第七話(表裏)
傍観者の気配が消えるとノクト、ファルコ。ラザフォードは聖剣を鞘に納剣した。
勇者達が全員臨戦状態を解くと背後にいたイプシロンは歩き出した。
イプシロンが向かう先には地面に白い灰が積もっていた。
地面に積もった白い灰の傍にたどり着いたイプシロンは白い灰が積もる地面に魔法陣を描いた。
地面に描かれた魔法陣に白い灰は呑み込まれていく。
「傍観者を倒して下さり感謝します。勇者の皆さん」
イプシロンは背後にいる勇者達を一瞥して霊を伝えた。
「その灰は」
「灰化したシグマとプサイの体です」
ノクトが魔法陣に呑み込まれていく白い灰を見ているとイプシロンは白い灰の正体を口にした。
灰化したシグマとプサイの体が魔法陣に完全に呑み込まれるとイプシロンは展開した魔法陣を消した。
「私は根城に戻ります。シグマとプサイを助けて下さり感謝します」
イプシロンは魔王からの陽を完遂してシグマとプサイの体を回収して用を終えた事で根城に戻る事を伝えるとノクトはイプシロンの方へ歩き出した。
イプシロンの背後に着いたノクトは聖剣を抜剣してイプシロンの首元に切っ先を向けた。
「……何の真似ですか。ノクト様?」
ノクトに聖剣を向けられたイプシロンは困惑なのか恐怖なのか不明だが若干声を上ずらせて尋ねた。
「俺を魔王の根城へ連れていけ」
ノクトの言葉にイプシロンだけでなく勇者三人も驚きで眼を大きく見開いた。
「どういうつもりですか⁉ノクト‼」
ノクトの発言に一番に口を挟んだのはシルフィー去った。
「直接会って話がしたい奴がいる。それだけだ」
ノクトはイプシロンを見たままシルフィーの質問に答えた。
「それでしたら精神世界で魔王様と会えば済む話ではありませんか?」
イプシロンの発言はもっともだと他の勇者も同意見だった。
それにも関わらずノクトはなぜ直接魔王に会いたいのか知りたかった。
「ここにいる限り傍観者には筒抜けだ。それに俺は精神世界でなく直接会って話がしたい奴がいる」
ノクトはそう言うと切っ先を向けた聖剣をイプシロンの首元にさらに近づけた。
「私達が根城にしている空間は魔王様の魔力がないと足を踏み入れる事はできません。ノクト様だけならともかく他の勇者の皆さんは入れません。それでよろしいのであればノクト様を根城へ連れていきます」
「それでいい」
ノクトとイプシロンが話を進めていると後ろから言葉を挟まれる。
「ノクト。独断で動くべきじゃない。ここは俺達と王宮へ戻れ」
ノクトの背後にいるラザフォードは独断で魔王の根城へ単身で向かう事に反対した。
「ラザフォードの言う通りです一人で根城に向かうのは危険です」
「そうだ。貴様は何を考えているんだ?」
ラザフォードだけでなくシルフィーもファルコもラザフォードと同意見だった。
「別に俺は魔王に会いたいからじゃない。それにオレの用事はすぐに終わる。すぐに戻ってくる」
後ろにいる勇者達の反対意見を聞いてなお自身の意見を曲げないノクトは聖剣を鞘に納剣舌。
「それでは私の体に触れて下さい。ノクト様」
イプシロンの言葉にノクトはイプシロンの外套に触れた。
ノクトがイプシロンの外套に触れるとイプシロンとノクトの体を黒い炎が包み込む。
イプシロンとノクトの全身を包み込むと黒い炎はすぐに消えていく。
黒い炎と共にイプシロンとノクトは跡形もなく姿を消した。
お疲れ様です。
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