第十話(表裏)
手紙を読み終えたアンリは手で口を押さえていた。
きっと嗚咽を漏らさないためだろう。
そんなアンリは頬から滴が伝っていた。
「読み終えたみたいだな」
ノクトはそう言うと踵を返して鉄扉の方を向いた。
「俺はもう戻る。そうだ。最後にアンリ。魔王と変わってくれないか?」
ノクトがアンリに魔王と人格を変わってほしいと伝えた。アンリは泣きじゃくりながら「分かった」と答えた。
すると先程まで嗚咽交じりで泣いていたアンリが急に大人しくなった。
「何の用だ?我を呼び出して」
「魔王に訊きたいことがある」
「何だ?」
ノクトは鋭い眼光で魔王を見ると魔王はノクトの尋ねてくる準備ができたのか言葉を返した。
「前に魔王が手に入れた聖典の原本、それはどこで手に入れた?」
ノクトの質問に魔王は即座に答える。
「ヒストリアの辺境、以前我々が集結した塔がある場所から少し離れた所だ」
魔王はアンリが流した涙の跡を残しながらノクトの質問に答えた。
「って事は他にも傍観者っている敵のアジトには目星はついているのか?」
ノクトの質問に魔王は少し間を下りて口を開く。
「あぁ、大雑把だが敵がいるであろうアジトの目星はついている」
ノクトの質問に答えた魔王は続けざまに言葉を紡ぐ。
「だが目星をつけている場所には傍観者のが欠けt封印の鍵で易々と中へ入れない。我の力でも鍵を開けるのに時間がかかった」
「その話を聞いている限り、俺にもその封印の鍵を開けるのは可能か?」
「今のノクトは我の魔力を多く吸収している。封印の鍵をこじ開けるくらいならできるだろう。ただし——」
魔王は語尾を強くしてノクトに真剣な視線を向けた。
「——一人で戦おうと思わない事だ。我の力でも封印の鍵を開けるのに力を要した。傍観者と戦う時でさえ我の眷属と共に戦った」
魔王からの忠告を受けたノクトは若干しかめ面に変わった。
魔王はノクトの考えを見抜いたからだ。
「ノクト。お前は最初から傍観者を一人で倒そうと考えていた。そうだろ?その考えは改めた方がいい。そうでなければ犬死するぞ」
魔王の静かでなおかつ委縮してしまうような力のある言葉にノクトは反論しようとした言葉が詰まった。
それに気付いたのか、魔王は小さく息を吐いて安堵した。
「その様子だと我の言った言葉の意味を理解したようだな」
「あぁ、魔王ですら苦戦する相手だってことは理解した」
「それでよい」
ノクトは悔しそうな表情を浮かべて魔王の言った通り独断で行動しない事を告げると、魔王は安堵した。
「最後に——」
魔王はノクトが踵を返して元来た道を戻ろうとした直後、最後の忠告をする。
「——我はノクトの味方だ。助けが欲しければいつでも我を呼べ」
魔王がその言葉を言った直後には既にノクトは鉄扉を潜っていた。
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