第八話
王宮に帰還して数日。
ノクトは今まで手に入れた聖典の原本を複写していた。
今まで世に出回っている虚偽が記されている聖典の回収と原本の布教のために勇者がそれぞれ行動をしていた。
ラザフォードとファルコは世に出回っている聖典の回収を。シルフィーは新たな聖典の布教のための準備を、そしてノクトは聖典の原本の複写をしている。
勇者の力がなければ解読できない原本を複写できるのはノクト達勇者しかいない。
ノクトは自室にてこもりきりで原本の複写をしている。
「……疲れた」
ノクトは机に座ったまま伸びをした。
本日の丸半日分の時間を原本の複写に費やしたノクトは体中が強張っていた。
ノクトは眉間を押さえて目の疲れをほぐしていると部屋の外からノックの音がした。
「失礼します」
部屋の外から声が聞こえるとノクトは「どうぞ」と声を返した。
ノクトの返事を聞いた声の主はノクトの部屋の扉を開けた。
「お茶を用意しました。先生」
部屋を開けた声の主であるホホはお茶の準備をしてノクトの部屋に入った。
「ありがとう。ホホ」
ノクトは部屋に入ったホホにお礼を津¥耐えると、ホホは近くにある机の上にお茶の道具一式を置いた。
ホホは机の上に置いたお茶の道具を使いティーカップに紅茶を注ぐ。
「先生。どうぞ」
ホホはお茶を注いだティーカップをノクトに渡した。
ホホからお茶の入ったティーカップを受け取るとノクトはお茶を飲む。
お茶を飲む直前、ほのかに甘みのある香気が鼻を抜ける。
飲んだ後には心が落ち着く優しい味わいと目の覚める清涼感が鼻腔を通った。
「このお茶、ホホがブレンドしたのか?」
ノクトは今まで味わった事のない味と香りのお茶にホホへ質問をした。
「はい。疲労回復や心を休める効果のある茶葉をあたしなりに調合しました」
ホホがお茶の事に関して説明をするとノクトはもう一度お茶を口に含む。
確かに疲労回復やリラックス効果のあるハーブが入った香りが混じっている。しかしそれだけではお茶の味としては物足りない。それとは別にノクトが飲み慣れている茶葉をブレンドして味の補強をしたのだろう。
「美味いよ。わざわざ俺の好きな茶葉をブレンドしたのはホホのアイディアか?」
「はい。さすがに薬湯だけでは味と香りが物足りないですから」
ホホはノクトの質問に笑顔で肯定すると机の上からお皿を一つノクトの前に持ってきた。
「これは?」
「あたしが作ったお菓子です。お茶のお供にあればと思いまして」
目の前に出されたお皿の上にはほのかに狐色に焼かれたお菓子が並んでいた。
ノクトはお皿の上に並んでいるお菓子の一つを手に取ると、手に取ったお菓子を口に運んだ。
口に箱田お菓子はサクッとした食感と芳しい香りが口いっぱいに広がる。
ノクトは咀嚼したお菓子を呑み込んだ後お茶を口に含む。
お菓子を咀嚼して吸い取られた水分が口に含んだお茶によって戻っていく。
「美味しいな。このお菓子。しかもお茶と同じハーブの抽出物を練り込んである。ものすごい手間暇だっただろう」
「気付いてくれて嬉しいです」
ノクトはお菓子に込められたホホの手間暇を口にするとホホは尻尾を振って嬉しそうに返事を返した。
「それより、作業の方は順調ですか?」
ホホはノクトの前の書斎机を一瞥して尋ねるとノクトは口に含んでいたお茶を飲んだ後答える。
「ああ、やっと半分複写し終えたところだ」
ホホの質問に答えるとノクトは息を吐いた。
「これから起こる未来の部分は書かなくてもいいとしてもあと半分複写するには時間がかかるな」
「やはりそうですよね」
ホホは心配そうな表情を浮かべてノクトを見る。
ここ数日付きっ切りで聖典の原本を複写しているノクトのメモとは隈が若干浮かんでいた。
「少しは肩の荷を下ろして休んだ方がいいですよ。先生」
「それはそうなんだが、一刻も早く聖典の原本を世に広める必要がある。それに他のみんなも休む暇を惜しんで動いてくれている。俺だけが休むのはフェアじゃない」
ノクトは心配するホホにそう言うと再び書斎机の前に向いて筆を走らせる。
「お茶とお菓子、ありがとうなホホ。美味かったよ」
ノクトはホホにお礼を言うとホホはお茶の片付けをしてノクトの部屋から出る準備をする。
「どういたしまして。それではあたしはこれで失礼します」
「分かった。心配してくれてありがとな。ホホ」
部屋から出る直前、ノクトはホホに感謝を伝えると、ホホは小さくお辞儀をして部屋から出て行った。
お疲れ様です。
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これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。