第十七話(表裏)
白い灰が地面に積もるとシャルは握っている剣を白い灰の上から地面に突き刺した。
「遅かったじゃない。こっちはもう傍観者を倒したわ。ノクト」
シャルは背後を振り返るとそこには先程までなかったノクト達勇者の姿があった。
「無事でよかった。シャル」
ノクトはシャルを視界に映してそっと胸を撫で下ろす。そして続けざまにノクトは言葉を発する。
「こっちも傍観者を倒した」
「それでここに転移してきたわけね」
シャルはノクトの言葉を聞いて勇者達がここへ転移してきた理由を察した。
ノクト達勇者は傍観者を倒した後、こちらへシャルとノクトは加勢しにきた。
「けどこの空間は私達の気配を完全に遮断していたはずよ。どうやってここを探知したの?」
シャルは気配を遮断する空間でノクトがどんな手段を使ってここを探知したのか尋ねた。
「それは我の魔力が共鳴したからだろう」
シャルが尋ねた質問にすぐ傍から魔王が答えた。
魔王は聖剣を鞘に納剣しながら答えるとシャルとノクトは魔王に視線を向けた。
「我の魔力とのつながりが強くなったノクトならこの空間の遮断性能を上回って我らを探知できる。だからここへ転移できたのだ」
「魔王の言う通りだ」
魔王の説明にノクトは肯定の言葉を返した。
「それはそうと、傍観者はあと何人いるんだ?」
ノクトは根本的な質問を魔王に投げかけた。
「それは分からぬ。何しろ我らは傍観者の情報が少なすぎる」
魔王は表情には出していないが声音に刺々しい腑に気が混じっていた。
「勇者達が倒した人数を含めて傍観者五人を倒した。これだけ強靭な肉体を複製するには時間や労力がかかる。おそらく大量に同じ体をつくることはできないだろう」
魔王は自身の推測を口にするとノクトは小さく頷く。
「確かにここまで強靭な体を複製するには時間的にコストが高い。魔王の言うようにたくさんは予備がないはずだ」
ノクトは魔王の言葉に賛同すると勇者の輪からシルフィーがノクト達の方へ歩み寄った。
「皆さんいいでしょうか?」
シルフィーが魔王達に声をかけると魔王とシャルはシルフィーに視線を向けた。
「魔王。あなたに訊きたい事があります」
「何であろうか?勇者シルフィー?」
シルフィーが唐突に魔王へ質問を投げかける。
「先程から話を聞いている限り、残りの傍観者のアジトの場所を知っているのですか?」
シルフィーの質問、傍観者のアジトの場所について尋ねると魔王は口を開く。
「まだ全てを把握できているわけではないがある程度は把握している」
シルフィーの質問に魔王は答えるとシルフィーは続けて質問を投げかける。
「もう一つ。悪魔から渡された聖典にはかつての仲間であった傍観者に裏切られたと記されていました。そこで気になったのですが、傍観者の本当の目的は何か知っていますか?」
シルフィーは前から気になっていた事を魔王に質問した。
傍観者は暇つぶしとして勇者と魔王を敵対させていたが、シルフィーはそれ以外にも目的があって行動しているようにも見えた。
「それは我にも分からぬ。何しろ傍観者は昔から得体の知れない奴だったからな」
魔王は傍観者の考えを把握できていないのか、はっきりと断言しなかった。
「そうですか。では最後の質問です」
シルフィーは最後に視線を魔王の目に向けた。
「魔王。なぜ今まで敵だった私達勇者を信用できるのですか?」
シルフィーは今まで引っ掛かっていた思いを口にした。
「そんな事か。そんな事決まっている。我は最初から勇者を敵視していない。それだけの話だ」
魔王はシルフィーの質問に口にするとシルフィーだけでなく、後ろにいるファルコとラザフォードも目を大きく見開いた。
「それは私達を敵にすら満たない有象無象という風にとらえていたという事ですか?」
「いや、我は勇者の力を評価している。我の敵は傍観者だ。それを忘れないでほしい」
シルフィーの棘のある質問に魔王は訂正するように言葉を紡ぐ。
お疲れ様です。
本日も読んで下さり誠にありがとうございます。
これからも投稿していきますので良ければ次話も読んで下さい。