第五話(表裏)
「——クト……。ノ……!ノクト!」
ノクトは聞こえてくる声で目を覚ますと視界には集会の間の床が眼前に広がっていた。
ノクトは倒れていた床からふらつく体に鞭を打って立ち上がると傍にいたシルフィーが大きな声を上げた。
「ノクト!大丈夫ですか!」
シルフィーはノクトを心配する言葉を投げかけると倒れたノクトの体を支えた。
「……ああ」
ノクトは体を支えてくれたシルフィーの力を借りて立ち上がると視界にはイプシロンが立っていた。
「ノクト様。魔王様と面会できたでしょうか?」
イプシロンはノクトに恭しく質問をした。
「ああ、あいにくな」
ノクトはイプシロンの言葉に嫌味交じりの声音で返すと手に持っていたはずの魔王の魔力の結晶の方を見た。
ノクトが握っていたはずの魔王の魔力の結晶はいつの間にか消えていた。
「魔王様の魔力の欠片はノクト様の体の中に吸収されました。これで魔王様とのつながりはより強固になりました」
イプシロンは魔王の魔力を吸収したノクトに説明するとラザフォードはイプシロンを一瞥した。
「なぜノクトにまた魔王の魔力を吸わせて何がしたいんだ?」
ラザフォードからの質問にイプシロンは元々歪んでいる口を開く。
「魔王様とのつながりを強くして内々のほうっくをするためです。私達の動きは前よりも傍観者に筒抜けになっています。ですので魔王様とノクト様の繋がりを強くして精神世界で互いに通達ができるようにするためです」
イプシロンの説明にノクトを除く他の勇者が目を見開いた。
精神世界で魔王の言っていた事柄を三人に説明したイプシロン五三人は一瞥する。
「私がここに来る前に傍観者と一線を交えました。流石に私達悪魔では傍観者を倒せませんでした。私をここへ転移するだけでもやっとでした。今頃シグマとプサイは灰化しているでしょう」
イプシロンは若干声音を低くしてここに来るまでの出来事を話した。
それを聞いた勇者達はイプシロンが苦虫を噛み潰したような表情の変化を悟った。
「それで、これからどうするんだ?このまま戻ってもお前の仲間は灰化したままだろ?」
「はい。ですので力を貸していただきたいのです。勇者の皆さん」
ファルコがイプシロンの話に引っ掛かった事象を尋ねるとイプシロンは勇者達に頼みを吐露した。
イプシロンの頼みに勇者達は驚きを隠せなかった。
今まで敵だった悪魔から頼みを言われる事に違和感を覚えた。
「お前の仲間はどこにいるんだ?」
ノクトはイプシロンに尋ねた。
ノクトがイプシロンに尋ねると傍にいた他の勇者は目を丸くした。
「いつまでも敵同士じゃないんだ。いがみあってても仕方ない」
周りの空気を察したのかノクトは他の勇者達と悪魔達との蟠りを一旦保留にする話題を出した。
ノクトの言葉に他の勇者も理解できたようですぐにイプシロンの方を見た。
「転移魔術は私が行います。ですので勇者の皆さんは手に魔術の魔法陣の中へ移動して下さい」
イプシロンは勇者達を先導すると床に魔法陣を展開した。
勇者達はイプシロンの展開した魔法陣足を踏み入れるとイプシロンを含めて光の柱が呑み込んだ。
光の柱に呑み込まれた勇者達とイプシロンは光の柱が焼失すると跡形もなく消えていた。
お疲れ様です。
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これからも投稿してまいりますので良ければ次話も読んで下さい。