう。


 シャルは探知魔術で探知した魔法陣を見た。

 魔法陣に広がる部屋の見取り図にはシャルが今いる部屋にある部屋に設置されている通路を開閉する仕掛けが部屋の壁と天井の四方八方に五つ設置されていた。


「どうしよう……」


 通路を開閉する仕掛けが五つ。その仕掛けをどうしたら通路が開閉されるのか分からない。設置された仕掛けをただ一つずつ触れば良いのなら問題はないが、設置された仕掛けが規則的に触らないといけない一つの規則性があると、この部屋に初めて入ったシャルにとってこの部屋の通路を開閉する仕掛けの規則性など分かるはずもない。


 もし規則性を間違えて触れば何が起こるかわからない。最悪ここで自分が死んでしまうようなことが起きてしまう可能性もある。

 道半ばで八方塞がりになったシャルは部屋の中央で立ちつくす。


「プサイの奴、獲物を自由にするとは」


 突然、シャルの後ろから底抜けに低い声が聞こえた。

 シャルは後ろを振り返ると黒の外套を羽織ったシャルより背の低い身長で人の顔とは似ても似つかない異形の顔をしている人物が音もなくシャルの後ろに立っていた。


 シャルはこの人間とは一線を画した異形の顔には見覚えがある。プサイと名乗った悪魔と顔と羽織っている炎とも煙とも捉えられる外套が似ていた。おそらくこの人物も悪魔なのだろうと認識する。


「あなたは誰?」


 シャルは恐る恐る悪魔であろう人物に尋ねた。


「我はシグマ。貴公をここまで連れてきたプサイと同じ悪魔だ」


 やはり悪魔。シャルの目測は当たっていた。


「それにしてもただの人間がよくここまで来れたものだ。部屋同士を繋ぐ通路は隠していたはずだが?」


 シャルに話しかけるシグマはシャルが今いる部屋に来ることを予想していなかったらしい。

 シグマの重低音の声と相手を威圧するような雰囲気にシャルは一歩後ずさったがここで気圧されてはいけないと感じシャルは毅然とシグマの質問に返答した。


「隠すなら私を閉じ込めてた部屋を仕掛けが一つだけしか設置していない部屋にしたのが失敗だったようね。私も少しは魔術が使えるのよ。大前提として私を拘束していない事が失敗よ」

「拘束していなかったのは貴女がここまで来れるか確かめたかったからなんです。試すようですみませんでした」


 部屋の隅から聞き覚えのある声が聞こえた。

声のする方を振り向くと、異形の顔を持った枝のようにか細い手足の黒い外套を羽織った悪魔——プサイがいつの間にか立っていた。


「貴女がここまで来るまでの一部始終を見させてもらいました。ただの探知魔術だけでここまで来るのには感服いたしました。ノクト様程大量の魔力を持っておらず探知範囲や精度が高いわけではないですが探知魔術の使い方に関してはノクト様より上手ですね」


 プサイが言った言葉の中にシャルは引っ掛かるものがあった。


「何でノクトの事知ってるの?」


 シャルは甲冑の男に襲われた時にプサイが甲冑の男を殺した時が悪魔との初めての出会いだった。一緒に暮らしてきたノクトもおそらく悪魔とは面会した事はないはずだ。なのにノクトの事を知っている事に強い疑問を抱いた。


「知っているに決まっている。我が主である魔王様の血族の末裔だ」

「どういう事?」


 シャルはシグマが言った言葉にも疑問を抱いた。今まで聞いた事のない魔王という言葉とその血族がノクトである事に思考が繋がらなかった。


「この話は奥でしましょう」


 プサイが話を一度断ち切ると部屋の中央へと歩み出した。


「この空間は本来私達悪魔のみが部屋の出入りを許された場所なんです。だからただの人間如きがこの空間の部屋の出入りなど不可能という事です」


 プサイが喋っているとプサイの外套から炎のように揺らめく腕に似た形状の黒い触手を複数伸ばす。

 触手が部屋の四方に伸びていき星のように散りばめられて埋め込まれた宝石を触った。


 シャルが先程探知して通路を開閉する仕掛け五つをプサイは一斉に触った。すると部屋に新しい通路が開いた。


「この部屋の通路を開くには五つの通路を開閉する仕掛けにほぼ同時に同じ魔力が触れないと起動しません。だからこの部屋は人間が出入りすることが不可能というわけです。闇雲に一つずる触れようものなら仕掛けが罠となり命はなかったでしょうね」


 シャルの予想通り何が起こるか分からない状態で行動しなくて良かったと心の中で安堵する。


「では通路が開きました。入ってください」


 プサイは新しく開いた通路を指差しシャルを誘導した。シャルは探知魔術の魔法陣を見ると次の部屋には仕掛けが全くなかった。


「警戒する必要はありません。私達も貴女と話がしたいと思ってました」

「私達?」


 シャルはプサイの言葉の一部を繰り返す。


「この先の部屋は私達悪魔が集合しています。そして私達は貴女と話がしたい」


 プサイは真剣な声音でシャルに話す。

 この先何が起こるか分からなかったがここで逃げるにも悪魔二体がいるこの状況で慣れない部屋を逃げ切るなど不可能だ。


 シャルはプサイの言葉通り新しく開いた通路を通った。


お疲れ様です。

tawashiと申す者です。

今回も読んで頂き誠にありがとうございます。

これからも続けて投稿しますので良ければこれからも読んで頂けると幸いです。

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