第四話(表裏)
ノクトは目を開けると視界には黒の世界が広がっていた。
黒の世界には誰もいなかった。
「またここか」
ノクトはこの場所を知っている。
以前も自身の意志とは関係なくこの空間に連れてかれた。
この空間に連れてこられた時には決ま手現れる者がいる。
ノクトが頭の中でそう考えていると目の前から可視化できるほどの濃度の魔力が突如現れた。
「今度はあんたがここに呼び出したのか?魔王?」
ノクトは自身をここに呼び出したであろう者が現れると呼び出した者に話しかけた。
『あぁ、そうだ。ノクト』
目の前に現れた人型の魔力——魔王が返事をするとノクトは苦い表情を浮かべた。
「また何でここへ呼び出した?話があるなら元の世界で話せばいいだろう?」
『そうするわけにもいかない事態になった』
「どういう意味だ?」
ノクトは魔王の言葉に眉を顰めると魔王は構わず言葉を続けた。
『傍観者が今まで以上に我らの動きに干渉するようになった』
魔王の言葉にノクトは眉根を吊り上げた。
『我がイプシロンに渡すように言った魔力の欠片を傍観者は動きを読んで奪おうとした。おそらくノクトとここで話す事を恐れたのだろう』
「だったら何で今まで傍観者は俺達をここで会わせていたんだ?」
ノクトは魔王の言った言葉に引っ掛かる点を魔王に質問した。
魔王はノクトの質問に丁寧に言葉を返す。
「それは我らが今まで唯一の敵としていたからだ。敵同士の関係ならどのような話をしても疑念や敵意しか生まれないと考えていたのだろう。だが我らを裏で操っている者の正体が明らかになった今、ここに我らを呼び出しても本来の目的を果たせないと考えた。むしろ傍観者にとってデメリットがあると考えた。だから我の魔力の欠片を奪おうとした」
魔王の説明が腑に落ちたのか、ノクトは先程よりも落ち着いた雰囲気で魔王の話を聞いていた。
「それでオレの前に現れた悪魔がボロボロだったのか」
ノクトは姿を見せたイプシロンの体がところどころボロボロだった理由が分かった。
王宮に来る前に傍観者と一線を交えていたのならボロボロの姿になっていたのも説明が付く。
『理解してくれたのなら助かる。それでここからが本題だ』
魔王は声音を低くして今まで以上に真剣な雰囲気を漂わせた。
『我らともやり取りはこれから傍観者の干渉のないこの精神世界でのみで行う』
「前まで傍観者が干渉して俺達を合わせてたのにここで会うのか?」
『それなら問題はない。我の魔力をより多く吸収したノクトなら、我とのつながりが強くなった分他の者が干渉できない。それが傍観者であってもだ』
「なるほど。それなら腑に落ちる」
魔王が精神世界で話をしたがっている理由が分かるとノクトは小さく頷いた。
『では今はこれで話はおしまいだ。ではまら』
そういうと魔王の姿は霞のように消えていき視界が真っ白に染まっていく。
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