第八話(裏)
意識を失い床に倒れたシャルの周囲にプサイは魔法陣を展開していく。
シャルの倒れている床に魔法陣が展開されると魔法陣の中央から漆黒の粘性がある液体が広がり出す。
徐々に魔法陣が広がった範囲に粘性のある漆黒の液体が侵食していき漆黒の沼と化す。
シャルは魔法陣を侵食していく漆黒の沼にどんどん沈んでいく。そしてシャルが漆黒の沼に沈み切るとプサイは展開した魔法陣を消失させる。魔法陣が消失すると漆黒の沼が一瞬で跡形もなく消えた。
プサイは甲冑の男性が開けようとした書斎の扉の前に立つ。先程甲冑の男性が扉の取っ手に触れると触った部分から発火して焼き尽くそうとする厄介な仕掛けが施されている。おそらくエドワードが部外者の侵入を阻止するために施した設置型の高等魔術だろう。
プサイは書斎の扉の前に手をかざした。プサイの掌から魔法陣が浮かび上がると魔法陣は扉の前に展開される。展開されると扉から魔法陣が浮かび上がる。
プサイが展開した魔法陣と扉から浮かび上がった魔法陣が近付き出す。近付くにつれ火花が苛烈に散る。そしてプサイの魔法陣と扉の魔法陣が重なると火花が散る事がなくなり魔法陣同士が回転しだす。回転する魔法陣は徐々に亀裂が入る。
プサイは亀裂が入った魔法陣に、か細い手でつくった握り拳で殴りつけた。殴りつけられた魔法陣は亀裂が端々にまで広がり粉々に砕け散った。魔法陣を殴りつけた拳は勢いをそのまま扉にぶつかり書斎の扉を粉砕した。
「意外と脆い仕掛けでした」
プサイは粉砕した扉を潜り書斎に足を踏み入れる。
書斎の中は四方に本棚が敷き詰められていて、その本棚には魔導書や神聖術書、魔法薬の専門書など多岐に渡る専門書が収納されていた。本棚に囲まれているこの部屋の片隅に木材でできたアンティーク感のある机が置かれていた。
「例の物はこの中ですか」
プサイは机の前に手をかざし、掌から魔法陣が展開される。書斎の扉の時と同じで机から魔法陣が浮かび出した。掌の魔法陣と机の魔法陣が近付くと火花が苛烈に散る。徐々に魔法陣同士が近付き、重なる寸前プサイが展開した魔法陣が自壊した。机から浮かび出した魔法陣は巻き戻されるように机に引きずり込まれ消失していく。
「さすがに私の解除魔術では太刀打ちできませんか。仕方ないですが持ち帰りますか」
そう言うとプサイは机の下の床に魔法陣を展開した。床に展開した魔法陣が一瞬にして漆黒の沼と化して机が沈んでいく。
机が沈み切ると書斎の本棚に魔法陣が幾重にも浮かび出す。
部屋中に描かれた魔法陣から火が噴き出す。魔法陣から噴き出した火は本棚に収納されている本に着火しどんどん他の本に燃え移る。燃え移った火はしまいには部屋中に燃え移る。プサイは唯一の出入り口の破壊した扉を見ると先程破壊した扉が跡形もなくなり元から扉などなかったかのように消えていた。
「侵入者を確実に殺す設置魔術ですか。よほどこの部屋に大事なものを保管していたのでしょう。でも惜しかったですね。先に逃げ道は開通してしまいました」
プサイは開通した逃げ道——漆黒の沼に向かって歩み出す。
プサイは漆黒の沼に足を踏み入れた。そしてプサイはどんどん沈んでいく。そして部屋中に燃え移った火で本棚が炭化していき自身の重さに耐えられず燃えている本棚が倒れていく。本棚が倒れた衝撃で他の本棚が倒れていく。本棚が倒れていくにつれ部屋中に広がった火が炎となり部屋だけでなく家丸ごと焼き尽くす。
プサイは担いでいる甲冑の男性ごと漆黒の沼に沈み切るとほぼ同時に焼き尽くされた家が炎の浸食によって崩れ落ちる。
お疲れ雅です。
tawashiと申す者です。
今回も読んで頂き誠にありがとうございます。
明日も投稿しますので気が向いたら読んでください。