第八話(裏)
悪魔の根城に戻るとシャルは魔王がいる部屋へそそくさと進む。
魔王の部屋の鉄扉の前にたどり着くとシャルは鉄扉に魔力を送った。
送られたシャルの魔力に鉄扉は淡く輝き勝手に開いていく。
鉄扉の奥には魔王の部屋で立っているアンリがいた。
「どうかしたか?シャルロット?」
アンリ——いや魔王は部屋に訪れたシャルの方を見て尋ねた。
「ノクトを外へ送ってきたわ」
「そうか。ご苦労だった」
シャルがノクトを外の空間へ送り出した事を伝えると魔王はシャルに端的に労いの言葉をかけた。
「それと、勇者達に協定の話を持ち出したわ」
シャルがその話を持ち出すと魔王はピクリと体をわずかに動かした。
「ノクトに協定の話を持ち出したそうじゃない?」
「そうだ。我々の敵は共通している。それなら協定を結んだ方がよいからな」
「なら何で私にその話を相談しなかったの?」
シャルの疑問に魔王は少し間を空けて口を開く。
「我の眼から見てシャルロット。お前はまだ勇者との確執を感じていたように見えた。だから我の考えをあえて話さなかった、納得できたか?」
魔王は自身の考えをシャルに伝えると、シャルは不服そうな表情を浮かべた。
「つまり、私がまだ勇者の事を信用してないって思ってるの?」
「我の眼から見てそう思えた」
魔王の言葉にシャルは不服そうな表情を浮かべたまま、魔王に若干棘のある声音で言葉を返した。
そんなシャルに魔王は自身が感じたシャルの言動を鑑みた思いを素直に伝えた。
「だが、シャルロットが自ら勇者に協定を結ぶ意見を口にした事は正直驚いた。これは本当の事だ」
魔王はシャルの言動に素直に驚いた事を伝えるとシャルは渋い顔を浮かべた。
「不貞腐れなくてもよい。我は正直安心している。今まで勇者の存在を毛嫌いしていたシャルロットが自ら協定を結ぼうとしたのだ。成長したようで我は嬉しいぞ」
魔王の言葉にシャルはさらに渋面する。それとは対照的で魔王はどこか嬉しそうな柔らかい笑みを浮かべていた。
「うるさいわね。私も現状を考えてるの。今はいがみ合うより協力して傍観者を倒す事が先決なのは私だって分かってる。だから協定を結ぶように勇者達に話したの。文句ある?」
「いや、文句などない。むしろシャルロットの口から勇者に協定を結ぶ事を言ってもらえたのは助かった。我が自ら出向いて協定を結ぶ話し合いをしないですんだ。ありがとう」
シャルの言動に魔王は感謝を伝えた。
魔王が直々に現れて勇者達に協定の話をすれば絶対に警戒される事は魔王でも分かる事だ。
シャルの口から協定をの話をしてくれたのは魔王にとっては助かったというのは本音だった。
「その様子だと協定は無事結べたようだな?」
「えぇ、最初は警戒されたけど、ノクトがおかげで勇者全員と協定を結ぶことができたわ」
「そうか。ノクトには感謝しきれないな」
シャルから聞いた情報で魔王はノクトに感謝の言葉を紡いでいた。
「だが、本当に大変なのはこれからだ。傍観者が今まで以上に我らの行動を監視しているとなれば我らと勇者が協定を結んだのは周知の事実だ。傍観者も手を売ってくるだろう」
「そうね。でも傍観者を四回殺してるはずなのにどうして何度も現れるの?」
シャルはふと気になった事を口にした。
傍観者と初めて会ってから幾度となく戦い魔王が三回、勇者達が一回、傍観者の体を跡形もなく消し飛ばした。それなのに何度も無傷の体で現れている。
その事にシャルは不思議でならなかった。
「おそらく体の予備があるのだろう。そう考えれば話の筋は通る」
魔王の言葉にシャルは目を大きく見開いた。
「そんな!それじゃいくら傍観者を殺しても体の予備がなくなるまで意味がないって事?」
「そうなるな。だが傍観者の方もあれだけ頑丈な体をいくつも予備出来る程時間があるとは思えない。おそらく予備にも限度があるはずだ」
魔王は傍観者の体の予備に数の限りがあると予想するとシャルは魔王の言葉に頷いた。
「シャルロット。悪いが悪魔と一緒に傍観者のアジトを見つけてくれ。傍観者を殺すのは我と勇者に任せてくれ」
魔王の言葉にシャルは「分かったわ」と端的に返して踵を返した。
そしてシャルは魔王の部屋から出て行った。
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