第九話(裏)
シャルが目を覚ますと目の前に広がるのは夜空のような光景だった。
広大な黒い部屋には星のように輝く宝石が埋め込まれている。
まるで夜空の中央に浮かんでいるような感覚を覚える空間の部屋に一人、シャルは寝転んでいた。
「どうしてここに?」
シャルはさっきまで家にいたはずなのにと頭を回転させてこの状況について把握しようとする。そして意識を失う前に起こった出来事を思い返した。
甲冑の男性が勝手に家の中に侵入して家の中を物色した。
甲冑の男性の粗暴を妨害するも非力な自分は成す術がなかった。そして書斎に入ろうとした時、扉の取っ手を掴んだ途端掴んだ手が燃えだした。
甲冑の男性は書斎の扉の仕掛けについて訊いてきたが自分にも分からなかった。その事を無視して甲冑の男性は扉の仕掛けについての秘密を吐かないと殺すと理不尽な選択を突きつけた。
しかし甲冑の男性は自分を殺そうとした直前後ろから急所を剣で突かれた。
後ろから突いたのは自身を悪魔と名乗るプサイという人物だった。その後自分を舐め回すように見た後甲冑の男性の頭を踏み潰し脳天を割った。
その後の記憶が曖昧のまま今の状況に至る。
シャルはそこまで思い出したがそれとこの状況に結びつかなかった。
プサイという人物に攫われたとしてもシャルが拘束されていないのに疑問が浮かんだ。これでは意識が戻った後好き勝手に移動されてしまう。
「まずここから出ないと」
シャルは部屋の様子を観察した。
黒い部屋に斑に埋め込まれた宝石が目に入るが肝心なものがこの部屋にはなかった。
出入り口となる扉がなかった。
シャルは部屋を見渡すと壁に埋め込まれた宝石以外に何もないのに再び疑問が浮かんだ。どうやってこの部屋に入ったのかそれも分からなかった。
シャルは立ち上がり部屋の中を散策した。
黒い壁に埋め込まれた宝石は大小様々で宝石の色も千差万別だ。しかし宝石全てにシャルでも感じ取れる高濃度な魔力が宿っていた。
天井を見ると壁に埋め込まれていた魔力が宿った宝石が同じように斑に埋め込まれている。
「何もない」
シャルは今いる黒い部屋をくまなく散策したが、出入り口は存在しなかった。
「今まで実際に使った事ないけどこんな時こそのための力だ」
そう言うとシャルは両手を前にかざす。
シャルは今まで実際に試した事がなかった探知魔術を起動する事にした。
エドワードとの訓練で使用した事はあるがエドワードのように広範囲まで探知範囲を広げられなかった。良くても自分が視界に入る範囲しか探知魔術を展開できない。けど今はそれでいい。
この部屋以外に何かある事が分かればそれでいい。
シャルは周りを再び確認した。この部屋には魔術を起動するものはない。
かざした掌から魔法陣を展開した。展開された魔法陣は部屋の外まで広がりながら天井をすり抜けて上昇する。
魔法陣が天井の上まで展開されると魔法陣は光の粒子に変わり掌に収束していく。収束した光のの粒子は掌の上で再び魔法陣に戻り展開される。
「よし。成功した」
探知魔術は成功した。魔法陣の上には赤い点が青色に朧に光る箱に閉じ込められたものが浮かんだ。そして赤い点が閉じられた箱の周りには他の青色に朧に輝く箱がいくつも置かれていた。
シャルが探知したのは今自分がいる部屋以外の部屋だった。そして自分がいる部屋以外にも部屋がある。という事は他の部屋に移動する手段があるという事だ。
シャルは再び探知魔術を起動した。
起動した魔法陣は天井をすり抜けて展開される。
展開された魔法陣は光の粒子に変わり掌に浮かんだ魔法陣に収束する。収束した光の粒子が一瞬で霧散する。青く光る箱の隅に強く青色に点滅する箇所が新しく浮かんだ。
「やっぱりあったわ」
シャルが部屋の次に探知した物、部屋に隠された仕掛け全てを探知した。
シャルは探知した部屋に隠された仕掛けに近づいた。
魔法陣の上に浮かんだ青い点のあたりを探すと埋め込まれている宝石の中で一つだけ他の物と別の魔力が宿っているものを見つけた。
「これよ!」
シャルは仕掛けが施された宝石に触ると黒い壁に道が開いた。
シャルが予想した通り部屋同士を繋ぐ通路を開閉する仕掛けがあった。
シャルが二度目に探知した隠された仕掛けは部屋ごとに一つだけだった。部屋を開ける以外の仕掛けがあった時は厄介になると考えていたが通路を開閉する以外の仕掛けがなくて良かった。
シャルは開いた通路を通った。
次の部屋も壁や天井に魔力が宿った宝石がいくつも斑に埋め込まれている。
次の部屋に施された仕掛けも一つだけだった。シャルは一つだけ違う魔力が宿った宝石を触り見えなかった通路を開いた。
シャルは新たに足を踏み入れた部屋の仕掛けを見つけ次々と新しい通路を開いていく。
お疲れ様です。
tawashiと申す者です。
今回も読んでくださり誠にありがとうございます。
明日も投稿しますので気が向いたら読んで頂けると幸いです。