第四話
王宮内の中庭。
ノクトは息抜きがてら中庭に訪れた。
ノクトが中庭に訪れると中庭の中央の噴水の傍には先客がいた。
「何してんだ?シルフィー?」
噴水の傍にいた先客——シルフィーはノクトが声をかけるとノクトの方を振り向いた。
「ノクトでしたか」
シルフィーは振り向くとノクトを一瞥した。
「ノクトこそ、なぜ中庭へ来たのですか?」
「息抜きしに来たんだよ。そういうシルフィーこそ何しに中庭に来たんだ?」
ノクトがシルフィーの質問に答えるとシルフィーはノクトの質問に答える。
「私も同じ目的で中庭に来ました。ここ最近、王国の仕事が立て込んでいたので肩の力を抜きたかったのです」
「そうなのか」
ノクトの質問に答えたシルフィーは噴水の傍かノクトの方へ歩き出す。
近付いてくるシルフィーにノクトは話しかける。
「だったら仕事を他の人に任せてもいいんじゃないか?」
「そうできるのならそうしたいのですが、国王である私が決定権のある案件が溜まっているのでどうしても他の人に任せられないのです」
ノクトの質問に事情を説明したシルフィーはノクトの目の前まで近付くと足を止めた。
「それよりも。先程の話ですが」
「先程の話?」
「そうです。悪魔達と協力するという話の中で勇者ファルコと喧嘩腰でしたよね?仲良くしろとは言いません。ですが勇者達の中で空気を悪くしないようにしてもらえませんか?」
シルフィーは単刀直入にノクトへファルコとの仲を口にした。
その話を持ち出した直後、ノクト眉間にしわを寄せた。
「前にも言ったはずだが、俺がどうこうする前にあっちが喧嘩腰なんだ。これに関してはあいつがどうにかしない限りどうにもならない」
あからさまに不機嫌なノクトの返答にシルフィーは溜息を吐いた。
「ここに来る前、勇者ファルコに同じ話題を出しました」
「それでどうなった?」
「『僕があの者の事を仲間と思ってません。おそらくあちらも同じことを思っているはずです。そんな相手に歩み寄るなんて不可能です』と言い切りました」
シルフィーの口伝で聞いたファルコの意見にノクトは不覚にも納得してしまった。
「どちらもこの状態では戦闘の連携に支障がでます。ですのでどちらかが譲歩しないといけません」
「それで俺から歩み寄れって事か?」
ノクトは眉根を吊り上げてシルフィーに尋ねた。
「その通りです。勇者ファルコは魔王の血を引くあなたを最初から毛嫌いしています。まだあなたなら私の話を考慮してくれると思いました。だからあなたに頼みました」
訝しそうに尋ねたノクトにシルフィーは真剣な眼差しを向けてノクトに話した。
「これも前に言ったが、俺が歩み寄ってもあっちがあの態度なら意味がない。それは今までのあいつの言動で分かるだろう?」
ノクトはいい加減シルフィーとの話に飽きたのか、シルフィーに今までのファルコの言動を思い出させるように言った。
「それはノクト、あなたが本当の意味で勇者ファルコに歩み寄ったのですか?」
ノクトの言葉にシルフィーは真剣な表情で若干語気を強くして言い放った。
シルフィーの言葉にノクトは一瞬言葉が詰まった。
ノクトはファルコから拒んでいる状況でシルフィーの言うように本当に歩み寄ったかと言えるのか言葉を返せなかった。
「人は言葉にするだけなら誰でもできます。ですが言葉だけで行動できない者はただの嘘つきです。私はノクトが有言実行できる人だと信じているからこの話をしています」
真剣に話すシルフィーは熱が入っているのかノクトのすぐ傍まで近付いて語る。
シルフィーの熱意にノクトは折れたのか、呆れたのか溜息を吐く。
「……分かった。善処する」
「分かってくれたのなら良かったです」
ノクトが渋々了承するとシルフィーはすぐに踵を返した。
「勇者ファルコにも言っておきますが、くれぐれもこれから勇者の輪の中で空気を悪くしないで下さい」
シルフィーは再度注意をすると中庭から去っていった。
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