第十四話(表裏)
光の柱から勇者達が出ると視界には純白の空間が広がっていた。
勇者全員が魔法陣のド途に出ると舌に描かれていた魔法陣が消失した。
「ここが敵のアジトですか」
シルフィーは周囲の光景を見た後、自分達がまさに敵の懐へ入った事を再確認する。
周囲を見ていた突如、目場から黒い炎が立ち上り漆黒の火柱が数本生まれた。
漆黒の火柱が立ち上ると火柱の中からいびつな人型が現れた。
「お待たせしてすみません。勇者の皆様」
漆黒の火柱から現れた悪魔は勇者達を見て挨拶をした。
「いや、俺達も今ここへ来たところだ」
悪魔が遅れた事に謝罪するとノクトは自身たちも今しがた到着した事を伝えた。
「ここがアジトか。なんか殺風景だな」
ラザフォードは周囲を見回した後、周囲の光景の感想を述べた。
ラザフォードの言う通り純白の空間には何一つものが置かれておらず、言葉通り『殺風景』だった。
「気を引き締めて下さい。今は敵の懐の中、何が起きるか分かりません」
悪魔の一体が注意喚起をすると悪魔達はすでに光の剣を顕現して戦闘準備を取っていた。
勇者達は悪魔の言った通り即座に聖剣を抜剣して戦闘準備を取った。
『やはり来たか。待ちくたびれたぞ』
臨戦態勢を取っている勇者達と悪魔達に空間のどこからか声が聞こえた。
声が勇者側と悪魔側の両方に届くと突如、頭上から巨大な光の球が降り注いでくる。
「⁉」
シルフィーは咄嗟に抜剣していた聖剣から聖剣術を発動すると自分達を覆うように聖剣術の盾が顕現した。
シルフィーが顕現した聖剣術の盾に光の球達が衝突すると激しい爆発音と共に聖剣術の盾の外側に爆風が吹き荒れた。しかしシルフィーの聖剣術の盾の内側にいる勇者達と悪魔達は爆風に巻き込まれなかった。
『これだけの数の攻撃を容易く防ぐとは。流石は勇者シルフィー。だてに勇者を名乗ってはいないな』
純白の空間から聞こえる声はシルフィーの聖剣術に称賛していると純白の空間のどこからか足音が聞こえた。
「やっと姿を現したか。傍観者」
勇者達と悪魔達は足音が聞こえてくる方を見るとそこには純白の服を羽織った純白の人物——傍観者が姿を現した。
「ようこそ。私の根城の一つへ。最初から手荒い歓迎ですまない」
傍観者は言葉とは裏腹に全く悪びれもしない飄々とした表情を浮かべていた。
そんな傍観者が姿を出すとすぐさまにファルコは聖剣n切っ先を傍観者に向けた。
聖剣の切っ先から光の渦が生まれ一筋の収斂された光の線が傍観者に向かって放たれた。
傍観者はファルコが放った光線を一切避けるkとなくそのまま立っていると光線は傍観者の体を貫いた。
切っ先から放たれた光線が傍観者の胴体を貫くとファルコは切っ先の方向を変えた。
切っ先の向きを変えると光線は光の刃となって傍観者の胴体を切った。
しかし傍観者の胴体から血が垂れることなく白装束だけが斬られた跡が残った。
「この程度の攻撃で私が斬られると思ったのか?」
「まさか。貴様がこの程度の聖剣術で死なない事は百も承知だ」
傍観者の煽りにも聞こえる言葉にファルコは淡々と言葉を返した。
すると傍観者の背後から悪魔とノクトが構えた武器を振り下ろそうとしていた。
ファルコが行った攻撃は陽動。つまり傍観者へ確実に急所を狙うための一手に過ぎない。
悪魔とノクトは自身が持っている武器に漆黒の炎を纏わせて傍観者の戦果に斬りかかる。
その寸前、傍観者の姿は途端に焼失した。
悪魔とノクトの攻撃が空振りに終わると傍観者はいつも間にか少し離れた所に姿を現した。
「忘れたわけじゃないはずだ。私にどれだけ攻撃しようと私の回復速度と時間制御能力について」
傍観者は溜息を吐いた後説教臭く勇者達と悪魔達に話しかけた。
「ああ、忘れてないさ」
孔隙が空振りに終わったノクトは傍観者を一瞥して言葉を発した。
「それにこれが俺達の限界と思わない事だ」
ノクトは含みのある笑いを浮かべた。その笑みに傍観者は眉をひそめた。
「まだ何か奇策を持っているというわけか」
傍観者はほんの少しだけ口角を上げると体から威圧的なオーラを放ち出した。
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