第六話
「魔王に報告したぞ」
ノクトは瞼を開くと魔王と精神世界で出会い、勇者全員が魔王の作戦に賛同した事を伝えた。すると目の前の勇者三人は顔を引き締めた。
「それで、アジトの場所は」
「教えてもらった。これでいつでも転移できる」
ノクトは攻め込む傍観者のアジトの場所を把握した事を伝えた。するとシルフィーは言葉を発した。
「そうとなれば早く準備をするべきです。まずは聖剣の修繕は必須ですね」
シルフィーは自身の聖剣を一瞥するとノクト、ファルコ、ラザフォードの腰に携えている聖剣を見た。
これまでの傍観者との戦いで聖剣を酷使したからか、勇者達の聖剣に宿る力が綻び見た目もところどころ傷が生じてした。
「聖剣については王宮の聖剣師に修繕を至急頼みます。それまでの間、皆様も戦いの準備をして下さい」
シルフィーはそう言うと、他の勇者三人はシルフィーに視線を合わせて頷いた。
集会の間での会議が終わるとノクトは王宮の外へ出て行った。
ノクトは王宮を出て王都の端へ向かうと、目的地へ到着した。
ノクトは目的地へ到着すると奥へ進んでいく。奥へ進むとノクトの目の前には地面に二つの文字が彫られた石が二つ置かれていた。
「しばらくお会いできず申し訳ありません、師匠。それと二人に手紙渡したぜ、ジジイ」
ノクトは目の前の石——墓標の前で手を組み目を閉じて小さく呟いた。
墓標にはエドワード・エインザークとレイノス・エルリックとそれぞれ刻まれていた。
ノクトにとって親代わりだった二人の墓標の前で手を組んだノクトはしばらくして目を開けて組んだ手を放した。
「二人の願いは叶いつつあります。聖典の原本の一部を手に入れました。おそらく傍観者が残りの原本を持っている可能性があります」
ノクトは墓標を見ながら語ると少し離れた所から物音がした。
ノクトは物音が聞こえた方向に振り向くとそこには懐かしい顔がいた。
「久しぶりだな。ホホ」
視界に映ったのはノクトの一番弟子である亜人の少女——ホホがいた。
「お久しぶりです。先生」
ノクトと目が合ったホホは深々とお辞儀をしてノクトに挨拶をした。
ホホが頭を上げるとノクトはホホに話しかけた。
「レイノスさんとジジイの墓の手入れ、ホホがやってくれたんだな」
ノクトは目が合ったホホの姿を見た。ホホの手元には墓の手入れ道具を持っていた。そこからノクトはホホがレイノスとエドワードの墓の手入れをノクトがいない間やっていたと予想した。
「はい。あたしにとっては大師匠にあたる人達の墓です。墓を綺麗にするのは当然です」
ホホはノクトを見ながら恭しく手入れをしていた事を伝えた。
「ありがとう。本来なら俺が墓の手入れをするべきなんだが」
「気にしないで下さい。先生は今まで忙しかったんです。あたしができるのはこれくらいしかありませんし」
ノクトは感謝を伝える。するとホホは腰を低くして返事を返した。
「それにしても会うのは久しいな。いつぶりだ?」
「そうですね。先生に聖剣を届けて以来ですから、だいたい一年くらいでしょうか」
「そうか。道理で大きくなったわけだ」
ノクトはホホを見ながらどこか懐かむような視線を向けた。
ノクトがホホと出会った時はホホは十四だった。そして約二年の月日が経過した。
成長期のホホが身体的に大きくなるのは当然と言えば当然だ。
「今は王宮の魔法薬研究所で働いてるって聞いたが調子はどうだ?」
「やっと仕事に慣れてきました。これも先生から魔法薬を教えてもらったからです」
ノクトとホホは世間話を始めると和やかな空気が流れ出す。
そして小一時間ノクトとホホは何気ない話をしたのだった。
お疲れ様です。
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