第九話(表裏)
イプシロンから案内された通路を進んでいくとノクトの目の前に巨大な鉄扉が現れた。
ノクトは目の前の鉄扉を見た。鈍色の鉄扉は堅牢かつ飾り気のない無骨な造りだ。
ノクトはそんな鉄扉のすぐ傍に到着すると、開け方の分からない鉄扉に手を振れた。
鉄扉に手を触れるとノクトの掌から何かが脈打つ感覚が伝わった。
脈打つ感覚がなくなると鈍色の鉄扉は勝手に火掻き出した。
ノクトは開いていく鉄扉の先に視線を向けた。
視線の先には漆黒のドレスを着た金髪の少女の姿が映った。
「二人きりで顔を合わせるのは久しぶりだな。アンリ」
目の前の金髪の少女——アンリが視界に映るとノクトは目の前のアンリの元へ歩き出す。
「すまないが今アンリエットは眠っている。ノクトと話しているのは我だ」
アンリの声で言葉を紡いでいる者——魔王は面と向かって話している相手が異なっている事を告げるとノクトは眉間にしわを寄せた。
「だったらアンリを起こしてくれ。アンリに渡したい物があるからここへ来た」
ノクトは目の前にいる魔王に指示を出した。するとノクトの視界に映る魔王は目を閉じた。
目を閉じた魔王が再び目を開くとつい先程までの絶対的な力が宿っていた瞳の輝きではなく優しい温かみのある輝きに変わっていた。
「ノクト⁉何でここに⁉」
瞳の輝きが変わるとアンリはすでにいたはずのノクトの姿に間をまくるして驚いた。
「アンリに渡すものがある。だからここに来た」
アンリの疑問にノクトは答えると懐から一通の手紙を取り出した。
「ジジイがアンリに書いた手紙だ。シャルの分はここに来る途中でシャルに渡した。アンリが最後だ」
そう言ってノクトはアンリの目の前に手紙を突き出した。
ノクトが突き出した手紙をアンリは受け取ると手紙の封を開けた。
手紙の封を開けたアンリは中身を読んでいく。
“アンリエットへ
この手紙を読んでいるという事は俺の死後、レイノスに出会ったという事だろう。
そしてレイノスから聞いているだろうがアンリ、お前はかつて魔王を討った英傑の転生者だ。。
そしてノクトはかつて英傑が討った魔王の子孫だ。
他にもアンリに黙っていた事はまだたくさんある。
黙っていて悪かった。
失敗して死んだ俺が今更謝っても許されないと思ってる。
こんな俺を許さなくてもいい。
けど二つだけ伝えたい事がある。
こんな俺を慕い愛してくれてありがとう。
これからどうなろうとアンリを愛してる。
エドワード“
お疲れ様です。
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